2018 年 104 巻 11 号 p. 689-698
Fatigue tests were performed to obtain co-planar and branch crack growth rates on rail and wheel steel under non-proportional mixed mode I/III cycles. In the experiments, sequential and overlapping mode I and mode III cycles that simulated the load experienced by the rolling contact fatigue cracks were applied to the crack in cylindrical specimens made of rail and wheel steel. Experiments showed that a long co-planar crack could be produced under certain loading conditions. Based on the fracture surface observations by SEM and the results of FEA, the long co-planar crack growth is thought to be driven mainly by mode III loading and the role of mode I is an assistant, keeping the crack face opened. It was observed that the cracks were apt to branch when the strength of the material increased. It was also observed that the crack branched when the degree of overlap between the mode I and mode III cycles increased. We proposed the equivalent stress intensity factor range for branch crack that can consider the crack face contact and successfully regressed the crack growth rate data. Comparing the fracture surfaces and the co-planar crack growth rates data under non-proportional mixed mode I/III loading with that under I/II loading, it is found that the mechanism of shear mode crack growth is essentially the same regardless of whether the main driving force is in-plane shear or out-of-plane shear.
鉄道車輪がレール上を繰返し通過すると,車輪踏面およびレール頭頂面双方に転がり接触疲労(RCF)き裂が発生する。これらのき裂は,大きな塑性せん断ひずみの累積によって発生し,最初は高いせん断応力によって誘起される微細構造の塑性流動方向に成長する1)。深さ数ミリまで成長すると塑性変形層からは離脱するが,その後これら表面き裂は,非比例混合モードI/II/III負荷を受け,表面に対して浅い角度で共平面き裂として成長する2–4)。このうち,モードII/IIIはほぼ比例負荷となるが,モードI/IIおよびモードI/IIIは非比例負荷である。
非比例混合モードI/II負荷サイクル下でのレール鋼の共平面き裂成長については,多くの研究が行われている。Wongら5,6)は十字型試験片に,完全反転繰返しモードII負荷の直前にモードI負荷を与えるか,両者が重畳した負荷を与える実験を行った。彼らは,有効モードI応力拡大係数範囲ΔKIeffおよびモードI負荷とモードII負荷の重なり角度(δ)がき裂成長方向を決定するパラメータであり,δが増加するとき裂が分岐しやすくなることを見出した。Akama and Susuki7)は,日本で使用されている車輪鋼およびレール鋼について非比例混合モードI/II疲労試験を行った。その結果,レール鋼と比較して車輪鋼の方がき裂は速く成長し,かつ分岐しやすいことが分かった。また走査型電子顕微鏡(SEM)によるフラクトグラフィを実施した結果,いずれの鋼も明確なstriationは見出されなかった。その他,同様な形式の混合負荷を円筒試験片に与えた研究8)や,異なる形式の負荷を構造用鋼9),工具鋼10)およびアルミニウム合金11)に与えた非比例混合モードI/II疲労試験も行われている。
以上のような非比例混合モードI/II負荷サイクル下での共平面き裂成長試験と比較すると,非比例混合モードI/III負荷下での疲労き裂成長試験はほとんど行われていない。しかし比例負荷下での実験は数多く行われており,Ritchieら12)は,静的モードI負荷を重ね合わせた完全反転モードIII負荷を受ける円筒試験片を用いて,AISI4340鋼のき裂成長の方向を調査した。その結果,高い応力レベルでの疲労破面は平坦で,また低い応力レベルではfactory roofの外観を示すことが分かった。Tschegg13)は,一定の塑性ひずみ拡大係数範囲でAISI 1018鋼のモードIII成長に及ぼす静的モードI負荷の影響を研究した。小さなモードI負荷はき裂面接触の摩擦効果を減少させ,モードI負荷が限界を超えるとモードI分岐き裂が発生し,成長速度が低下した。Liuら14)は,混合モードI/IIIの負荷条件における破壊形式の移行を調べた。彼らは,PMMAと7050アルミニウム合金で作られた周方向切欠きがある円筒試験片を使用した。PMMAでは引張り破断形式のみが観察されたが,モード比によってはアルミニウム合金では引張破壊形式またはせん断破壊形式のいずれかが発生した。なお,比例混合モードII/III負荷サイクル下での疲労き裂成長試験は,いくつか行われている15,16)。
Akama and Kiuchi17)は,非比例混合モードI/III負荷サイクル下での普通レール鋼の共平面き裂成長速度を得るために疲労試験を行った。さらに同負荷下でのき裂成長挙動を調べるため,有限要素解析(FEA)も実施した。実験では,長い共平面き裂成長が起こった。走査型電子顕微鏡による破壊表面観察およびFEAの結果に基づいて,長い共平面き裂成長は,主にモードIII負荷によって引き起こされると推測した。またモードIサイクルとモードIIIサイクル間のδが増大すると,き裂が分岐しやすくなることも分かった。
上述のように,車輪踏面およびレール頭頂面に発生・成長するRCFき裂はモードI/II/III負荷がき裂先端で同時に発生するが,混合モード負荷を受けるき裂に関する実験的研究は,非比例混合モードI/II負荷下での成長に関するものが集中的に実施されている。また混合モードI/III負荷下での多数の構造用鋼の疲労き裂成長試験は,比例負荷下でのものがほとんどである。そこで本研究では,RCF条件を模擬した非比例混合モードI/III負荷サイクル下で,普通レール鋼,熱処理レール鋼および車輪鋼の共平面および分岐き裂成長速度を得るための疲労試験を実施する。試験終了後,いくつかの試験片の疲労破壊面をSEMで観察し,それぞれのき裂成長機構を調査する。さらに実験結果を考察するため,FEAを実施する。
非比例混合モードI/III負荷サイクル下の疲労試験を,円周方向に切欠きを導入した丸棒試験片を用いて実施する。試験片の形状・寸法と導入した切欠きの詳細をFig.1に示す。切欠きは放電加工によって試験片の中央に導入した。試験片は,実物から採取した普通レール鋼(以下RPとする),熱処理レール鋼(RF)および車輪鋼(WT)を用いた。それぞれの鉄鋼の化学成分をTable 1に,機械的性質をTable 2に示す。RFは他の鋼に比較して,極限引張強度がかなり高い。微細組織は,WT,RPが普通パーライト組織,RFは微細パーライト組織である。

