2015 年 101 巻 2 号 p. 123-128
Experiment and numerical simulation of RH circulation flow was carried out on water model. Helium gas was injected into water in up-leg and flow rate was estimated at the bottom of down-leg. Volume of fluid (VOF) simulation was also performed by compressibleInterFoam solver of OpenFOAM, open source CFD toolbox. Three pairs of diameter of up/down-leg, 100 mm/100 mm, 140 mm/70 mm and 170 mm/30 mm were estimated and the circulation flow rate was compared to Ono et al.’s estimated formula. The flow rate in 100 mm/100 mm and 140 mm/70 mm were almost consistent with that of Ono et al.’s formula, but it was half in 170 mm/30 mm. Simulated flow rate of all pairs were almost consistent with measurement. The visualization of experiment and simulation showed that down flow through up-leg occurred in case of 170 mm/30 mm, and it was thought to cause lower flow rate through down-leg than Ono et al.’s relation. It was important to use sufficiently small mesh for up-leg to get flow rate correctly becase of the necessity of resoluting the shape of bubble. Finally the simulation with scaled up mesh and molten steel properties was carried out. The volume of injected gas became larger according to rising in the up-leg because of hydrostatic pressure distribution and the behavior of gas-liquid interface in vessel was simulated qualitatively.
製鋼2次精錬プロセスにおいて多用されるRHは,減圧した槽内に浸漬管を介して取鍋から溶鋼を吸い上げ,片方の管にガスを吹きこむことで還流を形成し,脱炭,脱ガス,成分調整および介在物除去等の連続処理を行うもので,その還流速度や流動状況の把握は同設備の性能評価として重要である。
還流速度に関し,従来の検討においては混合時間等の実測値から求めた予測式が提案されており,代表的なものとしては,Kuwabaraらによるもの1),Onoらによるもの2)等が上げられ,吹込みガス量,浸漬管径および圧力条件等を因子とする整理式により示された。しかしながら,その後,装置サイズや吹込みガス量の拡大が進められたにもかかわらず,実機における計測,観察の困難さもあり,これらの整理式の適用範囲の拡大や流動状況の詳細に関する検討は広くは行われていない。そして,還流のメカニズムは定量的に十分に理解されているとは言えず,製造設備の拡大に伴う浸漬管径の拡大や設備形状の変更に対する設計手法には更なる検討が必要である。また,還流速度のみならず,より広範な流動状況の知見も求められつつある。例えば,RHの耐火物の更新時期はその損耗状況により左右されるが,これには上昇管に吹きこまれた気泡の挙動や減圧槽内での溶鋼挙動との関連が考えられており,また,取鍋内の攪拌状況は処理時間や介在物低減量とも関連すると思われ,RH各部におけるより詳細な流動状況の把握が求められている。
それに対し,数値解析を用いた検討も行われてきており,単相流解析によるRH取鍋内流動の検討3,4,5)に始まり,近年では数値解析技術の高度化や計算機処理性能の飛躍的な向上により,RH 還流現象のより詳細な混相流流動解析が可能になってきている。Kiriharaら6)は還流量を設定した単相流解析で真空槽内での湯面の盛り上がりを格子形状の修正により表現し浴深による真空槽内のフローパターンの差異を検討しており,Mikiら7)は流動解析と併せて介在物挙動の検討を行っている。さらに近年では,Li and Tsukihashi8)は上昇管内流に旋回を付与した場合の定常流動状況を旋回流中での気泡粒子挙動を定式化し混相流の平均密度を用いた運動方程式を解くことで求めて上昇管内での旋回付与の気相と流速分布への影響について定性的な検討を行い,Kishan and Dash9)は気相を離散粒子として表現した手法により浸漬管を3本以上とした場合の還流速度の特性について比較検討を行っている。
これに対し,RHにおいては,羽口から吹き込まれるガスによる気泡の形成,上昇管を浮上する気泡の静水圧推移に伴う体積変化,減圧槽内での界面挙動等,様々な混相流の状況があり,従来の検討の多くで用いられている気泡を離散粒子として扱う手法においては気液界面の大変形が予想される上昇管内の混相流動状況の詳細な解析への適用可否は不明であり,還流現象の数値解析による再現性に関しては更なる検討が必要と思われる。
本報告では,このように複雑な混相流の還流現象に対し,数値解析による実現象の定量的再現を目的として,RH水モデル実験とそれに対応した数値解析を行い,還流速度の定量的な把握を検討し,併せて実機に近い圧力条件を想定した還流解析に適用した結果について以下に示す。
水モデル実験についてTable 1とFig.1に示す。実機の約6分の1のスケールの形状をもとに,上昇管/下降管管径比を100 mm/100 mm,140 mm/70 mm,170 mm/30 mmの3種類として還流実験を行った。流動状況の観察を考慮して容器は透明アクリル製とし,液相も水とした。還流ガスは液相との密度比が溶鋼/Arと近い値となるようHeを使用し,初期状態として槽内の水面高さが50 mmに維持されるよう槽内の圧力を設定した後,同圧力を維持しながら還流ガスを羽口(12孔)より吹き込んだ。還流速度として,ピトー管(内径0.9 mm)を下降管内の下端から3 cm上方の管中央に設置して静止時と還流時の圧力を測定し,その差圧を動圧として流速に換算して求めた。還流状況が定常に達した後,減圧槽の中央にインクを滴下し,その拡散状況により可視化観察を行った。
| Leg diameter (up/down) | 100 mm/100 mm 140 mm/70 mm 170 mm/30 mm |
|---|---|
| Vessel | |
| diameter | 330 mm |
| height | 600 mm |
| water initial depth | 50 mm |
| Ladle | |
| diameter (top) | 650 mm |
| (bottom) | 500 mm |
| height | 580 mm |
| Gas | He |
| flow rate | 5, 10, 20, 30, 40 L/min |
| inlet diameter | 1 mm |
| height of water in vessel from | 0.21 mm |
| number of inlet | 12 |
| Liquid | water, 150 L |

