天理医学紀要
Online ISSN : 2187-2244
Print ISSN : 1344-1817
ISSN-L : 1344-1817
症例報告
高力価ADAMTS13 インヒビターを有する血栓性血小板減少性紫斑病における血漿交換およびリツキシマブ治療後早期の再増悪
安田 有斗飯岡 大下村 大樹岡森 慧鴨田 吉正前迫 善智金子 嘉志大野 仁嗣
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 17 巻 1 号 p. 25-33

詳細
抄録

 我々は,ADAMTS13 インヒビターを有する後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の4 例(症例1–症例4)の治療経験から,リツキシマブの有用性を2012 年International Journal of Hematology に報告した.2012 年に新たに4 例(症例5–症例8)を経験し,全8 例(症例1–症例8)における発症時インヒビター力価と臨床所見を検討した.全8 例中4 例で発症時インヒビター力価が5.0 BU/mL 以上を示し,当該4 例では第1 病日から血漿交換療法とステロイド投与を開始し,リツキシマブ(375 mg/m2, weekly, 4 doses)を導入した.4 例とも治療直後にADAMTS13 活性値の回復とインヒビターの消失を認めたが,3 例で第5–10 病日に活性値の再低下とインヒビター力価の再増高を認め,2 例で意識障害の再燃により一時的な人工呼吸管理を必要とした.最終的には全8 例ともTTP は寛解し明らかな後遺症状も認めていない.高力価インヒビターを有するTTP では,リツキシマブを早期に導入しても血漿交換によるインヒビターのリバウンドをきたす可能性があり,神経症状の再燃にも留意する必要がある.今後は,インヒビターのリバウンドを避けるための最適な免疫抑制治療の確立が望まれる.

著者関連情報
© 2014 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top