2026 年 2026 巻 310 号 p. 103-104
黒鉛や難黒鉛化性炭素(ハードカーボン,HC)といった炭素材料は現行のリチウムイオン電池(LIB)の負極材料として利用可能であることが知られている。リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有する二次電池として広く用いられているが,Li, Co, Cuなどの資源制約や地域偏在性が今後の大規模普及における課題となる。そこで,より低廉な元素を用いる次世代蓄電池として,ナトリウムイオン電池(NIB)およびカリウムイオン電池(KIB)が注目されている。本学位論文ではこれらの電池の構成材料として炭素負極材料および非水系電解液の探索と電気化学特性評価を行った。
本学位論文は全8章で構成される。第1章 序論では本研究の学術的背景を纏め,本論文の構成と概要を記した。第2章ではKIB負極としての黒鉛に着目し,黒鉛材料の結晶性がKIB負極としての構造変化・サイクル寿命に対して与える影響を調べた。第3章ではさらに大きなイオンサイズを持つRb+を黒鉛へ電気化学的に挿入することでRb-黒鉛層間化合物(Rb-GIC)を得る手法を見いだし,その生成過程をLi-GIC, K-GICの系と比較した。第4章ではNIB, KIB 負極材料としてグルコン酸亜鉛を主成分とする原料の熱分解により生成するZnO/炭素複合体を前駆体とする「ZnO鋳型HC」を合成し,その原料組成を最適化することで大容量の負極材料となりうることを見いだした。第5章ではKN(SO2F)2塩(カリウムビス(フルオロスルホニル)アミド,KFSA)とスルホラン(SL)から成る高濃度溶液,第6章ではKFSAとペンタグライム(G5),ハイドロフルオロエーテル(HFE)の三成分から成る局所高濃度溶液を調製し,その基礎物性とKIB電解液としての特性を調査した。第7章ではKFSAまたはK, Rb, Csのビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TFSA)塩の等モル混合物を調製し,これらが室温で液体状態を示す「溶媒和イオン液体」としての性質を有することを示すとともにその基礎物性を評価した。最後に第8章では本研究の総括と展望を記した。本稿では第2章から第7章までの内容について記述する。