Tetsu-to-Hagane
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Corrosion Behavior of Aluminized Steel Sheets in 50-year Outdoor Exposure Test
Jun Maki
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2019 Volume 105 Issue 7 Pages 759-766

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Synopsis:

Aluminized steel sheets are very resistant to corrosion in the outdoor exposure environment. We evaluated the corrosion behavior of aluminized steel sheets with a Type1 coating containing around 10%Si but also a Type2 coating not containing Si in a 50-year outdoor exposure test. Both specimens had strong perforation resistance, but those with Type2 coating had superior perforation resistance. The Type2 aluminized steel sheets had two sublayers composed of Fe2Al5 and FeAl2 as the intermediate layer between the aluminized layer and the steel substrate. The FeAl2 phase has less noble potential than steel substrate and the Fe2Al5 phase in an artificial rain water environment. As a result, this layer provided sacrificial corrosion protection for the steel substrate. That was why the specimens with the Type2 coating had better perforation resistance than those with Type1 coating.

1. 緒言

溶融Alめっき鋼板は鋼板にAlを主体とするめっきを施したもので,耐熱性,耐食性に優れることが知られている。国内では1960年代に実用化され1),1980年代以降自動車排気系素材として2),また2000年代以降は熱間プレス(ホットスタンプ,ダイクエンチ,プレスハードニング等とも呼ばれる)工法を利用した高強度部品製造に広く使用されている3)

Alめっき鋼板を製造する際にAlめっき層と鋼素地の界面に生成する金属間化合物層(以降合金層と称する)はその成長速度が大きく,めっき後の成形性を阻害しやすい。このため合金層の成長を抑制する目的でSiが8~10%添加され,Type1と呼ばれている。一方Siを含有しないAlめっき鋼板は特に耐食性に優れるとされ,Type2と呼ばれているが,国内の連続ラインでは製造されていない。米国や欧州においてはコルゲートパイプ等の土木建築物に使用されていることが報告され,日本でもバッチ式のめっきとして使用されている。

Alめっき鋼板はその美麗な外観と優れた耐食性より高級建材として屋根壁等にも使用されている。この素材(Type1)の長期間の大気暴露試験後の腐食状況については,Makiら4),Uchiyamaら5)により31年間の長期暴露試験後の試験片に対して報告された。前者は国内,後者はシンガポールで暴露したものであるが,結果は類似しており表面の色調は暗くなる傾向にあるが,特に板厚方向への腐食の進行は起こり難いことが示された。その後も国内の大気暴露試験は継続されており,今回50年に達したことから,再度腐食状況を調査した。更に,Type1とType2の両者を暴露試験に供しており,大気環境下における腐食状況に及ぼすめっき組成,合金層組成の影響についても今回検討した。

2. 実験方法

2・1 供試材

Table 1に示した成分の低炭素鋼(板厚0.8 mm)をめっき原板とし,Siを10%添加したType1のAlめっき材およびSiを添加しないType2のAlめっき材を使用した。めっき付着量は片面90~100 g/m2であった。腐食があまり認められない部位の断面写真をFig.1に示す。Type1のめっき層は亜共晶組織を呈し,めっき層中に針状のSi結晶が認められる。また合金層厚みは約7 μmであった。一方Type2では約15 μmの合金層が生成していた。Type2においてもAlめっき層中に微小な晶出物が観察され,これはAl-Fe系の化合物であった。

Table 1. Steel composition of specimens (mass%).
C Si Mn P S Al N
Type1 0.02 0.01 0.35 0.006 0.009 0.006 0.0024
Type2 0.02 0.01 0.34 0.007 0.008 0.004 0.0033
Fig. 1.

Cross section of aluminized layer.

