天理医学紀要
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天理よろづ相談所 学術発表会2019
がん患者のリハビリテーションの紹介
~QOL の向上を目指して~
岡本 敦
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2020 年 23 巻 2 号 p. 96

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抄録

わが国において,国民の2 人に1 人が生涯のうちにがんに罹患し,3 人に1 人ががんで死亡する.早期診断・早期治療などの医療技術の進歩もあり,がんの死亡率は年々低下傾向にある.がん経験者,いわゆるがんサバイバーは今後も増加が予測され,がんが「不治の病」であった時代から「がんと共存」する時代へと様変わりしている.がん患者は,がんの直接的な影響や,手術・化学療法・放射線治療などによって,身体障害から運動機能の低下や生活機能の低下をきたし,結果,生活の質(quality of life; QOL) の低下を招く. リハビリテーションの専門職である理学療法士,作業療法士,言語聴覚士は,リハビリテーションを進める上で,患者の全身状態,がんの進行度,がんの治療経過について把握し,リスク管理を行い,患者のQOLの向上を目標にリハビリテーションプログラムを組み立てる.一方で,現場では精神心理面にも配慮したかかわりも大切である.患者は,疼痛・運動麻痺・廃用による筋力低下や骨転移などによる安静によって,「身体的喪失」・「自律性の喪失」をきたしている.リハビリの訓練場面では,患者が発する言葉に耳を傾け,少しでも不安を軽減できるよう,希望をつなぐリハビリテーションを心掛ける.具体的には,疼痛を生じさせない動作訓練,麻痺した部位を代償する福祉用具や自助具,骨転移部の病的骨折を予防する装具等を用いて,自分でできる動作を残す努力をする.このようなリハビリテーションプログラムが心理支持的に働き,患者みずから新たな目標を生み出し,結果,QOL の向上につながることも数多く経験する. 今回は,当院におけるがんリハビリテーションのかかわりを,症例を提示しながら紹介する.

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© 2020 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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