Specimen used for the experiments (all dimensions in mm).
| Material | C | Si | Mn | P | S |
|---|---|---|---|---|---|
| Rail steel, RP | 0.68 | 0.26 | 0.93 | 0.016 | 0.01 |
| Rail steel, RF | 0.79 | 0.17 | 0.82 | 0.019 | 0.01 |
| Wheel steel, WT | 0.65 | 0.26 | 0.73 | 0.016 | 0.01 |
| Material | Ultimate tensile strength (MPa) | Proof stress (MPa) |
|---|---|---|
| Rail steel, RP | 934 | 511 |
| Rail steel, RF | 1214 | 802 |
| Wheel steel, WT | from 981 to 1030 | from 618 to 657 |
実験は,周波数1 Hzでの荷重制御下で,最大200 kNの引張圧縮力および1,000 Nmの最大反転トルクを負荷できる電気油圧サーボ式軸力・捩じり疲労試験機を用い,室温大気中で実施する。
モードI/IIIの負荷履歴は,Fig.2に示すようなき裂の周囲に流体が存在する条件においてFEA3)で得られたもので,車輪とレールの接触によってRCFき裂が受ける負荷を模擬したものである。横軸の時間は角度で表示しており,これは負荷が正弦波であることに起因する。同図にはモードIおよびモードIII応力拡大係数(KIおよびKIII)の重なり角度(δ)も示している。車輪とレールの接触領域が近づくと表面の接線方向トラクションにより,従動側表面にあるき裂が若干開口し,周囲の流体がき裂内部に侵入して微小なKIが発生する(0°)。接触領域が表面のき裂開口部上を移動すると,き裂内部の流体による流体閉じ込め機構18)または流体圧機構19)によってKI負荷が増減する(0~180°)。接触領域がき裂開口部から離れるとき裂内部の流体は流出し,KIへの流体の影響はほとんどなくなる(180°)。その間でKIII負荷も発生し,完全に反転する(90~450°)。このようにき裂内部に流体が存在すると,接触領域内では三軸圧縮応力場にあるき裂が開口して大きなKI負荷およびKIII負荷が発生する。

