抄録
リン酸酸性溶液中で, 過酸化水素によるクロルプロマジンの酸化反応に対するヨウ化物イオンの接触作用を利用して, 吸光度の極大値からヨウ化物イオンを定量する方法を開発し, 雨水と雪の分析に応用した. この方法は極めて高感度で, 試薬の濃度, 温度などの影響が小さく, 鉄の妨害も小さい. 4Mリン酸, 0.6M過酸化水素, 2×10-3Mクロルプロマジンの反応条件で, 吸光度の極大値とヨウ化物イオン濃度は0~5ng/mlまで直線関係を示し, 0.06ng/mlまで定量できる. 20ng/ml以上のバナジウム (V) と10ng/ml以上のチナシアン酸イオンは定量を妨害するが, 多くのイオンおよび1300ng/mlの鉄 (III) は共存できる.また, ヨウ素酸イオンと過ヨウ素酸イオンもをヨウ化物イオンと同様に定量できることが分かった. この方法により内陸地での雨水と雪中のヨウ素を測定した結果, 文献値に比べて特に雪では非常に低濃度であり, 降水時間と共に低下した.