2023 年 70 巻 3 号 p. 107-116
本論文では,北関東の雷神社の祈願目的と夏期の雷撃密度・雨量との関係を定量的に示す.雷を恐れの対象と見なす雷除雷神社と恵みをもたらす対象と見なす雨乞雷神社の計62社に注目して,それらの分布と12年間(2009-2020年)の夏期の雷撃密度とレーダ雨量の分布とを比較した.その結果,全神社数に対する雷除雷神社の割合は雷撃密度と有意な正の相関が認められた.一方,雨乞雷神社の割合は,雷撃密度と無相関であったが,夏期雨量とは有意な負の相関が認められた.これまで定性的に説明されていた雷神社と気象要素との関係が定量的に示された.
また,雨乞雷神社が期待される地域でありながら雨乞雷神社が存在しない3つの地域について,雨乞雷神社が重視されなかった理由を考察した.