2・2 大気暴露試験

暴露試験は寸法50×200 mmの試料を南面30°で試験に供した。暴露箇所は北九州市,八幡製鐵所構内の海岸から約500 mの位置で,飛来塩分量は1.7×10−5 g/m2s(0.15 mg/d m2/day,1997年測定)である。海浜地域,重工業地域では腐食の進行が速いことが知られ,腐食環境としては比較的厳しい環境である。暴露試験は1965年より開始され,定期的に外観,重量変化等を測定しており,今回50年にて全試料を回収して調査に供した。

2・3 腐食状況の調査

大気暴露後の表面の色調変化をJIS Z8781に準拠した測色計で測定した。また,その腐食状況を調査するため50×50 mm寸法に剪断して腐食生成物を剥離した後に腐食深さをマイクロメーターにて測定した。更に断面からもめっき層,鋼素地の腐食状況を観察した。腐食生成物の元素分析は電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)で行い,その同定はX線回折(XRD)を用いた。EPMAは加速電圧15 kV,測定点数500×500点とし,X線回折はCoターゲットで,測定角は2θで10~100°とした。またレーザーラマン分光法により面分析を行い,検出されたピークを化合物に帰属することで化合物種毎の面分布を測定した。この際の励起波長は532 nm,観測波長は1495~145 cm−1,スポット径は1 μmφ,積算回数は15秒で1回とした。

3. 実験結果

3・1 50年暴露後のめっき層,鋼素地の腐食状況

50年暴露した後の試験片外観をFig.2に示す。またそれぞれの試験片の明度(L*値)を測定した。Alめっき鋼板の暴露前の明度は80前後である。これに対して50年後の明度はType1で約32,Type2で約42を示した。Type1は31年段階で既に約30を示し,黒褐色に近い色調で,その後は殆ど変化が認められなかった。一方Type2はType1に比べると白さが残る外観であった。31年暴露材の調査結果4)より,この外観変化はめっきの底部の鋼が一部腐食し,この腐食物が表面を覆ったものと推定している。

Fig. 2.

Visual appearance of specimens after 50 years exposure. (Online version in color.)

次に表面と断面から鋼素地の腐食深さを測定した。これまで(暴露10~31年)は50 mm長さの断面観察の最も鋼素地が腐食した部位を測定していたが,今回(50年)は50 mm角試料の腐食生成物を除去後表面よりマイクロメーターで腐食深さを計測した。目視上深そうな部位5点の平均値を算出した。更にこの値はめっき厚みを含むためにめっき厚みを減じてこれまでのデータと比較できるようにした。同時にこれまでと同様の手法でも測定して,両者が概ね一致することを確認している。その結果をFig.3に示す。これまでType1の31年材において約50 μmの鋼素地腐食深さが認められたことを報告しており4),今回50年経過後では約0.1 mmに進行していた。鋼素地の腐食は主として剪断端面近傍で起こっていた。Fig.4に50年暴露材の端面近傍の断面写真を示す。Fig.4は端面より約10 mmの範囲を示しており,この図からもType2の鋼素地腐食が軽微であること,およびType1では端面から約5 mmの領域で鋼素地の腐食が比較的進行しやすいこと,上面(暴露したときの上面)の方がやや下面よりも腐食しやすいことが見てとれる。

Fig. 3.

Corrosion depth of steel substrate after outdoor exposure tests.

Fig. 4.

Cross sectional view of specimens near the cut edge after 50 years exposure. (Online version in color.)

Fig.3よりType1の腐食深さは経時に対してほぼ直線的に増大していた。50年経過後も端面近傍において約0.1 mmの鋼素地腐食であることを考えると,通常の環境においては十分な耐久性を有すると推察される。一方でType2の腐食深さはType1よりも更に軽微で,31年から50年の間もあまり増大しなかった。50年後も約25 μmと極めて小さい値を示した。

次に断面よりめっき層と鋼素地の腐食状況をより詳細に観察した。Fig.5にType1,Type2の典型的な腐食部位の断面光学顕微鏡写真を示す。Type1は既報の31年暴露材調査結果4)と同様にめっきの腐食が合金層に到達し,合金層のクラック部より腐食因子が鋼素地側に到達し,鋼素地が腐食してその堆積膨張により局部的に合金層が押し上げられた状態を示した。鋼素地の腐食は合金層に沿って内部で進行し,このため鋼の板厚方向への進展は比較的少ない。これに対してType2においては,腐食がめっきを貫通した後に合金層の一部が優先腐食する傾向が認められた。合金層の腐食は特に鋼素地に近い部位に認められ,鋼素地の腐食はType1に比べると大幅に抑制されていた。これはFig.3においても鋼の腐食が殆ど認められていないことと対応している。

Fig. 5.

Cross sectional observation of corroded portion in specimens after 50 years exposure.

