天理医学紀要
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複合筋活動電位(CMAP)と心電図(ECG)記録によるリード線効果の検証
橋本 修治瀬川 義朗
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論文ID: 25-001

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抄録

【目的】本研究でいうリード線とは一端が電気回路に接続されながら他端はフリーになっている導線のことである.リード線はオームの法則に従って全体が等電位となる.このような等電位化を本研究ではリード線効果と呼ぶ.生体においてリード線効果が成立するか,複合筋活動電位(CMAP)と心電図(ECG)を用いて検証した. 【方法】2 名の被験者が指や手で相互に接触した状態を作りCMAP とECG の記録を行った.(1)CMAP:被験者1 の左正中神経を電気刺激し左短母指外転筋(APB)から被験者1 のCMAP を導出した.この際,被験者2 は右示指で被験者1 の左母指球に触れリード線の役割を担った.被験者2 が被験者1 のAPB 筋腹部に触れているときは,被験者2 の左前腕部と被験者1 の筋腱部の間で電位を導出した.被験者2 が被験者1 の筋腱部に触れているときは,被験者1の筋腹部と被験者2の左前腕部間で電位を記録した.さらに被験者2の左右前腕部間の電位記録も行った. (2)ECG:被験者同士が手で相互に接触した状態を作り2 名からECG を同時記録した. 【結果】(1)CMAP:被験者2 の左前腕部から記録された電位は,被験者1 から記録されたCMAP とほぼ同振幅同波形であった.被験者2 の左右前腕部は等電位となっていた.(2)ECG:被験者1 のECG が被験者2 へ,被験者2 のECG が被験者1 へ,ほぼ同振幅同波形で伝達して記録された. 【結論と考察】CMAP とECG を用い,生体においてもリード線効果が成立することを確認した.リード線効果を介して,電位発生源から遠く離れた部位からも電位変化が記録された.電位発生源から遠く離れた領域はほぼゼロ電位で電気的に不活性であるとする考え方があるが、本研究は,この考え方が必ずしも正しくない場合があることを示している.

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