Tetsu-to-Hagane
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Social and Environmental Engineering
Recovery of Zinc by Reaction between Electric Arc Furnace Dust and Calcium Chloride
Hiroshi SatoKeiji Okumura
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 106 Issue 11 Pages 858-866

Details
Abstract

The chlorination and volatilization behavior of zinc was investigated by the reaction between ZnO, ZnFe2O4 and CaCl2. Experiments were conducted in a nitrogen atmosphere by using horizontal electric furnace. As a result of changing the ratio of zinc oxide to zinc ferrite at 1000ºC, it was expected that ZnO and ZnFe2O4 were chloride volatilized at the same time. In the kinetic study at 950ºC-1030ºC, Jander’s equation showed the experimental result well in the reaction system of this study, and the activation energy was 237 ± 18 kJ / mol. It was also found that carbon influenced the reaction product determination. FeO and CaFe2O4 were formed in the presence of carbon, and Ca2Fe2O5 was formed in the absence of carbon.

1. 緒言

亜鉛は鉄,アルミニウム,銅に次いで消費量の多い金属である。日本国内では年間約40万トンの安定した亜鉛需要があり,電池の材料やダイカスト用合金など,様々な用途に用いられている。その中でもめっき材としての利用が最も多く,全体の約60%を占めている1)。そのため,亜鉛リサイクリングを考えた際に,高濃度の亜鉛スクラップを多量に収集し,再利用につなげることは困難である。

現行の亜鉛リサイクリング法として,電気炉ダストを原料とした方法が挙げられる。めっき材に使用された亜鉛は鉄スクラップに付随して回収され,電気炉製鋼に組み込まれている。電気炉製鋼において不純物である亜鉛はダストに濃縮されており,ZnOやZnFe2O4として存在している。原料にも依存するが,電気炉ダスト中の亜鉛濃度は約30%にも上り,二次亜鉛の製造においては最も有用な資源である。めっき中の亜鉛を回収するには,このような製鋼ダストから回収する必要がある。その一例としてWaelz kiln法2)が挙げられる。Waelz kiln法では,ロータリーキルンを用いてダスト中の亜鉛を炭素熱還元によって金属蒸気にすることで分離している。しかし,現状では炭素還元により金属亜鉛まで還元された亜鉛は空気中で再酸化されており,最終的には粗酸化亜鉛として回収されている。すなわち,もともと酸化物であった亜鉛を金属亜鉛まで還元し,再び酸化させるといったエネルギー効率の悪いプロセスとなっている3)

このような現状に対して,近年新たな亜鉛回収方法の研究が行われている。Itohら4,5)は電気炉ダストにCaOを添加し,加熱したのちに磁場分離を施すLAMSプロセスを報告している。ダスト中のZnFe2O4をZnOとCa2Fe2O5に分離してから磁場をかけることで亜鉛と鉄を分離することが可能となる。また,塩化揮発法についても様々な報告がある。塩化亜鉛は高い蒸気圧と低い沸点をもっており,気体として容易に分離することが可能である。回収された塩化亜鉛は電気分解によって金属亜鉛とした後に,亜鉛製品として利用されることを想定しており,残渣は鉄の濃度が高くなるため製鋼材料としての再利用が期待されている。塩素の供給源として塩素ガス611)やPVC1214)を用いた先行の研究がされているが,本研究ではより扱いが容易であり,安全性の高い塩化カルシウムを用いて電気炉ダスト中の亜鉛を分離回収する。Guoら15)はZnO,ZnFe2O4,CaCl2試薬を用いて亜鉛の塩化揮発速度を調査している。窒素雰囲気下において反応温度(1173~1323 K)と初期亜鉛濃度が反応に及ぼす影響を一次反応の速度式を用いて解析している。この実験ではアルミナ製るつぼ(外径22 mm,内径19 mm,高さ28 mm)が採用されているが,本研究ではボート型の容器を採用し,反応系の違いにより律速段階が変化する可能性を示すとともに,これまで議論されてこなかった,Cが反応に及ぼす影響について調査を行った。

2. 熱力学的検討

Fig.1に本研究で用いる電気炉ダストのXRDパターンを,Table 1に組成を示す。電気炉ダスト中の亜鉛はZnOとZnFe2O4の2種類の化合物に分かれて存在していることがわかる。CaCl2との反応の傾向を調べるために熱力学計算を行った。本研究で扱う塩化揮発法について,予想される反応の標準ギブズエネルギー変化を計算した16)。温度範囲は800-1500°Cとし,以下の5つの反応について計算を行った。

