2025 年 28 巻 1 号 p. 22-33
【目的】ポリファーマシーは高齢者医療の喫緊の課題である.筆者らは,入院時に多職種で協働して処方減量に取組んでいる.本論文の目的は本取組の有効性・安全性と継続可能性の検討である.【方法】1)急性期病院である天理よろづ相談所病院において,研修医の教育病棟である総合内科病棟への2019年6–8月の新規入院患者を取組群,2017・2018年6–8月を対象群として,前後比較研究を行った.主要アウトカムとして,入院中に投与された定期内服薬の総数の変化を調べた.2)本取組の負担感や継続可能性を把握するため,2019年10月に総合内科病棟で勤務する医師・薬剤師・看護師に質問紙調査を行なった.【結果】1)6–8月の3か月間で総合内科病棟に新規に入院した患者は,2017年:74人,2018年:67人,2019年:77人であった.本取組開始後,定期内服薬の総数は中央値(IQR)で1 (0, 3)から0 (-2, 1)と有意に減少した(P < 0.01).処方開始と中止に関連した有害事象の発生率に有意差はなかった(開始,P = 0.80;中止,P = 0.54).2)薬剤師4名,看護師24名,医師23名(初期研修医 15名,後期研修医 8名)の合計51名に質問紙を配布し,回収した.その結果,約96%の回答者が業務負担の増加を感じず,継続困難の回答はなかった.【結論】本取組により業務負担や有害事象の増加なく定期内服薬の総数が減少した.急性期病院における総合内科病棟は,ポリファーマシーの把握,及び,その対策としての多職種協働や教育的な取組が診療面でも,研修医への教育面でも重要視しやすく,関連スタッフの理解と協力のもと,本取組が良好に機能したものと考える.