Applied one loading cycle. This figure shows the condition of ΔKIII/ΔKI=1.5 and δ=90º.
き裂深さの計測は,コンプライアンス法によって実施する。そのため各試験片には,円周方向で90°ごとに4つのクリップゲージを取付け,き裂の開口変位を計測する。試験片を試験機に設置し軸力を負荷した後,これら4つのクリップゲージの最大差を平均から5%以内に調整した。実験で用いたき裂成長速度を求めるシステムをFig.3に示す。

Measurement system for the fatigue crack growth rates.
Fig.4に示すような軸力Pを受ける円周方向にき裂がある丸棒を考える。 エネルギー開放率Gとコンプライアンスλの関係は,以下の式で表される。
| (1) |

Circumferentially cracked bar that is subjected by the axial force P.
ここでAは,き裂の面積である。GはKIでも以下のように表される。
| (2) |
| (3) |
ここでEはYoung率(=206 GPa),νはPoisson比(=0.3)である。Fig.4で,き裂深さc(=b−a)およびその増分dcを考えると,
| (4) |
ここでaおよびbは,それぞれ丸棒の現在の正味半径および外径である。よってλは,次式で表すことができる。
| (5) |
ここでxはa/bである。この場合KIは,次式で表すことができる20)。
| (6) |
式(6)を式(5)に代入し,xの高次項を無視すれば,試験片の伸びを考慮したλは,次式で得られる。
| (7) |
ここでδcはPによるゲージの開口変位,Lはゲージ長である(Fig.1参照)。F(x)は次式で表される。
| (8) |
KIおよびKIIIの計算は,それぞれ次式を用いた20)。
| (9) |
| (10) |
ここでTaは,負荷したトルクである。関数f(x)およびg(x)は,それぞれ次式で与えられる。
| (11) |
| (12) |
き裂成長速度は,増分多項式法を用いて計算した。予き裂は導入しなかったため,切欠き先端から0.7 mm以内の成長データは採用していない。
実験はRP試験片5個,RF試験片3個およびWT試験片1個を用いて行った。RP試験片を用いた実験をRP1,…,RP5,RF試験片を用いた試験をRF1,RF2,RF3,そしてWT試験片を用いた実験をWT1とする。Table 3に,それぞれの実験におけるKIおよびKIIIの公称値範囲(ΔKIおよびΔKIII)の比ΔKIII/ΔKIおよびδの条件を示す。モードIおよびモードIIIの応力比は,全ての試験でRI=0.05およびRIII=−1である。実験RP1は,最初の第一段階はδ=90°で実施し,cが約7 mmになった時点で一旦試験を停止し,δ=30°に変更して試験を継続した。同様にRP3,RF1,RF2およびWT1は,それぞれδ=30°から120°,δ=90°から30°,δ=60°から30°およびδ=90°から60°に変更して試験を実施した。疲労試験が終了した試験片は,破面観察のため,大きな引張力で脆性破壊させた。
| Exp. No. | ΔKIII / ΔKI | δ (Deg.) |
|---|---|---|
| RP1 | 1.0 | 90 → 30 |
| RP2 | 1.5 | 90 |
| RP3 | 1.5 | 30 → 120 |
| RP4 | 1.0 | 180 |
| RP5 | 1.5 | 180 |
| RF1 | 1.0 | 90 → 30 |
| RF2 | 1.5 | 60 → 30 |
| RF3 | 1.0 | 180 |
| WT1 | 1.0 | 90 → 60 |
Fig.5に,主き裂面と分岐が起こる場合の分岐き裂面の角度を示す。このような面は,原点がき裂先端中心と一致する局所的円筒座標系のR,T,およびZ軸回りの回転角であるθ,φおよびψによって表す。RP1およびRP2は,いずれの場合も破面は平坦で,ほぼθ=φ=0の共平面き裂成長が起こり,RP3はδ=30°では共平面き裂成長,δ=120°に変更後はほぼθ=45°,φ=0°の分岐き裂成長となった。RP4およびRP5は分岐き裂成長となった。次にRF1はδ=90°で若干のfactory roofが観察され,分岐き裂成長が僅かに起こったが,δ=30°では平坦な破面の共平面き裂成長となった。またRF2もδ=60°で若干のfactory roofが観察され,δ=30°では共平面き裂成長が起こった。RF3は分岐き裂成長となった。WT1は,いずれの場合も破面は平坦で共平面でき裂が成長し,分岐き裂成長に特有のfactory roof破面は認められなかった。例としてFig.6に,RP2,RP5,RF2およびWT1の巨視的破面を示す。