  
1/3ZnFe2O4(s)+CaCl2(l)=2/3FeCl3(g)+1/3ZnO(s)+CaO(s)(1)
  
ZnFe2O4(s)+CaCl2(l)=ZnCl2(g)+Fe2O3(s)+CaO(s)(2)
  
ZnFe2O4(s)+CaCl2(l)=ZnCl2(g)+CaFe2O4(s)(3)
  
1/3Fe2O3(s)+CaCl2(l)=2/3FeCl3(g)+CaO(s)(4)
  
ZnO(s)+CaCl2(l)=ZnCl2(g)+CaO(s)(5)
Fig. 1.

XRD patterns of electric arc furnace dust (EAF dust).

Table 1. Chemical composition of electric arc furnace dust.
ElementCOSiClCaMnFeZnPbOthers
mass%2.629.91.34.42.01.622.530.51.63.60

Fig.2に反応(1)-(3)の計算結果を,Fig.3に反応(4),(5)における計算結果を示す。全ての反応において,標準ギブズエネルギー変化が正の値を示していた。このことから,今回設定した温度領域では密閉系の場合,反応は進行しないと考えられる。しかし,本実験は開放系であり,ガス生成物は系から即座に除去される。その結果,ガス生成物の分圧が下がり,キブズエネルギー変化が負になり反応は右に進むと考えられる。つまり,標準ギブズエネルギー変化が正の値を示していたとしても,ガス生成物の分圧が十分に低ければ反応が進行する可能性があると言える。また,亜鉛の塩化揮発反応の標準ギブズエネルギー変化は鉄の塩化揮発反応よりも小さかったため,亜鉛の塩化揮発反応が優先的に起こると予想される。

Fig. 2.

Standard Gibbs energy variation at ZnFe2O4 reaction with CaCl2.

Fig. 3.

Standard Gibbs energy variation at Fe2O3 or ZnO reaction with CaCl2.

3. 実験

3・1 ZnO-ZnFe2O4比の影響

ZnOとZnFe2O4の混合比率が反応に及ぼす影響を調査するために,以下の実験を行った。ZnO試薬(純度99.9%,粒径1 μm)とZnFe2O4試薬(純度99.5%,粒径180 μm)をTable 2に示す比率で混合し,それぞれの試料に対して亜鉛と等モル量のCaCl2(純度95.0%)を加え実験試料とした。Sample2はダスト中のZnとFeの比率に最も近い試料である。Fig.4に実験装置の概略図を示す。反応管はムライト製で外径50 mm,内径40 mm,長さ600 mmである。実験試料約1 gをムライト製燃焼ボート(長さ105 mm,幅14 mm,深さ11 mm)に装入し,反応管内で炉の中心部に設置する。N2ガスを0.5 L/minで流し,10分間の炉内雰囲気ガスの置換を行う。その後昇温し,1000°Cに達してから60分間反応させる。反応後の試料を炉内で冷却した後,取り出す。使用した燃焼ボートは加熱によって質量変化しないことを確認してある。反応後の試料をXRDで分析し,反応生成物を調査した。

Table 2. Mixing ratio of samples (mass%).
Sample1Sample2Sample3
ZnFe2O4826950
ZnO183150
Fig. 4.

Experimental apparatus.

3・2 亜鉛の塩化揮発速度

亜鉛酸化物と塩化カルシウムの反応について,反応機構を解明するために反応速度を調査した。69 mass%ZnFe2O4-31 mass%ZnO混合試薬に亜鉛と等モル量のCaCl2を加え,実験試料とした。Fig.5に実験装置の概略図を示す。反応管はムライト製で外径50 mm,内径40 mm,長さ600 mmである。試料約1 gを燃焼ボートに装入し,試料の余熱温度が350°Cとなるように反応管内で炉の低温部に設置する。N2ガスを0.5 L/minで流し,10分間の炉内雰囲気ガスの置換を行った。その後炉を加熱し,炉内が目的の温度に達してから試料を高温部に移動させた。目的の時間反応させてから試料を低温部分まで移動させ,冷却した。実験温度は950,975,1000,1030°Cであり,反応時間は0~90 minとした。反応後の残渣をXRD,SEM-EDXによって分析した。加熱前後の試料の重量変化と定量分析の結果から各元素の減少率を求め,これを反応率αとして反応性を評価した。αの計算には次式を用いた。

  
α=WbefWaftWbef(6)
Fig. 5.

