鉄と鋼
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論文
Ni基合金におけるスモールパンチクリープ試験の荷重/応力換算係数に及ぼす延性の影響
駒崎 慎一大川 裕也米村 光治
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2016 年 102 巻 11 号 p. 646-652

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Synopsis:

Remaining-life assessment of high temperature components using the small punch (SP) creep testing technique necessitates the evaluation of SP load (F)/uniaxial stress (σ) conversion coefficient, F/σ, obtained by comparing the SP and uniaxial creep test results. In the present study, the SP creep tests were carried out at 850°C on various Ni-base alloys having different rupture elongations in the range of 0.06-0.63 to investigate the influence of ductility on the value of F/σ. The F/σ value was determined for each alloy by correlating SP creep rupture data with corresponding uniaxial creep ones. The experimental results revealed that the F/σ value increased with increasing rupture elongation up to 0.45 and remained almost constant at around 2 with further increase of rupture elongation. This result indicated that the SP creep rupture test result could be converted to that of uniaxial one if the ductility on a given material was available. Moreover, the correlation between the F/σ and the equivalent fracture strain in SP creep test specimen were also analyzed to establish a procedure for estimating the stress equivalent to the SP load from the SP creep test result alone. As the result, the variation of F/σ with the equivalent fracture strain was similar to its variation with the rupture elongation.

1. 緒言

火力発電プラントのボイラやタービンなど,過酷環境下で使用される高温機器は長期供用に伴い劣化・損傷するため,破壊事故の未然防止のためにはそれら部材の長時間強度や余寿命を正確に評価する必要がある。余寿命診断技術のひとつに微小サンプルクリープ試験法があり,その代表的な試験法としてスモールパンチ(SP:Small Punch)クリープ試験法1,2,3,4)がある。本試験法はクランプした直径8 mmあるいは3 mmの小型ディスク状試験片の中央に置いたボールに一定荷重を負荷し,試験片の張り出し変形量の変化からクリープ特性評価を行うものである。微小試験片を用いるため,サンプリングによる実機部材の構造健全性に及ぼす影響の低減や溶接部熱影響部などの局所領域のクリープ特性評価が可能である。しかし,力学パラメータ(荷重)や計測量(変位),応力・ひずみ状態(多軸)が標準の単軸クリープ試験とは異なるため,両試験特性を直接比較することができない。

SPクリープ破断試験結果を単軸クリープ破断試験結果に変換する方法のひとつとして,両者の破断データが一致する際のSPクリープ荷重Fと単軸クリープ応力σの比である荷重/応力換算係数(F/σ=α)を用いる方法がある。このF/σの次元は面積(単位:mm2)であり,SPクリープ試験片の有効断面積に相当する。また,有限要素法によるSPクリープ試験片の応力・ひずみ解析も行われており,Mises相当応力が最大となる位置での板厚方向の平均相当応力σepが試験時の大半でほぼ一定になることが知られている。著者ら5)は,高Crフェライト系耐熱鋼において,この定常域における平均相当応力σsFの間にF/σs=2.05なる関係があり,σsでSPクリープ破断試験結果を整理すると単軸クリープ破断試験結果に一致することを報告している。Dobeš and Milička6)は,数種類の粒子強化Al合金を対象としてSPクリープ試験を実施し,F/σと破断時の変位(δf)が定性的に良く対応することから,F/σには破断延性が関与すると考察している。同様に,Suzuki and Nakatani7)も,ヒートによって10CrMoVNbN鋼のF/σが異なる理由としてクリープ破断延性の違いに着目している。前述したとおりF/σは有効断面積に相当し,それは試験中の試験片形状に大きく依存することから,F/σが材料の延性と密接に関係することが容易に理解される。しかし,延性とF/σの関係を系統的に調査した研究例はなく,その詳細は未だ不明である。

本研究では,延性とF/σの関係を明らかにするために,クリープ破断延性が異なる9種類のNi基モデル合金のSPクリープ試験を実施し,単軸クリープ破断試験結果との比較からF/σを求めた。加えて,SPクリープ試験結果からF/σを推定することを目的に,SPクリープ破断試験片の相当破壊ひずみεefに注目しF/σとの関係について調査した。

