炭素
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学位論文紹介
グラフェン端の局所電子構造に関する研究
酒井 謙一
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2012 年 2012 巻 255 号 p. 305-307

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抄録
2004年におけるグラフェンの単離成功に関する報告以来,その特異な電子構造に着目したグラフェンの研究は現在,理学と工学,基礎と応用の垣根を越えて多彩な学術領域を形成するに至る。そのなかで,筆者はグラフェンの切り出しにより得られる端(グラフェン端)の電子状態に関する研究に尽力した。グラフェンの六方対称性に基づき,グラフェン端はジグザグ端とアームチェア端という2種の端構造のみを有しうる。しかし,このわずか二つの構造の差異が,グラフェン端の電子状態および電子散乱現象において大きな変化をもたらす。たとえば,ジグザグ端では端に強く局在した電子状態(エッジ状態)を形成する。この電子状態は,アームチェア端では存在せず,ジグザグ端特有の状態である。一方,端をポテンシャル障壁として取り扱う場合に考慮すべき問題である電子散乱に関しては,アームチェア端では異なる電子状態間の遷移を伴う散乱現象が(K–K′ 谷間散乱と呼ばれる),そしてジグザグ端では状態間遷移を伴わない散乱(谷内散乱)が生じる。ゆえに,アームチェア端でのみ異なる波動同士での重ね合わせが生じ,電子波干渉効果が現れる。このように,グラフェン端の電子的性質は端構造に強く依存しており,その理解は幾何構造と電子状態の相関を明確にすることと同義である。
本論文は,グラフェン端を走査トンネル顕微鏡 (STM) によって超高真空・極低温かつ原子スケールで観察し,そこから得られた幾何構造と電子構造の相関に関する知見をまとめたものである。第1章では,グラフェン端の作製および各種端構造の安定性に関して議論した。第2章では,グラフェン端近傍にて観察された超格子構造および三回対称性の局所微細構造に関して,グラフェン端での電子散乱効果の観点から実験・理論により考察した。第3章では,グラフェン端の局所電子構造について,端構造との相関および外部磁場印加中における特徴をまとめた。
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© 2012 炭素材料学会
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