Experimental apparatus in kinetics study.

ここで,Wbefは反応前の各元素質量,Waftは反応後の各元素質量を表す。試料は乳鉢で粉砕した後,その粉末試料の一部を採取して分析に供した。試料内の元素ごとの質量は,EDXによる元素濃度の測定値と試料重量の積により求めた。

3・3 炭素の影響

3・1と3・2では試薬から調整した模擬ダストを用いて実験を行ったが,実際の電気炉ダストには模擬ダストには含まれていない微量の炭素が存在しており,亜鉛酸化物の炭素還元が起こる可能性がある。そこで,亜鉛と塩化カルシウムの反応に対して炭素が及ぼす影響を調査した。実験試料として以下の4試料を準備した。

(1)電気炉ダスト+CaCl2

電気炉ダスト中の亜鉛とCaCl2が等モル量になるように,ダストとCaCl2を混合した。

(2)脱炭処理ダスト+CaCl2

Fig.4に示す横型電気炉を用いて電気炉ダストを空気中で600°C,1時間加熱した。これにより,ダスト中の炭素をガス化して取り除いた。脱炭処理前後で組成変化がないことをXRDで確認した。脱炭処理後のダストに亜鉛と等モル量のCaCl2を加え実験試料とした。

(3)ZnFe2O4-ZnO-CaCl2

69 mass%ZnFe2O4-31 mass%ZnO混合試薬に亜鉛と等モル量のCaCl2を加え実験試料とした。

(4)ZnFe2O4-ZnO-CaCl2-C

上記の試料(3)に,亜鉛に対して8.5%の質量の黒鉛(粒径約30 μm)を炭素として加え,実験試料とした。黒鉛の比率はTable 1におけるCとZnの比率を参考に決定している。

以上の4試料に対して実験3・1と同様な方法で実験を行った。反応温度は1000°Cのみとした。反応後の残渣をXRDによって分析し,反応生成物を調査した。また,反応後の残渣に対してSEM-EDXによる定量分析を行い,式(6)を用いて反応率を算出した。

4. 結果と考察

4・1 ZnO-ZnFe2O4比の影響

Fig.6に反応後残渣のXRD解析結果を示す。いずれの試料についてもCaCl2のピークが確認されなかったが,これはCaCl2の潮解性に起因するものと考えられる。測定中にCaCl2が潮解し,結晶性が失われたためにXRDでは観測できなかった。残渣には反応生成物としてCa2Fe2O5が確認されたため,以下の反応が起きていると考えた。

  
ZnO(s)+ZnFe2O4(s)+2CaCl2(l)=2ZnCl2(g)+Ca2Fe2O5(s)(7)
Fig. 6.

XRD patterns of reacted samples ((a): 81 mass%ZnFe2O4- 19 mass%ZnO, (b): 69 mass%ZnFe2O4- 31 mass%ZnO, (c): 50 mass%ZnFe2O4- 50 mass%ZnO).

81 mass%ZnFe2O4の試料においてZnOは全て反応しており,残渣中には残っておらず,50 mass%ZnFe2O4についてはZnFe2O4のピークがほとんど確認されなかったため,ZnFe2O4は概ね反応していると言える。31 mass%ZnO-69 mass%ZnFe2O4は実験試料の中でZnOとZnFe2O4のモル比が最も1:1に近く,反応後残渣にZnOとZnFe2O4がどちらも含まれていた。そのため,ZnOとZnFe2O4は同時に塩化揮発していると考えられる。

4・2 亜鉛の塩化揮発速度

Fig.7に各温度における試料重量の経時変化を示す。図中の破線は試料中の亜鉛がすべて塩化亜鉛として揮発した際の残渣重量を表している。全ての温度において反応時間と共に試料重量が減少しており,揮発反応が起きていた。また,高温になるほど重量の減少速度が速くなっており,揮発速度が上昇していると考えられる。Figs.89に亜鉛重量と亜鉛の反応率の経時変化を示す。反応時間が進むにしたがって亜鉛重量が減少し,亜鉛反応率が上昇している。また,反応温度が高いほど反応率の上昇速度が大きくなっており,反応速度が上昇していると考えられる。1030°Cにおいては40 minで反応率90%を達成したが,それ以降は反応率がほぼ一定となった。

Fig. 7.