3・2 腐食生成物の解析

Type1,Type2のそれぞれについて,代表的な腐食部を選定し,EPMAにて元素分布をマッピング測定した。またレーザーラマンマッピングにより腐食部にどのような腐食生成物が分布しているかも分析した。EPMAマッピングをFig.6に,ラマンマッピングをFig.7に示す。

Fig. 6.

Elemental distribution in corroded area after 50 years exposure. (Online version in color.)

Fig. 7.

Distribution of compounds in corroded area by means of Laser Raman Spectroscopy. (Online version in color.)

EPMAによる分析結果より,Type1の腐食生成物はAl,Si等のめっき層成分を含有する外層部とこれらを含有しないFe系腐食生成物である内層部より成っていた。これら外層,内層の腐食生成物はそれぞれCa,S,Cl等を含有していた。一方Type2においては合金層が残存しており,その一部が腐食していた。Alめっき層も部分的に腐食しており,めっき表面をAl系の腐食生成物が100 μm程度覆っていた。Al系腐食生成物中には特にSが検出された。Uchiyamaら5)もシンガポールで長期暴露したAlめっき鋼板(Type1)の断面をEPMAで分析しており,同様にめっき層,鋼板に由来する元素以外の元素としてS,Ca,Clがあることを述べており,本結果とほぼ一致している。Ca,Clは海塩粒子由来,Sは硫酸化合物に由来すると推察される。

Table 2にはX線回折により同定された腐食生成物を示す。Type1からはゲーサイト(α-FeOOH),マグネタイト(Fe3O4),シリカが,Type2からはゲーサイトとマグネタイトのみが検出された。断面EPMAにてType2にAlの腐食生成物が検出されたもののX線回折では検出されず,Alの腐食生成物は非晶質となっていると考えられる。Uchidaら6)はType1のAlめっき端面を分析し,非晶質のAlの腐食生成物が堆積していること,およびこの腐食生成物が端面のその後の腐食を抑制することを報告しており,今回も同様の現象が起こっていると思われる。

Table 2. Corrosion product identified by XRD analysis.
Goesite (α-FeOOH) Magnetite (Fe3O4) Silica (SiO2)
Type1 Identified Identified Identified
Type2 Idenitfied Identified

Fig.7のレーザーラマンによる化合物分布状況より,Type1からはゲーサイトとマグネタイトが,Type2からはゲーサイトのみが検出され,これらの分布状況が示されている。Type1において,ゲーサイトは合金層内部の鋼素地腐食部位に検出されたのに対して,マグネタイトは合金層内部の鋼素地腐食部,Alめっき層腐食部,めっき表層の腐食生成物堆積部のいずれからも検出された。31年暴露時に報告した4)ように,Feの腐食生成物が生成する際にAlイオンが存在するとゲーサイトが生成しやすいことが分かっており,今回特にAlイオンの供給が多いと思われる合金層内部の鋼素地腐食部でゲーサイトが検出されたことはその結果と一致する。一方Alイオンの供給が少なくなる表層側に行くにつれてマグネタイトが生成するようになっている。ゲーサイトは耐候性鋼の安定錆としても知られており,Alめっき鋼板の耐食性に寄与している可能性がある。

同様にType2においても合金層の腐食部位にゲーサイトが検出されており,上記と同様の事象が起こっていることが確認された。Type2においては,Alめっき表面にAlを含有する腐食生成物が堆積しているが,今回の分析においてその構造は明確とならなかった。

4. 考察

4・1 Type1の腐食挙動

まず,Type1Alめっき鋼板の腐食挙動について述べる。Fig.1に示したようにAlめっき層は針状のSi相を有する。Siの電位はAlに比べて高く7),Si近傍のAlの優先的な腐食がまず開始される。Fig.5の腐食後の写真においてめっき層に残存しているのがSiである。腐食が合金層に到達した後に合金層のクラックを通じて腐食因子が鋼素地に到達して鋼素地の腐食が始まる。合金層の電位は鋼板,Alめっき層よりも貴である7)ため腐食は鋼と合金層の界面を進行する。この時の腐食状況の模式図をFig.8に示す。

Fig. 8.

Schematic illustration of the corrosion of type1 aluminized steel sheets. (a) The corrosion of Al around Si starts. (b)The corrosion penetrate along Si and reach the alloyed layer. (c) The corrosion go through the cracks of alloyed layer and the corrosion of the base steel proceeds along the interface between the base steel and the alloyed layer.