Branch cracks at a main crack and definition of local cylindrical coordinate system RTZ.

Macroscopic fracture surface.
モードIIIとモードIが混合する場合,Fig.5のφ=0°での等価応力拡大係数範囲は,次式となる21)。
| (13) |
ここで,Poisson比を0.3とすると
| (14) |
RP1,RP2およびRP3のδ=30°で得られた共平面き裂成長速度について,ΔKsに対して整理した結果をFig.7に示す。この場合,ΔKIII/ΔKIおよびδが異なっていても比較的良い相関が得られる。Paris型の成長則で表すと,以下のようになる。
| (15) |

Co-planar crack growth rates against ΔKs for RP.
ここでNは繰返し数,R2は決定係数(相関係数の二乗)である。
次に,RF1およびRF2で得られた共平面き裂成長速度について,ΔKsに対して整理した結果をFig.8に示す。この場合,あまり良い相関は得られていない。また成長則は次式となる。
| (16) |

Co-planar crack growth rates against ΔKs for RF.
全ての鋼についてΔKIII/ΔKI=1.0の場合,成長速度をΔKsに対して整理した結果をFig.9に示す。WTが最も成長速度が高く,次いでRPが高く,RFが最も低いことがわかる。この場合の成長則は次式となる。
| (17) |

Comparison of crack growth rates against ΔKs for RP, RF and WT (ΔKIII/ΔKI=1.0).
混合モードI/III負荷では,き裂の成長は分岐して捩じりfacetを形成する場合がある。この場合,き裂は最大主応力に垂直な方向に形成され,等価応力拡大係数範囲は次式となる22)。
| (18) |
Poisson比を0.3とすると
| (19) |
実験RP4およびRP5について,このΔKtに対して整理した結果をFig.10に示す。この図に示すように,dc/dN<3×10−4 mm/cycleではΔKIIIの比率が大きいRP5がき裂成長速度は遅くなっている。これは,式(18)はき裂面の接触によるΔKIIIの減衰を考慮していないためである。著者らは,以前実施したRI=RIII=0.05の混合モードI/III試験においてこの減衰を考慮し,次式のようにΔKIIIに重み付けした等価応力拡大係数範囲ΔKeqを提案した23)。このΔKeqに対して分岐き裂成長速度を整理すると,ΔKIII/ΔKIおよびδを種々に変化させても良い相関が得られた。
| (20) |

Branch crack growth rates against ΔKt for RP.
よって本研究においても,RPおよびRFの成長速度をΔKeqに対して整理し,RPの結果をFig.11に示す。かなり良い相関が得られていることが分かる。この場合のき裂成長速度をParis型の成長則で表すと,以下のようになる。RPについては
| (21) |

