Tetsu-to-Hagane
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Fundamentals of High Temperature Processes
Recovery of Neodymium from Neodymium Magnet Using Bismuth
Atsushi IshigakiKeiji Okumura
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2018 Volume 104 Issue 11 Pages 613-619

Details
Synopsis:

Experiments were conducted to extract neodymium in bismuth by melting Fe-Nd-B magnets and bismuth together in a graphite crucible at 1200°C. Molten iron and bismuth separated into two phases, and neodymium in the magnet dissolved in the bismuth phase. Neodymium dissolved in bismuth was considered to form BiNd as a result of XRD. The neodymium concentration in iron phase after the dissolution treatment was 0.05 at.% or less,and the recovery rate was 99% and more. Compared to other metals(Mg, Ag, Cu) that separate into two phases with respect to molten iron, bismuth can be said to be a metal extraction material with a low melting point, safety and low energy cost.

1. 緒言

2016年の世界自動車販売台数は9385万6千台1)となり,1億台に届こうとしている。一方で,自動車業界は100年に1度の変革期と叫ばれるように,自動運転や環境規制など全方位の改革が進められている。中でも環境規制についてはフランスで2040年にガソリン車の販売中止などの動きが出ている2)。しかし環境規制の中でも排ガス規制に目を向けられるばかりで資源問題について目を向けられることは少ない。

一台のハイブリットカーには,モーターに1.3 kgのネオジム磁石が用いられている。そのうちネオジムは約0.27 kg,ジスプロシウムは約0.13 kg使用されている。これを鉱石から採取しようとするとネオジムは31 kg,ジスプロシウムは1~4トンもの鉱石が必要3)となってくるため,電気自動車の普及に伴い,環境破壊が進む恐れがあるのではないかと考えられる。一方で各社が急激に電気自動車に切り替えた際,中国が希土類金属の生産量の80%以上を占めている4)ため,供給量が追い付かず,価格が高騰することも予想される。

そこでこれらの課題の解決策として希土類金属のリサイクルが考えられる。リサイクルなので,鉱石よりも品位の高いネオジム磁石を使うことから環境安全性が高く,また資源の安定供給に繋がると考える。

従来,リサイクル法として湿式処理と乾式処理の2種類について研究されている。 Fig.1は湿式処理によるリサイクルプロセス5)を示したフローチャートである。しかしこの方法は強酸などを用いた多段のプロセスであるため,廃液の量が多くなる。そのため国内では廃液の処理に対する環境コストが大きくなってしまう問題を抱えている6)。そこで廃液を出さない乾式処理によるリサイクルに着目した研究が,大学,企業を問わず行われている。

Fig. 1.

Flowchart of wet type recycling process for Nd-Fe-B magnet scrap5).

乾式処理の中で,溶融金属を用いた分離回収法に着目した。Fig.2に示すこの方法6)は,溶融金属と希土類金属による親和性から化合物を形成することでネオジム磁石中から希土類金属を抽出,濃縮するものである。これまでは,抽出媒体として酸化物や塩化物が利用していたため抽出媒体とネオジム磁石の融点,沸点の違いが問題となっている。この方法であれば,溶融金属とネオジム磁石の融点の違いが少なく,ネオジム磁石にとって最適な温度域で回収することができ,操業上の点からも非常に有用な手段だと考えた。

Fig. 2.

Flowchart of high temperature recycling treatment using molten metal6).

Xuら7)はマグネシウムを使った方法,Takedaら8)は銀を使った方法を提案している。しかしこれらの方法では,操業上の安全性やコストの制約という点から改善の余地がある。またTakedaらの方法は,固−液反応を用いているため,処理時間が長くなるという問題がある。Mooreら9)は銅を用いた方法を提案している。銅は銀よりも安価でマグネシウムより扱いやすいという利点がある。また固−液反応を液−液反応とすることで,処理時間を大幅に削減することに成功している。しかし銅酸化物の融点が高くなってしまうため合金中から希土類を回収する上でエネルギーコストが高くなってしまう。他にもOkabeら10)やChaeら11)によってマグネシウムを用いた回収法の検討がなされている。またAkahoriら12)は還元剤としてカルシウムを加えた際のマグネシウムによる最適な回収法を調査している。ネオジム磁石のリサイクルを目的とした研究以外にも鉄スクラップを回生できるシステムの確立を目指し,Nakamoto and Ono13)によって二液相分離(鉄−銅,鉄−銀,鉄−カルシウム)を利用した研究を進められている。

以上より,溶融金属として求められる条件は以下の通りと考えられる。

・低融点であること

・安全性が高いこと

・鉄と二液相分離を形成するもの

・ネオジムと化合物を形成するもの

本研究では新たにビスマスを用いた方法を提案する。Fig.314,15)に二元系状態図を示す。Fig.3(a)からBi-Feは低温から高温にかけて二液相分離を形成する。一方で,Fig.3(b)に示すようにBi-Ndは広い組成範囲で化合物を形成していることが分かる。ビスマスは,銀よりも低価格でマグネシウムよりも安全性が高い。また酸化ビスマスは,酸化銅に比べ低融点であるため合金中の希土類金属回収時にエネルギーコストを抑えることができると考えられる。さらにビスマスはダクタイル鋳鉄16),Pbフリー快削鋼17)に対する添加剤としても利用が可能であるため,鉄残余中にビスマスが混入したとしてもそれを活用することも可能である。

Fig. 3.

