大気汚染学会誌
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光化学オキシダントおよびオゾン短時間暴露のマウスの血液並びに直腸温に及ぼす影響
楠本 繁子織田 肇野上 浩志中島 泰知
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1983 年 18 巻 5 号 p. 444-452

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抄録

光化学スモッグによると思われる重症被害者にみられた臨床症状の原因物質を考察する目的で, マウスを用い, 光化学スモヅグチヱソパー内で人工的に調製した光化学反応生成物 (Ox) とオゾソ (O3) の短時間暴露による生体影響を比較した。検査項目は被害者の異常所見と関連すると考えられる, 直腸温, 血液のpH, 血清のGPT活性, ピリルビン濃度, アルカリホスファターゼ (ALP) 活性, コリソエステラーゼ (ChE) 活性, 尿素窒素濃度, 総コレステロール濃度, 赤血球アセチルコリソエステラーゼ (AchE) 活性, 2, 3-ジボスホグリセレート (2, 3-DPG) 濃度の測定および赤血球膜浸透圧抵抗性テストとした。暴露条件は最高濃度0.8~1.4ppmのOx, 3ppm定濃度のO3およびOxの濃度変化に合致させたO3 (OxパターンのO3暴露) の3種類を各々3時間暴露とした。
その結果, Oxの影響がOxパターソのO3より強かったのは, 赤血球2, 3-DPG濃度の低下, 血清Mg活性化型ALP活性の減少, ChE活性の増加, 赤血球膜浸透圧抵抗性の上昇であった。血清尿素窒素および総コレステロール濃度の増加はO3の方がOxより顕著であった。直腸温は暴露濃度0.5ppm以上では, Oxで上昇し, O3では低下するという相反する影響がみられた。これらの結果はOxの生体作用はO3と同質でないこと, Ox中にはO3以外の有害成分も含まれていることを示唆している。また, 臨床所見とOxの生体影響が合致しない成績もみられたことから, 実際の光化学スモッグ中には実験に供したOxの成分以外に有害な物質が含まれていることが示唆された。

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