Effect of temperature on change of sample mass with time.

Fig. 8.

Effect of temperature on change of zinc mass in sample with time.

Fig. 9.

Effect of temperature on change of zinc reaction ratio with time.

得られた亜鉛反応率の経時変化に対して反応速度式を当てはめた。今回採用した速度式は固体反応においてよく用いられるJanderの式17)である(式(8))。この速度式では球状粒子表面から反応が進み,相変化が起こる場合を想定している。粒子表面に反応生成物層が形成され,その生成物層中を反応物が粒子内部へ向かって拡散し,未反応粒子表面に到達する過程を律速段階と考えている。

  
{1(1α)1/3}2=Ktr02(8)

ここで,αは反応率,Kは速度定数,tは時間,r0は反応前の反応物粒子径を示す。式(8)の左辺を縦軸に,時間tを横軸にとって実験データをプロットする。このデータ点に対して回帰直線を引き,その傾きから反応前の粒子径を含んだ速度定数k(=K/r02)を求める。実験データを式(8)にあてはめた結果をFig.10に示す。温度上昇と共に回帰直線の傾きが大きくなっていることがわかる。つまり,温度上昇とともに速度定数が大きくなっており,反応速度が上昇していると確認された。回帰直線の傾きから得られた速度定数kの値をTable 3に示す。

Fig. 10.

Plot of reaction ratio according to Eq.(9).

Table 3. Rate constant at different temperature.
Temperature (ºC)Rate constant k (×10–3 min–1)
9501.65 ± 0.06
9752.57 ± 0.08
10003.65 ± 0.03
10307.10 ± 0.25

得られた速度定数と温度の関係をアレニウスの式(式(9))に従ってプロットした。

  
k=Aexp(ERT)(9)

ここで,kは速度定数,Aは頻度因子,Eは活性化エネルギー,Rは気体定数,Tは温度を表す。ln(k)を縦軸に,1/Tを横軸にとり,実験から得られた速度定数と温度の関係をプロットしたものをFig.11に示す。このデータ点に対して回帰直線を引き,その傾きから活性化エネルギーEを求めた。その結果,今回の反応系における活性化エネルギーは237±18 kJ/molとなった。

Fig. 11.

Arrhenius plot of rate constant.

Fig.12に1030°Cで反応させた試料についてのXRDパターンを示す。CaCl2のピークが確認されなかったが,これは4・1と同様にCaCl2の潮解性が原因である。反応時間が大きくなるにつれてCa2Fe2O5の強度が大きくなっており,反応(7)が起きていることがわかる。また,50 min反応させた試料においても未反応の亜鉛酸化物のピークが確認された。

Fig. 12.

XRD patterns of ZnO-ZnFe2O4-CaCl2 after testing at 1030ºC.

以上から,次のような反応機構によって亜鉛の塩化揮発が起きていると考えた。まず,反応(7)によって亜鉛酸化物表面に反応生成物であるCa2Fe2O5の層が形成される。生成物層内を反応生成ガスと液体のCaCl2の相互方向の拡散速度の違いにより律速段階が決まっている。本実験は窒素ガス流通下であるため,試料表面の反応生成ガス分圧は非常に小さくなり,反応生成物層内の分圧勾配が大きくなる。そのため,生成ガスの生成物層内の拡散は非常に速くなると思われる。よって,反応物であるCaCl2がCa2Fe2O5層中を移動し,未反応の亜鉛酸化物表面に到達する過程が反応の律速段階となっていると考える。また,反応後期ではCaCl2が減少し,未反応粒子と接触しなくなることで未反応粒子がCaCl2から孤立し,反応が進行しなくなる。溶融したCaCl2の一部は燃焼ボート底に広がってしまい,反応に関与できなくなっているといえる。今回の実験では1030°Cにおいて反応率90%で頭打ちとなった。反応をさらに進めるためには,動的な反応系で粒子を動かすことによってCaCl2と再接触させることや,粒子を粉砕することで新たな反応界面を露出させるなどの工夫が必要であると考えられる。