Phase diagram of (a) Bi-Fe and (b) Bi-Nd binary systems14,15).

2. 実験

2・1 実験方法

本研究では市販のネオジム磁石と球状ビスマス(純度99.99%)を用いた。ネオジム磁石は横型電気炉で400°C,2 hの間加熱し,消磁した後,破砕し,粉末状にした。ビスマスも乳鉢を用いて粉末状にした。

Fig.4に実験装置の概略図を示す。ビスマスとネオジム磁石の質量比が4:1,2:1,1:1とした試料をグラファイト坩堝(内径:12 mm,深さ:18 mm)に装入した。このとき,ネオジム磁石が下,ビスマスを上に配置することで,ネオジム磁石がFe-C合金となりやすいようにした。高周波誘導炉を用いて,グラファイト坩堝内の試料をアルゴン雰囲気中(0.2 L/min)で1200±100°Cで加熱した。予備試験で加熱時間を2時間と2分間で比較したところ,結果に差異は見られなかったことから以後,加熱時間は2分間とした。Mooreら9)はボロンナイトライド坩堝を用いたが,本研究では,グラファイト坩堝で実験を行うことからFe-C合金として試料の融点を下げることが可能となった。

Fig. 4.

Schematic illustration of experimental apparatus.

試料は,SEM観察およびSEM-EDX観察によりBi,Nd,FeおよびOの組成マッピングを行うことで,NdがBi中に回収されたかを確認した。またX線構造解析を行うことで,実験後の試料がどのような状態(化合物または固溶体)で存在しているか確認した。

2・2 供試材

実験で用いたネオジム磁石をSEM観察およびSEM-EDXにより観察を行った。Fig.5は,ネオジム磁石の断面のSEM像および組成分析結果である。この図はFe,Nd,Oの元素含有量をそれぞれ白黒のコントラストで表したものである。白色が濃い領域ほどその元素の含有量が多い領域を示している。

Fig. 5.

SEM image and composition analysis mappings for rare earth magnet.

図からFeとNdがランダムに分布していることが分かる。またNdの一部がOと同じ位置に存在していることも分かる。これは試料表面を研磨した時にNdの一部が酸化したと考えられる。

SEM-EDXの組成分析の結果,Fe-11.1 at.%Ndであった。一般的なネオジム磁石の組成はNd2Fe14B18)であることから,原子数比にするとFe:Nd=7:1であるため,本測定値はこの値とほぼ等しくなった。

3. 実験結果と考察

3・1 試料の溶解の様子

Fig.6に実験後のビスマス:ネオジム磁石=4:1の試料の写真および溶解時の坩堝中での試料の模式図を示す。実験後には坩堝の上部に鉄残余,下部にビスマスが凝固していた。これは鉄とビスマスの比重差によるものと考えられる。このように鉄とビスマスは二液相分離していることが明らかであった。また鉄残余は球状の塊となっておりFe-C合金となって融点が下がり,溶融したと考える。ビスマスはこの鉄の塊を覆うように存在していることが分かる。

Fig. 6.

Photo of melted sample after experiment. (bismuth:rare earth magnet=4:1)

3・2 鉄残余の観察

Fig.7に実験後のビスマス:ネオジム磁石=4:1における 鉄残余のSEM写真を示す。灰色の球状のものはビスマスであり,図より鉄中に無数に存在していた。これは溶解時間が短いために,鉄中にビスマスが取り込まれ,凝固したと考えられる。他の比率の場合においても,同様にビスマスが鉄中に取り込まれていた。鉄残余とビスマスでは比重差があるため,溶融時間を長くすることで,分離性が良くなると考えられる。

Fig. 7.

SEM image of iron phase for treated sample. (bismuth:rare earth magnet=4:1)

ビスマス中にネオジムが回収できているか調べるため,鉄残余中のビスマスをより詳細に観察した。Fig.8はビスマス:ネオジム磁石=1:1の試料の実験後の鉄残余をSEM像とBi,Fe,Nd元素含有量を白黒のコントラストで表したものである。この図からBi含有量の多い領域とNd含有量の多い領域が一致していることが分かる。一方でFe含有量の多い領域では,Bi含有量の多い領域に比べ,Nd含有量が少なくなっていることが分かった。他の比率の試料についても,同様の結果が得られた。またそれぞれの試料における実験後の鉄残余の組成分析結果をTable 1に示す。Biの比率が大きくなるにつれ,Fe中のNd濃度が減少しており,Ndの回収率が良くなることが分かる。しかし,鉄中のBi濃度も増加する傾向にある。いずれの試料においても,Ndの含有率が小さいため,ビスマスとネオジム磁石の質量比が1:1でもNdを十分回収できる見込みがあると考えられる。ネオジム磁石の組成から考えて,ビスマスを用いたNdの回収率は99%以上である。

Fig. 8.