2. 供試材および実験方法

供試材としてクリープ破断延性が異なる9種類のNi基モデル合金を用いた。モデル合金の化学組成と熱処理条件をまとめてTable 1に示す。これら9種類のモデル合金は,Ni-20 mass%Crを基本組成とし,固溶強化元素(Fe,Co,Mo),γ'相構成元素(Al,Ti)および炭化物構成元素(Nb)の量を系統的に変動させている。これらモデル合金における室温のビッカース硬さと850°C/80 MPaの単軸クリープ試験における破断伸びをFig.1に示す。化学組成と熱処理条件を適切に変えることによって,γ'相や炭化物などの析出性状と結晶粒径が異なり,結果的に粒内と粒界の強度バランスが変わり0.06~0.63といった広範囲に破断伸びを変化させた合金を作製することができた。

Table 1. Chemical compositions (mass%) and heat treatments of Ni-base alloys.
NiCrMoTiAlNbCoBCFe
A01bal.200.004
A06bal.203210.004
A07bal.203220.004
A08bal.203120.004
A10bal.2031210.004
A11bal.2032210.004
A34bal.206122150.004
A35bal.206122150.0040.02
AL3bal.203123150.00420

A01, A06, A07: 1000°C×1 h+750°C×32 h, A10: 1050°C×1 h+750°C×32 h, A08, A11, A34, A35: 1100°C×1 h+750°C×32 h, AL3: 1050°C×1 h+850°C×32 h

Fig. 1.

 Vickers hardness and creep rupture elongation at 850°C/80 MPa of Ni-base alloys.

本研究では時効処理後の各合金からワイヤ放電加工により直径8 mm,板厚0.6 mmの小型ディスク状試験片を切り出した。試験片表面を#2400まで湿式研磨した後,Al2O3を用いたバフ研磨によって鏡面仕上げを行い,板厚を0.5±0.005 mmに調整しSPクリープ試験片とした。SPクリープ試験は,試験片を上・下部ダイにて等方的にクランプし,直径2.38 mmのSi3N4製ボールとパンチャーを介して試験片中央に一定荷重を負荷した。試験片の張り出し変形量(変位)は,LVDTを用いてパンチャーと接触している圧縮ロッドの移動量を炉外で測定することによって計測した。試験片の過度の酸化を防ぐため,試験はArガス雰囲気中にて行った。クリープ試験条件は,温度850°C,荷重60~500 Nとした。

3. 結果および考察

3・1 SPクリープ試験片の変形・破壊挙動

SPクリープ曲線の例として,A11における5種類の荷重にて計測された変位−時間曲線をFig.2に示す。クリープ曲線の形状は単軸クリープ試験のそれと比較的良く似ており,遷移域と加速域が明瞭に現れている。850°C/150 Nの同試験条件で計測されたA01,A06,A07,A08,A10,A11およびAL3の変位−時間曲線と変位速度−時間曲線をFig.3に示す。負荷直後の初期変位を比較したところ,硬さ(強度レベル)に応じてA01が一番大きく,A11がもっとも小さかった(Fig.3(a))。また,他の合金の初期変位はA01とA11の間に位置していた。変位速度−時間曲線(Fig.3(b))を比較すると,遷移域におけるA01の変位速度が幾分高く,最小クリープ変位速度が小さい合金ほど破断寿命が長時間側にシフトしているものの,曲線形状に顕著な相違は認められない。

Fig. 2.

 SP creep curves measured on A11 having creep rupture elongation of 0.06.

Fig. 3.

 SP creep curves of A01, A06, A07, A08, A10, A11 and AL3.

すべての合金で計測された破断寿命と試験荷重の関係,すなわちSPクリープ破断試験結果をFig.4に示す。データ数が必ずしも十分ではなくばらつきも多少見受けられるが,強度レベル(硬さ)と延性がともに優れているA35のクリープ破断強度がもっとも高く,低強度のA01とA06のクリープ破断強度が低くなっている。すべての合金の最小クリープ変位速度と破断寿命の関係をFig.5に示す。両者の間には合金および試験条件によらない良好な相関が認められ,いわゆるMonkman-Grantの関係8)がSPクリープ試験においても成り立つのがわかる。

Fig. 4.

