天理医学紀要
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令和3年度受賞
脳動脈瘤に対する破裂予防効果のある候補薬剤
横断的研究
清水 寛平今村 博敏谷 正一足立 秀光坂井 千秋石井 暁片岡 大治宮本 享青木 友浩坂井 信幸
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電子付録

2022 年 25 巻 1 号 p. 78-79

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抄録

【背景】過去の疫学研究や動物実験の知見から,脳動脈瘤破裂を予防するための候補薬剤が明らかとされた.しかし,それらの薬剤の多くは,心血管病に対する予防的治療として,しばしば同時に投与される薬剤群でもあるため,破裂との相関を検証する際,薬剤同士の交絡の影響を考慮する必要がある,また,同じ薬剤群に属する薬剤であっても,期待される効果が異なる可能性があり,将来介入研究をデザインするためには,薬剤毎の効果検証が有用である.【方法】我々の施設で,2011 年7 月から2019 年6 月の間に脳動脈瘤と診断された連続症例を用いて横断研究を実施した.患者は未破裂群と破裂群に分けられた.本研究では,今までに報告された疫学研究と動物実験から,破裂抑制効果が期待される薬剤を網羅的に検証に含めた.薬物治療と動脈瘤破裂の関連は,多変量ロジスティック回帰分析にて検証した.さらに,破裂抑制効果が期待される各薬剤群において,薬剤毎の破裂との相関・用量反応関係を検証した. 【結果】破裂脳動脈瘤310 例,未破裂脳動脈瘤887 例が検証対象となった.多変量解析より,HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)(オッズ比0.54,95% 信頼区間0.38–0.77),カルシウムチャネル拮抗薬(Ca 拮抗薬)(オッ ズ比0.41,95% 信頼区間0.30–0.58),アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)(オッズ比0.67,95% 信頼区間 0.48–0.93)で,破裂との負の相関関係が認められた.さらに,スタチンのうちピタバスタチンとロスバスタチン,Ca 拮抗薬のうちベニジピン,シルニジピンとアムロジピン,ARB のうちバルサルタン,アジルサルタン,カンデサルタンとオルメサルタンにおいて負の用量反応関係が認められた.一方,非アスピリン非ステロイド性抗炎症薬で,破裂との正の相関(オッズ比3.24,95% 信頼区間1.71–6.13)が認められた. 【結語】本研究より,スタチン,Ca 拮抗薬,ARB に属する幾つかの薬剤は,脳動脈瘤破裂を予防する薬物治療薬の候補であることが示唆された.

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© 2022 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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