2023 年 26 巻 2 号 p. 99-109
症例は70代後半の男性,病期IV のマントル細胞リンパ腫と左優位の胸水を同時発症した.リンパ節生検では,中型細胞がびまん性に増殖し,免疫染色では,腫瘍細胞はCD5,CD20,CD79a,BCL2,サイクリンD1,SOX11 陽性,CD3,CD10陰性であった.染色体・FISH検査で t(11;14)(q13;q32)/IGH::CCND1転座を認め,IGHV 遺伝子はminimally mutatedであった.リンパ腫病変は,全身リンパ節,脾臓,膵頭部,胃,十二指腸,骨髄に認められた.ベンダムスチンとリツキシマブを 1 サイクル,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,リツキシマブを 1 サイクル実施したところ表在リンパ節腫脹は縮小したが,胸水は改善しなかった.胸水から作製したZeel-Neelsen染色塗抹標本の顕微鏡検査でごく少数の抗酸菌を認め,結核菌のPCR検査が陽性であった.リファンピシン,イソニアジド,ピラジナミド,エタンブトールによる抗結核治療を実施したところ胸水は速やかに消失した.初診から5年経過したが、マントル細胞リンパ腫と胸水のいずれも再発を認めない.悪性リンパ腫患者は結核を発症するリスクが高いので,リンパ腫に胸水を伴った場合は,必ずしも腫瘍性胸水ではないことに留意する必要がある.