Branch crack growth rates against ΔKeq for RP.
またRF3については
| (22) |
前述のようにRF1およびRF2は,共平面き裂成長と考えて成長速度をΔKsで整理したが,良い相関は得られなかった。これは若干のfactory roofが破面に観察されるため,共平面成長よりも分岐成長が支配的であるためと考えられる。両試験片とも後半のδ=30°では共平面成長が起こったが,Fig.6(c)に示す初期に発生したfactory roof面接触の成長速度への影響は全体を通して現れると考えられるため,後半を含めた全成長速度のデータをΔKeqで整理した。その結果をFig.12に示す。ΔKsで整理した場合よりも良い相関が得られていることが分かる。この場合の成長則は次式となる。
| (23) |

Branch crack growth rate against ΔKeq for RF.
実験後の試験片の破面から,き裂成長機構についての情報を得るため,SEM観察を行った。RP1,RP2およびRP3試験片の種々の成長時点での破面を,それぞれ Fig.13から15に示す。参考文献9)では,成長速度が速く,き裂の長さが短いモードIIIの疲労試験では,破面には多くの摩耗粉や酸化物とともに激しいrub markが観察され,巨視的には平坦で荒れていたことが報告されている。RP1およびRP2の場合,いずれの成長時点においても,き裂面間の接触の痕跡はなく,表面から発生した酸化物は全く見られない。また高倍率においては,micro-cleavageやrippleが観察される。これは,表面摩擦による減衰が非常に限られていることを示唆している。混合モードI/II負荷の研究7)で報告したように,本研究でもstriationは見られなかった。き裂面の接触は起こっていないため,摩滅したものではないと推測される。ただしRP3においてのみ,δ=30°の部分でrub markが見られる。

Fracture surface of RP1 observed using a SEM (arrows indicate the direction of the crack growth).

Fracture surface of RP2 observed using a SEM (arrows indicate the direction of the crack growth).

Fracture surface of RP3 observed using a SEM (arrows indicate the direction of the crack growth).
実験結果を考察するため,三次元弾塑性FEAを,汎用コードMARCを使用して実施した。解析はRPおよびRFの,いずれもΔKIII/ΔKI=1.0,δ=90°の荷重条件(即ちRP1およびRF1の第一段階)で実施した。用いたメッシュおよび荷重サイクルの様々な時点での変形形状をFig.16に示す。き裂面は粗さを考慮せず,平坦面としている。塑性は負荷下の切欠き近傍に局在し,試験片の他の部分は弾性のままであると考えられる。よってメッシュ分割は試験片全体ではなく,軸方向は中央のゲージ長Lの部分だけ,そして対称性も考慮してさらにその半分を行った。き裂深さcは,実際の試験状態である4.6 mmとした。メッシュはき裂先端に近づくほど細かくし,き裂先端の8節点固体要素の大きさは100 μmである。これはき裂先端前方の塑性域を含むのに十分であると考えられる。要素と節点の総数は,それぞれ23,240と24,772である。

Finite element mesh for circumferentially notched round bar specimen and deformations (ΔKIII/ΔKI=1.0, δ=90°). The magnifications are ×500.
加工硬化は,Lemaitre and Chaboche24)によって開発された等方硬化則と非線形移動硬化則の複合モデルを用いた。
| (24) |
| (25) |
ここでt+Δtσyは,時刻t+Δtにおける更新された降伏応力,0σyは初期降伏応力,Qとbは材料定数,t+Δtepはt+Δtにおける累積有効塑性ひずみ,αは降伏面の中心の移動,epは塑性ひずみ,hとζは材料定数である。材料定数は,RPおよびRFを用いたひずみ制御の一軸疲労試験によって決定した。RPは,
RFは,
軸力PとトルクTaは,メッシュ上端面の中心節点を独立節点とし,この節点に対して他の上端面の全節点を従属節点として結びつけた剛領域を構成し,その独立節点に適用した。実際の試験条件は,ΔP=55 kN(RI=0.05)およびΔTa=350 Nm(RIII=−1)である。メッシュの下端面には軸方向対称条件を用いた。
3・2 解析結果き裂面の接触状態は,き裂成長方向に影響を及ぼすため重要である。そしてrubbingによって共平面疲労き裂成長が停留することが示唆されている5,6)。よってRPおよびRFについてFEAの結果から,き裂開口変位(COD)を明らかにし,比較した。Fig.17に,RP1およびRF1(いずれもΔKIII/ΔKI=1.0,δ=90°)における1回目,10回目,100回目の負荷サイクルにおける,き裂先端後方のいくつかの節点でのCODの変化を示す。これらの図より,全体的にRF1の方がCODは小さいことが分かる。これはRFが高張力鋼で,RPに比較して降伏応力が高いためであると考えられる。またRPおよびRFいずれの場合も,CODは繰り返し負荷数の増大とともに徐々に増大した。