Guoら15)はZnO-Fe2O3-CaCl2の反応について速度論的調査を行っている。その際に,本研究とは異なる一次反応の速度式を用いており,活性化エネルギーを110-175 kJ/molと求めている。これは反応系の違いが影響していると思われる。本実験ではボート型の容器で反応させているのに対し,Guoらはるつぼ型の容器を採用している。この違いにより,律速段階に差が生じていると考えられる。

今回の実験において,反応後に反応管出口付近に付着していた物質を回収し,EDX分析を行った結果をTable 4に,XRD解析の結果をFig.13に示す。Table 4から,高い亜鉛濃度,塩素濃度が確認された。そのため,試料中の亜鉛が塩化揮発していると確認された。また,微量のFeも確認されたが,今回の回収物は様々な実験条件で揮発した物質が集積したものであるため,どの段階で発生したかは不明である。ZnFe2O4中の鉄が一部塩化揮発していると言えるが,低濃度であるため,反応条件によってはZnとFeの分離が可能であると考えられる。また,Fig.13からはZnCl2のピークは確認されなかった。ZnCl2は潮解性を持っているため,CaCl2と同様な理由で検出されなかった。ZnOのピークが支配的であったが,今回の回収物は炉内に長期間放置されており,その間に複数回の実験を行ったことにより徐々に酸化が進んでいたと考えられる。

Table 4. Chemical composition of recovered sample.
ElementsConcentration (at.%)Concentration (mass%)
O27.0210.89
Cl40.0635.62
Fe1.952.74
Zn30.9650.75
Fig. 13.

XRD pattern of recovered sample.

4・3 炭素の影響

Fig.14に脱炭処理前後のダストのXRD解析の結果を示す。処理前後で回折パターンに大きな変化はなく,ダストの組成に変化がないことを確認した。炭素を含んでいる2試料について,反応後残渣のXRD回折パターンをFig.15に示す。ZnO-ZnFe2O4-CaCl2-Cとdust-CaCl2では互いにCaFe2O4が反応生成物として確認されたため,反応(3)が起きていると言える。この2試料について近い回折パターンが得られたため,混合試薬に炭素を加えることでダストとCaCl2で起こる反応に近い反応を再現できると考えられる。dust-CaCl2については残渣にFeOが含まれていることから,炭素による鉄の還元反応も起きている。また,ZnOのピークが消失していることから,反応(5)も同時に起きているが,反応生成物であるCaOが確認されなかった。つまり,ZnOはCaCl2ではなくCによって還元されており,金属亜鉛が発生していると言える。炭素を含んでいない2試料について反応後残渣のXRD解析の結果をFig.16に示す。炭素を含まない2試料についても近い回折パターンが確認され,互いに反応生成物としてCa2Fe2O5が確認された。そのため反応(7)が起きていると考えられる。以上から,Cの存在下では反応(3)と酸化鉄の炭素熱還元反応によってCaFe2O4やFeOが生成し,Cを含まない場合では反応(7)によってCa2Fe2O5が生成することがわかった。そのため,ダスト中の反応を正確に調査するためには炭素を含んだ系を考えることが望ましいと思われる。

Fig. 14.

XRD patterns of EAF dust before and after decarbonization.

Fig. 15.

XRD patterns of samples including carbon after testing.

Fig. 16.

XRD patterns of decarbonization samples after testing.

反応後の残渣についてEDX分析の結果をTable 5に示す。一部の元素が増加しているものがあったが,試料内の成分の偏りや測定の誤差によるものと考えられる。ダストとCaCl2の混合試料では,Znの反応率に対してClの反応率が低かった。これはダスト中の炭素によって亜鉛酸化物が還元され,金属亜鉛として揮発していることが原因であると思われる。Znが金属亜鉛として揮発したことにより,未反応のCaCl2が残渣中に残っているため,Clの反応率が低くなったと考えられる。一方,Feに関しても質量の減少が確認されたが,これはZnと反応しなかったCaCl2がFeと反応し,Feが塩化揮発している。同様な傾向がZnO-ZnFe2O4-CaCl2-Cでも確認された。Znは全て反応しているのに対し,Clは50%程度の反応率を示していた。つまり,除去された亜鉛のうち,およそ半分が炭素還元によるものであり,残りの半分が塩化揮発によるものと言える。先ほどと同様にFeの減少が確認され,Feの塩化揮発反応が起きていると考えられる。一方,脱炭処理を施したダストとCaCl2の混合試料,ZnO-ZnFe2O4-CaCl2ではZnとClがともに高い値を示しており,Feの減少は確認されなかった。そのため,Znの塩化揮発反応がスムーズに起きており,Feの塩化揮発反応を抑制できていると考えられる。