Fig.3に示すように,暴露期間に対して鋼素地の腐食深さは50年までほぼ直線的に増大する傾向を示した。Type1のAlめっき層は大気腐食環境下で鋼素地を犠牲防食する能力は小さいため,Alめっき層の局部的な腐食が進行してFig.5に示されるように合金層の下部で鋼素地の腐食が進むとその際の堆積膨張のため合金層は持ち上げられ,一層腐食因子が合金層内に到達しやすくなる。このような影響で局部的な腐食が経時で進行しているものと推察される。

4・2 Type2の合金層組成

これに対してType2のAlめっき鋼板は大気暴露環境下で合金層が鋼素地に対して優先腐食している状況がFig.5において観察された。Fig.3においても鋼素地の腐食深さは軽微で31年と50年の間で殆ど差異が認められなかった。腐食は合金層の鋼素地に近い側で進行していたため,Type2の合金層組成をSEM-EDSで点分析した。その結果をFig.9に示す。この図は反射電子像で,中央付近の金属間化合物が2つの層よりなることが確認できる。EDSによる分析結果(5点平均値をFig.9に示す)とAl-Fe二元系状態図との対応より,Type2の合金層のAlめっき層に近い側はFe2Al5の最もFeに近い組成(Fe2Al5は組成幅を持つ),鋼素地に近い側はFeAl2の組成とそれぞれ一致した。すなわち,鋼素地,Fe2Al,Fe2Al5の三相が共存したときにFe2Alが最も腐食を受けやすいことを意味している。

Fig. 9.

BSE Image of intermetallic layer and the analyzed portions by EDS in type2 aluminized steel sheets. (Online version in color.)

Type2のAlめっき鋼板において,生成する合金層は通常Fe2Al5であるとされている810)。しかしFe2Al5に加えてFeAl311,12),あるいはFeAl213,14)が生成することが報告されている文献も存在する。Al-Fe二元系状態図においてFeAl2,Fe2Al5,FeAl3はいずれも常温から高温まで安定な相でどれも生成しうる。実際にめっきした際に特定の相が生成しやすくなるのは,何らかの速度論的要因と考えるのが自然である。Fe2Al5は直方晶の結晶構造を有し,c軸方向に格子欠陥を多数含有するためにこの方向の成長速度が大きいとされており13),最も頻繁に観察されると思われる。本報告においてType2のAlめっき鋼板が製造,暴露開始されてから50年以上経過しており,当時の操業条件等については明確でなく,また上記した既存の報告においてもどのような条件でFeAl2が生成しやすくなるかは明らかにされていない。

4・3 Al-Fe金属間化合物の電位

今回FeAl2よりなる合金層がFe2Al5,鋼素地に対して大気暴露環境において優先腐食することが示された。そこでこのような組成を有するインゴットを作成してその電気化学特性を評価した。インゴットの作成にはボタンアーク装置を用いて,Al-Fe二元系状態図に現れる主要な化合物としてFeAl3,Fe2Al5,FeAl2,FeAlを選定し,それぞれの組成となるように成分を調整した。溶解と冷却により20~25 mmφ×厚み約7 mmのインゴットを作成し,表面研磨後10 mm角以外をシールして電気化学測定に供した。

測定環境は,31年暴露時と同じく模擬雨水を使用した。200 ppmCl,200 ppmSO42−となるようにNaClとNa2SO4を用いて調整し,常温,大気中で浸漬電位,分極曲線を測定した。掃引速度は1 mV/sとした。この際鋼板とAlめっき鋼板(Type1)についても同様に測定した。

各金属間化合物の電位測定結果をFe組成に対して整理した結果をFig.10に示す。FeAl3の電位が最も高く,Fe2Al5,FeAl2,FeAlと金属間化合物中のFe濃度が高くなるにつれて腐食電位は卑な方向に変化する傾向が認められた。鋼板の電位はFeAl3とFe2Al5の間付近,Alめっき層の電位はFeAl3とほぼ同じであった。

Fig. 10.

Corrosion potential of intermetallic compound, steel substrate and aluminized steel sheets in an artificial rain water.