Crack opening displacements versus distance from the crack tip.
RCF条件を模擬した非比例混合モードI/III負荷下で,レール鋼および車輪鋼の共平面き裂成長および分岐き裂成長を得るため,円周方向に切欠きを有する丸棒試験片を用いて疲労試験を行った。RPおよびWT試験片の場合,ΔKIII/ΔKIの値に関わらずδ≦90°では共平面成長となり,成長速度は式(14)のΔKsによって整理すると比較的良好な相関が得られた。これは,式(14)によればΔKIはΔKIIIに対して4%に過ぎないことから,き裂成長速度がモードIII負荷に対して強い依存性を有することを示唆している。これに対してRF試験片の場合は,δ=60°および90°で若干のfactory roofが見られ,ΔKsに対して整理した場合,あまり良い相関は得られなかった。FEAの結果,ΔKIII/ΔKI=1.0,δ=90°の場合,RF試験片のCODはRP試験片のそれより小さいことが分かった。非比例混合モード荷重サイクル下では,疲労き裂は最大せん断応力範囲Δτmax方向または最大引張応力範囲Δσmax方向を辿り,そのいずれを辿るかはどちらの成長速度が高いかに依存するとされている25)。それを考慮すると,RF試験片のようにCODが小さい場合,実際のき裂面はFEAの条件とは異なり凹凸が存在するため,き裂面が接触しやすく,接触するとき裂面摩擦の影響で,Δτmax方向へのき裂成長即ち共平面き裂成長速度が小さくなるため,Δσmax方向への成長即ち分岐き裂成長が起こりやすくなったものと考えられる。
δ≧120°では,RP試験片においても分岐き裂成長が起こった。これについてAkama and Kiuchi17)はδ=30°,90°,120°および180°の4ケースについてFEAを実施し,各ケースについてFig.5に示すTZ面内の角度θ(−90°≦θ≦90°)に対するせん断応力範囲Δτおよび引張応力範囲Δσの値を調べた。その結果,δが増加するとΔσmaxが増加し,Δσmax平面はθ=45°の分岐方向に向かうことが分かった。そのためδが大きい場合,分岐き裂が形成されやすくなるものと考えられる。
上述のように,δの増加はΔσmaxを増大させ,分岐き裂を形成しやすくするが,同時に共平面き裂成長を支配するKIII負荷中のCODを増加させ,き裂分岐が阻止されるという側面も有り得る。本実験におけるRP3では,き裂分岐を阻害する方向に働くモードIII負荷中のCODの増加をもたらすδの大きい場合でも分岐き裂を生じており,Δσmax増大の影響が優位に働いたと思われる。一方RF1およびRF2の場合は高強度鋼のためCODが小さくなり,RPでは共平面き裂を呈したδ≦90°でも若干の分岐き裂を生じたと考えられる。
SEM観察において,RP試験片のδ=90°ではき裂面接触が起こった痕跡はなく,これはFEAによって確認された。摩擦がせん断モード型疲労き裂成長が終了する理由であることが示唆されている。本試験中は,き裂面は部分的には正の応力比の結果として,また部分的には塑性ラチェットによって開口していた。き裂面がその相手面と接触し,摩擦がモードIII荷重を減衰させると,き裂は通常停留する。接触が起こらなければ,長いせん断モードき裂を発生させることが可能となる。
δを増大させることによって起こる分岐き裂成長速度を,式(19)のΔKtによって整理したが,それほど良い相関は得られなかった。これは,式(19)はき裂面の接触によるΔKIIIの減衰を考慮していないためである。そのため,き裂面接触によるモードIII負荷の減少を考慮した式(20)のΔKeqを提案し,これによって整理するとかなり良い相関のき裂成長則が得られた。若干のfactory roofが破面に観察されたRF試験片についても,ΔKeqによって整理すると比較的良好な相関が得られた。この場合,若干のき裂面接触が起こっているためであると考えられる。