 Results of SP creep rupture tests.

Fig. 5.

 Relationship between minimum central deflection rate and time to rupture.

試験条件850°C/150 NにおけるA01,A08およびA11の破断後の試験片外観をFig.6に示す。試験荷重によらず,いずれの合金もき裂が結晶粒界に沿って発生・進展しており,微視的にはすべて粒界破壊を呈していた。しかし,詳細に観察すると,破壊の巨視的様相は合金によって幾分異なっていた。強度が低く延性が高いA01(Fig.6(a))においては,最終的な破壊は応力・ひずみの高い箇所に沿って円周上に生じており,ボール下のキャップ状の部分も脱落せずに最後まで残っていた。通常,このような試験片外観は高延性な耐熱鋼において観察される。一方,延性がもっとも低く王冠状に破壊していたA11(Fig.6(c))については,途中止め試験の結果から割れが試験片中央で発生しその後き裂が放射状に進展していることがわかった。なお,A08(Fig.6(b))の破壊はA01とA11の中間的な様相を呈していた。

Fig. 6.

 SEM micrographs of SP creep specimens ruptured at 850°C/150 N.

3・2 荷重/応力換算係数に及ぼす延性の影響

強度レベルおよび延性が異なるA01,A08およびA11で得られたSPクリープ破断試験結果をLarson-Millerパラメータ9)で整理したものを改めてFig.7に示す。同図には,負荷応力に対してプロットした単軸クリープ破断試験結果も併記してある。両試験結果ともA01のクリープ破断強度が一番低く,A11のそれがもっとも高くなっている。また,SPクリープ破断試験結果におけるA08とA11の差が単軸クリープ破断試験結果のそれに比べわずかに小さくなっているのがわかる。

Fig. 7.

 Comparison between uniaxial and SP creep rupture test results.

SPクリープと単軸クリープの破断データを用いて各合金の荷重/応力換算係数(F/σ=α)を求めた。具体的には,Fig.8に模式的に示すように,個々のSPクリープ試験の破断時におけるLarson-Millerパラメータ値と同一となる応力σ(例えば,図中のσ1σ2)を単軸クリープ破断試験結果の近似線より決定し,SPクリープ荷重F(例えば,図中のF1F2)との比(F1/σ1F2/σ2)を算出した。得られたF/σを合金ごとに平均化し,室温におけるビッカース硬さに対してプロットしたものをFig.9に示す。著者10)は種々の耐熱金属材料のF/σを同様な方法で求め,室温ビッカース硬さとの関係を調べている。その結果,250 HV程度以下の比較的軟らかい材料はF/σ=2程度でほぼ一定であるのに対して,それ以上の硬い材料では硬度上昇に伴いF/σが線形的に減少することを明らかにしている。今回の結果も同様に,F/σが小さい(例えば,F/σ<1の)合金のビッカース硬さは300 HV以上と比較的高くなっている。しかし,300 HV以上であるにもかかわらず,F/σが比較的大きな(例えば,F/σ=2程度の)合金もあり,両者の間には特定の明瞭な相関は認められない。F/σを850°C/80 MPaの単軸クリープ試験における破断伸びに対してプロットしたものをFig.10に示す。A06やA10の結果が全体的な傾向から外れているものの,F/σは1程度からはじまり破断伸びの増加とともに線形的に徐々に増加している。その後,データ数は限られてはいるものの,破断伸びが0.45程度以上ではF/σは2程度に収束する傾向にある。延性が向上して荷重/応力換算係数が増加するのは,変形によってボールと試験片の接触角あるいは接触面積が増えるためである11)Fig.11に模式的に示すように,接触角(φ)あるいは接触面積が増加すると荷重を受け持つ断面積(有効断面積)もそれに応じて増え,単位断面積当たりの荷重(応力)が低下することになる。一方,延性が低いと,荷重を受ける断面積が小さいまま破断へといたるため結果的に高応力相当の試験となる。

Fig. 8.