Experimental apparatus.
さらに本報告では,著者らが他報告10)にて浮上気泡挙動の解析に使用したOpenFOAMの混相流ソルバにより数値解析を実施した。同ソルバは代表的な混相流解析手法であるVOF法によるもので,同法では気相率の移流方程式を時間進展することで,吹き込まれたガスの挙動,すなわち気泡の生成サイズや形状変化,浮上速度等を得ることができる。本ソルバにおける支配方程式を以下に示す。
| (1) |
| (2) |
| (3) |
| (4) |
| (5) |
| (6) |
ここで,
ρ:密度[kg.m−3],u:流速[m/s],P:圧力[Pa],μe:有効粘性係数[kg.m−1.s−1],σ:表面張力係数[kg.s−2],κ:曲率[m−1],g:重力加速度[m/s2],F:液相率[−],ρl,g:液相,気相密度[kg.m−3],R:気体定数[J.kg−1.K−1],T0:ベース温度[K]
である。有効粘性係数は気液比率に応じた平均値であり,CSFモデル11)により界面張力が考慮される。なお,本ソルバでは温度は考慮されず,気相において圧力変化に伴う等温での体積変化が扱われるものである。本検討における解析条件をTable 2に示し,境界条件および初期条件をFig.2に示す。
| Solver | OpenFOAM2.1.1 compressibleInterFoam |
|---|---|
| Time marching | Euler explicit |
| Convection term scheme | 2nd central difference |
| Turbulence model | LES (standard smagorinsky model) |
| Gas liquid interface | TVD (van Leer) with interfaceCompression |
| Fluid properties | |
| density | 1000 (liquid), 0.19 (gas)/[kg/m3] |
| viscosity | 1.0 (liquid), 0.020 (gas)/[mPa/s] |

Boundary/initial conditions.
解析領域は中央断面を対称面とする半領域とした。解析格子をFig.3に示す。羽口配置等,実験と同様の形状とした。上昇管において,格子サイズが大きすぎる場合,独立した気泡でなく管状に連続した気相分布となって還流速度が過小となる状況が見られたため,ここでは実験における最小のガス流量で上昇管内の気泡が解像される格子巾(5 mm)を試行錯誤により求めて,全条件の解析に適用することとした。また,同格子を実機規模に相似的に拡大し,液相物性を溶鋼,減圧槽圧力を10.1 kPaとして,実プロセスで見られる減圧下での還流現象解析を行った。

Grid (up leg).
実験結果の例として,浸漬管径(上昇管/下降管)100 mm/100 mmおよび170 mm/30 mmでの可視化結果をFig.4に示す。100 mm/100 mmにおいては取鍋内に下降管側からインクが流下し,取鍋底に広がった後,取鍋全体に拡散していく様子が見られた。これに対し,170 mm/30 mmでは下降管側に加え上昇管側からも相当量のインクが流下している様子が見られ,通常の還流のほかに上昇管内に下降流が発生していることが示された。

Visualization of circulation flow.
次に,下降管中央での流速測定値をFig.5に示す。Fig.5においては,Ono らの水モデル実験の結果2)に基づく流速予測式として
| (7) |

