長期の気候変動問題の評価では,不確実な将来を分析するツールであるシナリオが中心的な役割を果たす.シナリオは気候変動自体やその影響と適応,緩和策を分析するために分野横断的に研究され,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書でも重視されてきた.最近では企業や自治体などのステークホルダーからもシナリオへの関心が高まっている.本稿ではIPCC報告書で中心的に扱われてきた代表的濃度経路(RCP)と共通社会経済経路(SSP)の枠組みを振り返り,現状と今後の課題の整理を行う.日本ではオープン・ソースへの対応,ステークホルダーとの協業,人材育成,省庁横断的なファンディングなどの課題がある.