 Definition of load/stress conversion.

Fig. 9.

F/σ plotted as a function of Vickers hardness.

Fig. 10.

F/σ plotted as a function of creep rupture elongation.

Fig. 11.

 Schematic illustrations of deformed SP creep specimens with high and low ductility.

3・3 荷重/応力換算係数と相当破壊ひずみの関係

上述したように,荷重/応力換算係数は材料の延性(破断伸び)に大きく依存し,材料ごとによって異なる。これは,延性が既知でないとSPクリープ破断試験結果を単軸クリープ破断試験結果に変換することができず,標準試験片の採取が不可能な実構造物等に対してはSPクリープ試験法の適用が困難であることを意味している。あるいは,破断伸びを調べた(単軸クリープ試験を行った)後にSPクリープ試験を行うのでは,SPクリープ試験を実施する意味がなくなってしまう。そこで,本研究ではSPクリープ試験結果のみからF/σを推定する方法について検討した。具体的には,破断後の試験片の相当破壊ひずみとF/σの関係について調査した。

破断したSPクリープ試験片の板厚をSEMにより8箇所測定し,その平均値tを求めて式(1)12)より相当破壊ひずみεefを算出した。ここで,t0は初期板厚(0.5 mm)である。   

εef=ln(t0t)(1)

得られたεefを合金ごとに平均化し,F/σとの関係を調べた結果がFig.12である。ばらつきが大きいものの,定性的にはFig.10と同様,相当破壊ひずみが大きいほどF/σも大きく,ひずみが0.45程度以上ではF/σの値は2程度になっている。また,Fig.10中では傾向から外れていたA06やA08も比較的良好なところにプロットされている。破断延性は試験条件にも依存することが知られているため,ばらつきの要因を検討するために,εefに及ぼす試験荷重の影響を調べた。代表的な合金で得られた結果をFig.13に示す。A07やA10は試験荷重の減少に伴いεefが低下しているのに対して,A08のそれは逆にわずかに増加している。また,A11やA34は単調な変化ではなく,A11においては200 N程度までは試験荷重の減少とともにεefも減少するがその後は逆に増加に転じている。一方,F/σを試験荷重に対してプロットしたものがFig.14である。こちらもデータ数が限られているものの,合金によってはεefと比較的良く似た変化を示している。A07のF/σは試験荷重の低下とともに単調に低下するのに対して,逆にA08は増加する傾向がある。また,特徴的なA34の変化も定性的には良く一致しているが,100 N程度の荷重の違いだけで破断延性が大きく変化することはあまり考えられない。詳細な検討は今後の課題ではあるが,すべての合金においてクリープ破壊が粒界に沿って生じることを考えると,ボール下における結晶粒の大きさや分布も破断延性や破断時間に大きく影響しているものと考えられる。いずれにせよ,同一合金であっても試験条件や結晶粒分布に依存して破壊形態が変化する可能性があることを考慮すると,各合金の平均的な破断延性というよりは各試験片の破断延性に基づいて荷重/応力換算係数を評価する必要がある。

Fig. 12.

F/σ plotted as a function of average equivalent fracture strain.

Fig. 13.

 Equivalent fracture strain plotted as a function of SP load.

Fig. 14.

F/σ plotted as a function of SP load.

合金ごとの平均値ではなく個々の試験片で計測されたεefに対してF/σをプロットしたものをFig.15に示す。ばらつきはあるものの,Fig.12中で大きなエラーバーを有していたA34の結果も比較的良好な位置にプロットされており,わずかではあるが精度が向上している。高延性材で粒内破壊する高Crフェライト系耐熱鋼のスモールパンチクリープ破断試験片5)においてもεefを新たに求め,得られた結果をεefF/σの関係にプロットしたものがFig.16である。本Ni基モデル合金とは異なりεefが2以上と高いものの,耐熱鋼のF/σも2前後になっているのがわかる。このことからもF/σは延性の増加とともに増え続けることはなく2程度に収束するものと考えられる。荷重/応力換算係数については,実験的あるいは理論的考察に加え,有限要素解析結果に基づいた検討も行われている。諸言で述べように,著者ら5)は,定常平均相当応力σsと負荷荷重Fの間にはF/σs=2.05なる線形的な関係があることを報告しており,やはり換算係数は2程度になる。このようなことから,下記の2つの式をマスターカーブとして用いて,εefからSPクリープ荷重に等価な単軸クリープ応力の予測を試みた。   

F/σ=2.74εef+0.70(εef0.5)(2)
  
F/σ=2.05(εef>0.5)(3)

Fig. 15.

