2022 年 69 巻 8 号 p. 431-440
恵那市阿木川ダム建設(1990年完成)前後でその周辺における霧の観測を行い,阿木川ダムの下流側にある盆地底(以下,ダム下という)における霧の発生頻度の変化や霧の発生状況についてまとめた結果,以下のことが分かった.
(1)ダム建設後にダム下で霧の出現頻度が増加した
(2)秋季に出現するダム下の霧は,主に晴れた日の夜間に発生する.ダム堤体上からダム下への層雲や靄などの水平移流とともに,盆地底で霧が発生,発達することが多かった(水平流型).また,出現頻度は少ないが,層雲や霧がダム堤体から一時的に降下して盆地全体を覆う霧となる場合もあった(降下流型)
(3)ダム建設前後で霧の出現頻度に変化があったのは,ダム堤体の存在による局地的な風系の変化やダム湖からの水蒸気供給などが影響していると考えられる