抄録
大気中の粒子状物質の挙動あるいは人体・動植物などへの影響は, 粒径や濃度, 化学組成, 粒子形状など粒子のもつ物理・化学性状をはじめ, 媒質としての空気の物理・化学的条件, さらには粒子系としての境界条件など各種因子, 条件に依存しきわめて複雑で, 未解決な問題も多い。また, 粒子状汚染物質の発生源は多岐にわたり, ガス状汚染物質の発生源とは異なる特徴を有し, 性状の複雑さとも相まって, 各種発生源の環境影響評価を行うことは容易でない。一方, 浮遊粒子状物質の長期的評価に基づく環境基準達成率は, ここ数年50%台の横ばい状態にあり, ガス状大気汚染物質のそれに比し極めて低率の状況にあり, その早急な改善が望まれている。
本報では, 粒子状大気汚染の特性や問題点を横断的にみるために,(1) 粒子状物質の発生源と性状特性,(2) 発生源別汚染寄与推定,(3) 二次粒子生成,(4) 高時間分解能データの重要性,(5) 粒子状大気汚染状況と汚染レベル評価についてレビューし, 粒子状大気汚染問題に対する考え方をまとめた。