炭素
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学位論文紹介
グラフェンから成るナノ多孔体の機械的柔軟性と電気化学的安定性に関する研究
野村 啓太
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2019 年 2019 巻 289 号 p. 172-173

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抄録

グラフェンはsp2炭素から成る1枚のシートであり,1原子分の薄さから高い比表面積(2630 m2/g)や機械的柔軟性をもち,またその化学的な安定性は非常に高く,導電性も有する魅力的な材料である。しかし,グラフェンは二次元のシートであるために,ππ相互作用により容易に積層してしまい,比表面積の低下や機械的柔軟性の損失が起きる。そこで,グラフェンを多孔質化あるいは三次元化し,自立構造をもたせる研究が行われている。本研究室ではゼオライトまたはアルミナナノ粒子といった金属酸化物を鋳型として用いることで数nm以下のサイズの細孔を有する,1∼2層のグラフェン骨格から成る多孔体の合成に成功している。ゼオライトを鋳型として合成される多孔体はゼオライト鋳型炭素(ZTC)と呼ばれ,ゼオライト由来の規則的なミクロ孔を有するほか,積層の無いグラフェン骨格が大量のエッジサイト(炭素六角網面の端)を有するために単層グラフェンを上回る比表面積を有する。アルミナナノ粒子を鋳型にして合成される多孔体はグラフェンメソスポンジ(GMS)と呼ばれ,3∼8 nmの細孔を有しており,エッジサイトが非常に少ないという特徴をもつ。本研究では,これらグラフェンから成る材料の機械的特性と電気化学的な安定性に着目し,新たな応用の可能性を探索する。

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© 2019 炭素材料学会
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