大気汚染学会誌
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大気汚染と他の環境汚染との相関性に関する地域的研究 (第2報)
大気降下物による表層土壌中の金属への寄与に関する富化判別係数および富化率による推定
立本 英機中川 良三鈴木 伸
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1985 年 20 巻 4 号 p. 272-278

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抄録

前報で, 大気汚染物質と土壌汚染物質との相関について述べた。本報では, 千葉市内における表層土壌中の金属濃度を調べ, 大気降下物による表層土壌中の金属への寄与について,「富化判別係数 (EDF)」および「富化率 (ER)」による推定を試み, 金属分布の様相などについて検討した。
表層土壌および下層土壌の中から, 簡便法によってCa, Al, Mn, Fe, Cd, Pb, Cu, Zn, Ni, VおよびSiの11元素を抽出した後, それらの濃度を原子吸光光度法などによって定量した。その結果,
1) 土壌中の金属濃度は試料採取地点により大きく変化し, また表層土壌中のそれらの金属濃度はAl>Fe>Ca>Mn>Zn>V>Pb>Cu>Ni>Cdの順で小さくなる傾向があった。
2) 種々の金属のEDFおよびERは次式で計算される
EDF= (TE/TB/SE/SB)
ER (%) =100 (EDF-1)/EDF
ここにTE: 各地点の表層土壌中の元素濃度, TB: 表層土壌の指標元素濃度, SB: 各地点の下層土壌中の元素濃度, SB: 下層土壌中の指標元素濃度で, 本実験ではケイ素 (Si) を選んだ。
3) 工場周辺地域のEDFは他の地域より高く, 特にFe, Pb, CuおよびZnは顕著に高く, それらのEDF値はそれぞれ, 5.2~3.8, 1.3~2.2, 2.4~3.2および2.9~2.4であった。
4) データから判断すると鉛は千葉市全域にわたって広範囲に寄与していると推定される。更にFe, Zn, Ca, MnおよびAlもまた徐々に広範囲に寄与されつつあることがわかった。

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