Table 5. Chemical composition and reaction ratio of residue.
ElementsWeight before testing (g)Weight after testing (g)Reaction ratio α (–)
dust-CaCl2C0.0180
Cl0.2640.1300.51
Ca0.1450.153
Fe0.1580.1290.18
Zn0.2140.0090.96
ZnO-ZnFe2O4-CaCl2-CC0.0210
Cl0.2710.1320.51
Ca0.1530.105
Fe0.1840.1500.18
Zn0.25101.00
decarbonization dust-CaCl2Cl0.2570.0420.84
Ca0.1420.129
Fe0.1550.205
Zn0.2090.0230.89
ZnO-ZnFe2O4-CaCl2Cl0.2750.010.96
Ca0.1550.153
Fe0.1860.189
Zn0.2540.0440.83

以上から,Cの存在下ではZnの一部が炭素還元によって金属亜鉛として揮発し,その結果塩化揮発反応は抑制される。その代わりにFeの塩素化反応が起こり,揮発すると考えられる。Cを含まない系ではFeの塩素化反応はほとんど起こらず,Znの塩化揮発反応が支配的である。

ダストにはもともとCが含まれており,これがZnの分離に活用できる。そこで,従来法の炭素熱還元法と本研究の塩化揮発法を組み合わせた処理プロセスを考える。ダストにあらかじめ含まれているCによって亜鉛酸化物を還元し,そこで還元しきれなかった亜鉛酸化物をCaCl2によって塩化揮発させる方法である。この方法について新たに実験を行った。電気炉ダストとCaCl2について,ダスト中のZnとCaCl2のモル比が1:0.515になるように混合し,N2雰囲気下において1000°Cで1時間加熱した。実験装置はFig.4に示す横型電気炉を用いた。加熱後の残渣をSEM-EDXによって定量分析した結果をTable 6に示す。ZnとClの反応率はともに約95%と高い値となっており,未反応のClが無いことが確認された。また,Feが減少していないことから,Znのみが選択的に塩化揮発していることが分かった。つまりCの存在下であっても,CaCl2量を調整することによってFeの塩化揮発を抑えることが可能であり,ZnとFeの分離が実現できることが確認された。この実験から,Znに対してモル比で半分量のCaCl2でも亜鉛除去は充分に行えることが確認でき,残渣中に塩素を残すことなくZnを除去できると判明した。炭素還元によって発生した金属亜鉛と塩化揮発した塩化亜鉛の分離や,金属亜鉛の空気中での再酸化などの問題を抱えているが,Znを高効率で回収できる可能性をもつプロセスと考えられる。

Table 6. Chemical composition of residue and reaction ratio in carbochlorination process.
ElementsWeight before testing (g)Weight after testing (g)Reaction ratio α (–)
C0.0210
Cl0.1780.0070.959
Ca0.0970.115
Fe0.1800.201
Zn0.2430.0130.946

5. 結言

本研究では電気炉ダストの新たな処理プロセスとして,CaCl2を用いたZnの塩化揮発法に着目し,亜鉛の塩化揮発挙動を調査した。その結果を以下に示す。

(1)ZnOとZnFe2O4の塩化揮発反応は同時に起きている可能性が高い。

(2)ZnFe2O4-ZnO-CaCl2において反応速度解析を行った結果,今回の反応系ではJanderの式が実験結果をよく表しており,活性化エネルギーは237±18 kJ/molであった。回収物から高い亜鉛濃度,塩素濃度が確認され,亜鉛の選択的な塩化揮発が可能であると確認された。

(3)Cの存在下ではCaFe2O4やFeOが生成し,Cの非存在下ではCa2Fe2O5が生成した。

(4)実ダストでは炭素が含まれており,加熱により炭素熱還元と塩化揮発が起きていると考えられる。そこで,炭素熱還元と塩化揮発法を組み合わせたプロセスを提案し,ダスト中のZnに対してモル比でおよそ半分量のCaCl2加え,1000°Cで加熱することでZnとClの除去率が共に約95%となった。

文献
 
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