Alは活性な金属で腐食電位も本来は低いが,表面に安定な不働態皮膜を形成して通常は鋼よりも高い電位を有する。不働態化が破られるような塩化物イオンが存在する環境においては,鋼よりも低い電位を示すことが知られている7)。従ってAlあるいはAlを含有する金属間化合物の電位については,その測定環境が重要となる。

鋼中にAlを添加した鋼の希薄溶液中における電気化学特性について過去幾つか報告されている。例えばHeakalら15)はAlを含有しない鋼と1.3%Al含有鋼を0.05 MのNaCl溶液中で分極測定し,前者の電位が約−0.62 V(SCE),後者が約−0.68 Vであることが,またChenら16)はAl量を0から1.85%まで変化させた鋼を0.3%のNaCl溶液中で分極測定し,Alを含有しない鋼で約−0.49 V(SCE),0.96%Al鋼で約−0.58 Vとなることが報告されている。いずれの事例でもAl添加鋼の電位が低下する傾向が示されている。これらの理由は明確にされていないが,例えばアノード反応は大きく変わらずにカソード反応が起こり難くなったときに,これら両反応の釣合いで決定される腐食電位は低下する筈である。鋼中にAlが少量添加されることで表面にAlの不働態皮膜が生成しやすくなると仮定すると,カソード反応は遅くなることが推定され,一方Alが少量であるためにアノード反応が大きく変化しないときには腐食電位の低下は説明できる。

逆にカソード反応は大きく変わらずにアノード反応が起こりやすくなる場合にも腐食電位は低下する筈である。今回FeAl3,Fe2Al5,FeAl2,FeAlの順で電位が低下していたのは,この順に希薄溶液中に溶解しやすくなっていると解釈できる。Fig.11にこれらの化合物の分極曲線を示す。実際に上記の順にアノード反応が大きくなっていることが確認された。カソード反応に大きな違いは認められない。これは表面に生成する皮膜はどれもAlの不働態皮膜に近いためと考えられる。

Fig. 11.

Polarization curves of intermetallic compounds in an artificial rain water.

なお,Alめっき鋼板(Type1)をホットスタンプ工法に使用した際に加熱によりめっき層はSiを含有するAl-Fe系金属間化合物に変化するが,この時に生成する主要な相はFe2Al5とされている17)。実際には若干Siを含有するこの相の5%NaCl中における腐食電位は約−0.4 V(SCE)と,また鋼板の腐食電位は約−0.45 V(SCE)と報告されている。これらはAg/AgCl参照電極ではそれぞれ約−0.35 V,−0.4 Vに相当する。今回の測定結果と比較して,鋼板では大きな相違はないが,Fe2Al5については約0.17 Vの相違が生じた。今回の結果と既報との差異は,主として測定環境(人口雨水と5%NaCl)とSiの有無である。塩水環境ではAlの不働態皮膜が破壊される傾向になり,電位が上昇するとは考え難いため,1~2%含有されるSiが電位に影響している可能性が考えられる。

以上の検討結果より,Type2のAlめっき鋼板に生成する合金層はめっき条件によりFeAl2が生成することがあり,このFeAl2は大気環境下で鋼素地よりも電位が卑であるために優先腐食することが示された。通常生成すると言われているFe2Al5の電位も鋼素地よりも若干卑な電位を有し,Fe2Al5単相の合金層であっても鋼素地より優先腐食する可能性がある。

5. 結言

北九州市にてType1,Type2の溶融Alめっき鋼板を50年間大気暴露試験に供し,50年後の腐食状況と腐食生成物,腐食挙動について調査し,以下の結果が得られた。

(1)国内で一般に製造されているType1の溶融Alめっき鋼板の鋼素地の腐食は50年後も端面部が中心で,最大でも約0.1 mmであった。実用上十分な耐候性を有すると判断される。

(2)Type2の溶融Alめっき鋼板の耐食性は更に優れており,50年後の鋼素地の腐食は最大でも約0.025 mmで,31年より殆ど進行していなかった。

(3)腐食した鋼素地に生成した腐食生成物は主としてゲーサイト(α-FeOOH)で,これはAlめっき層あるいは合金層中のAlの作用で生成すると思われる。

(4)Type2の合金層は2層より形成され,鋼素地側のFeAl2が鋼素地に対して優先的に腐食していた。これはこの化合物の腐食電位が大気暴露環境で鋼素地よりも卑であるためと考えられる。

文献
 
© 2019 The Iron and Steel Institute of Japan

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