SEM image and composition analysis mappings of iron phase for treated sample. (bismuth:rare earth magnet=1:1)

Table 1. Chemical composition of iron phase after experiment.
Bismuth:Rare earth magnetComposition
1:1Fe-0.036 at.%Nd-0.021 at.%Bi
2:1Fe-0.027 at.%Nd-0.015 at.%Bi
4:1Fe-0.027 at.%Nd-0.127 at.%Bi

3・3 ビスマスの観察

ネオジム磁石中のネオジムがビスマス中でどのような形で回収されているか調べるため,ビスマス領域をSEM-EDX観察した。Figs.911は,ビスマス:ネオジム磁石=1:1,2:1および4:1の実験後の試料のBi中に対しBi,Fe,Nd元素含有量をそれぞれ白黒のコントラストで表したものである。それぞれの図からBi含有量の多い領域とNd含有量の多い領域が一致していることが分かる。またSEM像よりBiが多い白色領域と少ない灰色領域があることが分かる。そしてBiの少ない灰色領域ではNd含有量とO含有量が多くなっていることが分かる。このことから灰色領域でBi-Nd化合物が形成されたと考えられる。Ndは大気中でも容易に酸化されてしまうためBi-Nd化合物においても同様に化合物表面が酸化被膜によって覆われてしまいO含有量が多くなっていると考えられる。またネオジム磁石の比率が増えるにつれ,灰色領域が多くなっていることが分かった。

Fig. 9.

SEM image and composition analysis mappings of bismuth phase for treated sample. (bismuth:rare earth magnet=1:1)

Fig. 10.

SEM image and composition analysis mappings of bismuth phase for treated sample. (bismuth:rare earth magnet=2:1)

Fig. 11.

SEM image and composition analysis mappings of bismuth phase for treated sample. (bismuth:rare earth magnet=4:1)

SEM-EDXでは,BiとNdが同じ位置で検出されるということが分かっても,それが固溶体で存在しているのか,化合物として存在しているのか判断することは難しい。ビスマス:ネオジム磁石=1:1,2:1および4:1の試料それぞれに対してBi領域のXRD測定を行い,その結果をFig.12に示す。参考のため純ビスマスのXRDパターンも示す。図の下から上に行くほどネオジム磁石の比率が大きくなっている。どのXRDパターンも純ビスマスのパターンとほぼ同じであったが,2θが27°あたりに純ビスマスではみられないピークがある。ネオジム磁石の質量比が増加するに従い,このピークが徐々に大きくなっていることが分かる。これは27.75°のBiNdのピークである19)。以上のことから,Bi中に回収されたNdの一部はBiNd化合物として存在すると考えられた。

Fig. 12.

XRD patterns for bismuth phase.

Table 2に溶媒金属を用いた他の研究との処理方法の比較を示す。どの方法も90%以上の回収率を達成していたが,本研究で用いたビスマスは銀よりも低価格でマグネシウムよりも安全性が高い点で溶媒金属として適当である。また,短時間での処理で高い回収率が得られた。

Table 2. Comparison with other researchers’ treatment methods.
ResearcherMetalFurnaceTemperature (K)Treatment timeyear
This studyBiInduction14732 min
XuMgInduction948 ~ 9782 h ~ 8 h2000
OkabeMgResistance1002 ~ 120724 h ~ 72 h2003
TakedaAgResistance1273 ~ 15734 h ~ 72 h2004
ChaeMgInduction993 ~ 10732 min ~ 120 min2014
MooreCuArc327360 s2015
Induction1723 ~ 17732 min
AkahoriMg, Mg-CaResistance973~12730.5 h ~ 6 h2017

4. 結言

本研究では,ビスマスを用いることで,ネオジム磁石中からネオジムを回収した。その結果を以下に示す。

(1)ビスマス:ネオジム磁石=1:1試料においても99%以上のネオジムがBi中に回収できた。これは,at.%で考えると濃縮できたと考えられる。

(2)ネオジム磁石の比率が大きくなるにつれ,回収率がわずかに悪化しているが,十分に回収できていると考えられる。

(3)Bi-Nd合金はネオジムが少量であっても一部はBiNd化合物として安定的に存在していることが分かった。

文献
 
© 2018 The Iron and Steel Institute of Japan

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