大気汚染学会誌
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自動車からの多環芳香族炭化水素の排出に与える運転条件の影響
半田 隆山村 堯樹加藤 義洋斉藤 昭一郎石井 忠浩
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1979 年 14 巻 8 号 p. 334-339

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抄録

自動車排ガス中には, 発癌性を示すベンゾ (a) ピレンをはじめとして多数の多環芳香族炭化水素(PAH)が含まれており, それらは大気PAHの主な汚染源の一つである。著者らは, 自動車からのPAHの排出について, 一連の研究を行ってきた。本論述は, 自動車からのPAH排出に与える運転条件の影響について調べたものである。
車の速度の変化に伴う, PAH排出量の変化は, エンジソオイル消費率の大きな車ほど顕著であった。そして, 速度の増加に伴ってPAH排出量は増加した。また, 市中走行モード (10モード) における各モード, すなわち, アイドリング, 20km/h, 40km/h, 加速, 減速時における, PAH排出量は, 濃度標示 (μg/m3) で, 40km/h時が最も高く, 以下加速, 減速, 20km/h, アイドリング時の順に減少した。また質量標示 (μg/h) では, 加速時が最も高く, 以下40km/h, 減速, 20km/h, アイドリング時の順に減少した。高速あるいは加速時におけるPAH排出量の増加は,高エンジン回転に伴うオイル消費率の増加と, 消費オイルの熱分解温度の上昇に伴うPAH生成率の増加によると考えられた。減速時におけるPAHの排出には, 消費オイルからのものと, 燃焼不整によるガソリン中の未燃焼PAHの寄与が考えられた。40km/h定速において, 負荷条件の変化に伴うPAH排出量め変化は, 殆ど認められなかった。

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