天理医学紀要
Online ISSN : 2187-2244
Print ISSN : 1344-1817
ISSN-L : 1344-1817
天理よろづ相談所 学術発表会2022
肺非結核性抗酸菌症と慢性肺アスペルギルス症の合併例についての検討
丸口 直人
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 26 巻 2 号 p. 118

詳細
抄録

【背景と目的】肺非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacterial pulmonary disease; NTM-PD)は,日本を含め世界的に増加傾向にある慢性呼吸器感染症である.慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis; CPA)は,予後不良疾患であり,NTM-PD の重要な合併症として知られているが,特に,CPA の合併についての鑑別を必要とする空洞を有する症例における,CPA の合併の有無による予後への影響や画像上の特徴についての報告は限られている.

【方法】天理よろづ相談所病院において,2009 年1 月から2018 年3 月の間に診断された,NTM-PD の症例について 2021 年5 月までの期間フォローアップを行い,臨床情報および画像を確認し,空洞病変の有無,CPA の合併につい て評価を行い,比較を行った.

【結果】合計611 人がNTM-PD と診断され,そのうち,38 人がCPA の合併したNTM-PD 症例,102 人が空洞を有するNTM-PD 症例,471 人が空洞を有さないNTM-PD 症例に分類された.CPA の合併したNTM-PD 症例の5 年生存率は42.8%(95% 信頼区間:28.7–64.0%)であり,空洞を有するNTM-PD 症例の5 年生存率74.4%(95% 信頼区間: 65.4–84.6%)と比較して予後不良であった.CPA の合併したNTM-PD 症例に対してNTM-PD とCPA の治療導入が いずれも行われた症例は26%,NTM-PD の治療導入のみが行われた症例が32%,CPA の治療導入のみが行われた症例は18%,いずれの治療導入も行われなかった症例が24% であった.空洞を有する症例におけるCT 画像についての多変量解析の結果では,菌球(オッズ比:27.3; 95% 信頼区間:4.40–301.5; P = 0.002)および空洞病変に接したextrapleural fat(オッズ比:7.81; 95% 信頼区間:1.58–67.2; P = 0.025)の存在がCPA の合併したNTM-PD 症例の有 意な予測因子であった.

【結論】CPA の合併したNTM-PD 症例は予後不良であり,画像を含めた所見から適切に疑う必要がある.一方で,両疾患の治療薬の薬物相互作用のため,最適な治療方法最適な治療方法については今後の検討が必要と考えられた.

著者関連情報
© 2023 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top