F/σ plotted as a function of individual equivalent fracture strain.

Fig. 16.

F/σ obtained from Ni-base alloys and ferritic steel Gr.915).

式(2)はεefが0.5以下のデータ用いて求めた近似式であり,式(3)は上述の有限要素解析結果に基づき決定した。この二つのマスターカーブを用いて個々のSPクリープ破断試験片のεefよりσを予測し,それを単軸クリープ破断試験結果との比較(Fig.8の方法)より求めたσに対してプロットしたものがFig.17である。1点大きく外れている結果があるものの,多くの応力がFactor of 1.4程度の精度で比較的良好に予測できているのがわかる。代表的なモデル合金に対して,荷重の代わりに予測した応力を用いてSPクリープ破断試験結果を整理したものがFig.18である。同図には比較のため単軸クリープ破断試験結果も併せてプロットしてあり,図中の直線あるいは曲線は単軸クリープ破断試験結果のみで近似したものである。なお,横軸のLarson-Millerパラメータの定数Cは,合金ごとに最適な値を用いている(図中のCの値)。A06の応力が小さく見積もられ,その結果SPクリープ試験結果が幾分低Larson-Millerパラメータ側に位置しているものの,全体的にはおおむね良好にSPクリープ破断試験結果が単軸クリープ破断試験結果へ変換できている。

Fig. 17.

 Comparison between predicted stress and converted one.

Fig. 18.

 SP creep rupture test results plotted against predicted stress.

上述した結果は,対象材の延性(破断伸び)が未知であっても,SPクリープ破断試験片の相当破壊ひずみを求めることによってSPクリープ破断試験結果を単軸クリープ破断試験結果に変換できる可能性を示唆している。しかし,今回のSPクリープ破断試験結果は比較的短時間のものだけであり,破断延性が試験条件に依存することを考慮すると,より長時間側の破断データをも含めた検証が不可欠である。また,前述したとおり,ボール下での結晶粒の大きさや分布(結晶粒界の位置)の影響も定量的に議論していく必要がある。今後は,本方法の普遍性を検討するためにも,オーステナイト系ステンレス鋼や単結晶あるいは一方向凝固Ni基超合金など他の耐熱材料のデータも併せて蓄積していく必要がある。

4. 結言

延性と荷重/応力換算係数(F/σ)の関係を明らかにするため,クリープ破断延性が異なる9種類のNi基モデル合金のSPクリープ試験を実施し,単軸クリープ破断試験結果との比較からそれぞれのF/σを求めた。加えて,SPクリープ試験結果のみからF/σを推定するために,SPクリープ破断試験片の相当破壊ひずみεefに着目しF/σとの関係について調査した。得られた知見をまとめて以下に示す。

(1)F/σは延性(破断伸び)と密接に関係しており,破断伸びが0.45程度までは直線的に増加し,0.45程度を過ぎるとその値は2程度に収束する傾向にある。

(2)個々のSPクリープ破断試験片から計測したεefF/σの間には多少のばらつきはあるものの比較的良好な相関関係が認められる。εefが0.5程度まではF/σも直線的に増加し,それ以上では2程度に収束する傾向にある。

(3)εefF/σの関係をマスターカーブとして用いることにより,対象材の延性(破断伸び)が未知であってもSP荷重Fに対応した単軸クリープ応力σをFactor of 1.4程度の精度で予測することが可能であり,SPクリープ破断試験結果を単軸クリープ破断試験結果に変換できる。

文献
 
© 2016 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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