2014 年 17 巻 1 号 p. 25-33
我々は,ADAMTS13 インヒビターを有する後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の4 例(症例1–症例4)の治療経験から,リツキシマブの有用性を2012 年International Journal of Hematology に報告した.2012 年に新たに4 例(症例5–症例8)を経験し,全8 例(症例1–症例8)における発症時インヒビター力価と臨床所見を検討した.全8 例中4 例で発症時インヒビター力価が5.0 BU/mL 以上を示し,当該4 例では第1 病日から血漿交換療法とステロイド投与を開始し,リツキシマブ(375 mg/m2, weekly, 4 doses)を導入した.4 例とも治療直後にADAMTS13 活性値の回復とインヒビターの消失を認めたが,3 例で第5–10 病日に活性値の再低下とインヒビター力価の再増高を認め,2 例で意識障害の再燃により一時的な人工呼吸管理を必要とした.最終的には全8 例ともTTP は寛解し明らかな後遺症状も認めていない.高力価インヒビターを有するTTP では,リツキシマブを早期に導入しても血漿交換によるインヒビターのリバウンドをきたす可能性があり,神経症状の再燃にも留意する必要がある.今後は,インヒビターのリバウンドを避けるための最適な免疫抑制治療の確立が望まれる.