Murakamiら26)は,モードIIおよびモードIII荷重下におけるS45C鋼の疲労き裂挙動を研究した。フラクトグラフィによる各々の実験後の試験片の破面観察から,両者が非常に類似していることを見出し,それゆえモードIIせん断き裂成長とモードIIIせん断き裂成長のメカニズムは本質的に同じであると結論を下している。本研究によって得られた非比例混合モードI/IIIの破面と,Akama and Susuki7)による非比例混合モードI/IIの破面を比較すると,両者は非常に類似していることがわかる。またき裂成長速度は,モードIIおよびモードIIIせん断き裂成長とも,WT,RPそしてRFの順で高かった。さらにAkama and Kiuchi17)は,RPについて,それら両者のき裂成長速度は,それぞれを主要な駆動力である応力拡大係数範囲で整理するとほぼ等しいことを指摘している。よって車輪とレールの接触によってRCFき裂が受ける負荷を模擬した非比例混合モードI/IIおよび非比例混合モードI/IIIによるせん断き裂成長のメカニズムは,主要なき裂成長の駆動力が面外せん断力であっても面内せん断力であっても,本質的に同じであると結論を下すことができる。
RCF条件を模擬した非比例混合モードI/III負荷サイクル下で,普通レール鋼(RP),熱処理レール鋼(RF)および車輪鋼(WT)の共平面および分岐き裂成長速度を得るための疲労試験を実施した。さらに,き裂成長挙動を調査するため,SEM観察およびFEAを実施した。結果を以下に要約する。
(1)RPおよびWTでは,δ≦90°では共平面成長となり,成長速度は最大せん断応力範囲基準のΔKsによって整理すると比較的良好な相関が得られた。これに対してRFでは,δ≦90°で成長速度をΔKsによって整理しても良好な相関は得られなかった。この理由は,RFはこの条件でも若干の分岐き裂成長が起こったためである。WTが最も成長速度が高く,次いでRPが高く,RFが最も低いことがわかった。
(2)RPでδ≧120°では,分岐き裂成長が起こった。この場合の成長速度を,最大引張応力範囲基準のΔKtによって整理したが,良好な相関は得られなかった。これは,ΔKtは分岐き裂におけるき裂面接触を考慮していないためである。そのため,き裂面接触によるΔKIIIの減衰を考慮したΔKeqを提案した。分岐き裂成長速度をΔKeqで整理すると,比較的良好な相関が得られた。
(3)RPのSEMによる破面観察とFEAの結果に基づくと,この試験での長い共平面き裂成長は,主にモードIII負荷によって引き起こされると考えられ,モードIの役割は,き裂面を開いたままにしておくことであると考えられる。
(4)FEAの結果,高張力鋼であるRFは,本研究における非比例混合モードI/III負荷中のCODが,RPと比較すると小さいことが分かった。そのため実際は凹凸があるき裂面で接触が起こりやすく,同じ条件でもRFは分岐き裂を生じやすいと考えられる。
(5)δが増加するとΔτmaxに対してΔσmaxが増大し,Δσmaxの面は分岐方向に向かう。分岐き裂成長速度は一般にΔσと関連していると考えられるので,δが増加するとき裂が分岐する傾向があると解釈できる。
(6)車輪とレールの接触によってRCFき裂が受ける負荷を模擬した非比例混合モードI/IIおよび非比例混合モードI/IIIによるせん断き裂成長のメカニズムは,主要なき裂成長の駆動力が面外せん断力であっても面内せん断力であっても,本質的に同じである。