Velocity of down flow (experiment).
による値を併せて示した。ここで,
Q:環流量[t/min],Du:上昇管径[cm],Dd:下降管径[cm],G:ガス流量[l/min],H:ガス吹き込み深さ[cm]
である。Kはモデル定数であり,Onoらの実験結果2)から水モデルに対する値として0.351*10−3を算出して使用した。以下においては,下降管断面内均一流れを仮定して下降管流速Ud=Q/(πDd2/4)により本検討における測定値および数値解析結果との比較を行った。
浸漬管径3種類の実験に対し,100 mm/100 mmおよび140 mm/70 mmはOnoらの予測式と比較的よく一致したが,170 mm/30 mmではOnoらの式での予測値の50%程度となり大きな差異が見られた。170 mm/30 mmでは可視化観察において上昇管側からの流下が観察されているが,Onoらの検討範囲は浸漬管径80 mm/41 mmから80 mm/80 mmとなっておりこのような上昇管側からの下降流は発生しなかった可能性が考えられる。本検討の170 mm/30 mmでは上昇管内にも下降流が発生したことにより下降管での流速がOnoらの整理式より小さな値となったものと思われる。
これに対し,同条件についての数値解析例をFig.6に示し,同結果から求めた下降管の断面平均での流速値を実測値と併せてFig.7に示す。Onoらの予測式との差異が大きかった浸漬管径170 mm/30 mmを含めて比較的よい一致が得られており,ガス吹き込みによる還流現象が妥当に解析されているものと思われる。浸漬管径170 mm/30 mmおよび100 mm/100 mmの解析結果の瞬時値に関し,上昇管中央部の水平断面の液相部に対し,上昇流および下降流を色分けして表示した結果をFig.8に示す。(b)100 mm/100 mmがほぼ全面,上昇流となっているのに対し,(a)170 mm/30 mmでは気泡の周囲は上昇流であるものの気泡から離れた箇所,特に管中央部には下降流が形成されていることが示されており可視化実験結果と対応しているものと思われる。170 mm/30 mmでこのような状況となった理由としては,吹き込まれた気泡による上昇流に対し,同量が下降管を流下するのに要する圧損が上昇管の大径化により流動が弱まった上昇管中央領域にも作用した結果,上昇管内に下降流が発生したものと思われる。

Gas-liquid interface and flow vector (simulation).

Velocity of down flow (simulation).

Flow direction of water in up leg (50 mm from inlet).
以上より,数値解析により水モデル実験でのガス吹き込みによる還流状況が比較的よく再現されることを示した。これに対し,実機においては槽内圧力がより真空に近づき還流ガスの上昇に伴う体積変化が顕著になって,流動状況の複雑さの増大から混相流数値解析の安定性が低下することが考えられる。以下では,水モデル実験での100 mm/100 mmの格子を実機サイズに拡大し流体物性を溶鋼として,系内の圧力分布がより実機に近い状況での解析可否を検討した。解析条件をTable 3に示し,解析例として,対称面における圧力分布と気液界面をFig.9(a)に,対称面における液相分布と浸漬管水平断面(吹き込み口から70 cm上方)における流速ベクトルを(b)に示す。上昇管において槽内液面に近づくにつれ気相割合が増加し,液面が大きく乱れている様子が示されている。上昇管の高さ位置に対する気相率は,羽口から30 cm上方で0.12であるのに対し1 m上方で0.33と約3倍の差となっており,気泡の上昇に伴う体積膨張の効果が示されているものと思われる。なお,減圧条件での解析においては,減圧槽内の気液界面の変化が激しい箇所で時折計算の安定性を欠く場合が見られた。解析格子等,検討の余地があるものと思われる。
| Leg diameter | 0.65 m |
|---|---|
| Vessel | |
| diameter | 2.15 m |
| height | 3.9 m |
| steel initial depth | 0.3 m |
| outlet pressure | 10.1 kPa |
| Ladle | |
| diameter (top) | 4.2 m |
| (bottom) | 3.25 m |
| height | 3.77 m |
| Liquid | |
| density | 7 t/m3 |
| viscosity | 0.007 Pa.s |
| surface tension | 1.72 N/m |
| Gas | Ar |
| flow rate | 2 m3/min |
| number of inlet | 6/semicircle |
(*Temperature is not considered)

Circulation flow of molten steel.
本検討手法では温度変化による気相体積変化は考慮されていないが,溶鋼に吹き込まれたガスは速やかに溶鋼温度に達するとも考えられる。この場合,還流ガスの入り口境界条件における体積流量を溶鋼温度における値とすることで,本手法においても実機に対する一定の評価が可能なものと思われるが,今後,その妥当性の検討が必要である。
RH で見られる吹き込みガスによる還流状況に関し,浸漬管径の異なる3種類の水モデル実験を行い,還流速度を評価した。Onoらによる整理式2)との比較を行い,上昇管/下降管径が100 mm/100 mm,140 mm/70 mmでは比較的よく一致したが,170 mm/30 mmでは大きな差が見られた。OpenFOAM2.1.1のcompressibleInterFoamによる解析結果との比較では,いずれの形状においても計測値と比較的よい一致が見られた。170 mm/30 mmでの上昇管内においては,可視化および解析結果から中央付近で下降流が発生していることを確認し,同現象はOnoらの整理式では考慮されていないため流速予測値において差異が見られたものと判断した。また,液相を溶鋼物性とした実機サイズでの解析に適用し,実機圧力条件下における気泡浮上に伴う体積膨張や減圧槽内での界面挙動の様子を示した。