鉄と鋼
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製銑
コークス品質と装入嵩密度に及ぼす成型炭サイズの影響
野村 誠治
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2020 年 106 巻 9 号 p. 602-610

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Abstract

Briquette blending carbonization process is one of the effective cokemaking technologies to increase the blending ratio of semi-soft coking coals. The effect of coal briquette size on coke quality and bulk density in coke oven was studied. It was revealed that coke strength DI15015 is dependent on the briquette size. DI15015 shows a maximum, a minimum or monotonic increase with increasing briquette size, which depends on the blend composition of the briquette and the powder coal. The mean size of coke decreases and coal charge bulk density increases with increasing the briquette size. Choice of suitable briquette size is important from the viewpoint of coke quality, productivity and coke oven operation.

1. はじめに

高炉用コークス製造工程における現在の大きな技術的課題の一つは,コークス製造用原料炭の品位低下への対応である1)。この課題に対応するため,室式コークス炉において,乾燥炭装入法(CMC2),DAPS3,4)),成型炭配合法5),スタンピング法6)など,石炭装入嵩密度向上による劣質原料炭増使用技術の開発,実用化が進んでいる。

日本では,成型炭配合法5)の実機化後,1980年代に連続式成型コークス製造法(FCP)の開発が国家プロジェクトで進められた7,8)。成型炭配合法では,成型炭は粉炭と混合して室式コークス炉の炭化室に装入されて乾留されるが,FCPでは成型炭のみがシャフト炉で連続的に乾留される。成型炭乾留コークスの強度については,石炭粒度や石炭およびバインダー種類が及ぼす影響について種々の報告がされている911)。しかしながら,徐々に乾燥炭装入法の実機が成型炭配合法に代わって普及し,開発が完了したFCPが実機化されなかったこともあり,高炉用コークス製造技術分野における石炭成型技術への注目度は低下していた。

一方,現在,石炭成型技術は,安価な含炭素廃棄物のリサイクルや劣質原料炭の使用割合を増加させるための有用技術として再び注目を集めている12)。Diezらは,タールスラッジや油系廃棄物など,鉄鋼製造プロセスで発生する含炭素廃棄物を成型してコークス製造原料の一部に用いる検討を行い,適切な条件を選定すれば含炭素廃棄物の混合がコークス品質に大きな影響を及ぼさないことを示している12)。粉コークスや無煙炭13),褐炭14,15)の成型物についても,高炉用コークス製造原料としての活用が検討されている。Montianoら16)は,おが屑,非粘結炭にバインダー(コールタールとタールスラッジ)を加えて成型し,成型炭サイズがコークス品質に及ぼす影響について検討している。彼らは,粒径が大きい成型炭(23 g)と小さい成型炭(4-6 g)をそれぞれ5-15 mass%の割合でブレンド炭に配合してコークスを製造し,小さい成型炭を配合した場合のほうが,コークス強度(DI15015)が低下する変化量が小さく,コークス反応性(CRI)が向上する変化量が大きく,反応後強度(CSR)が低下する変化量が大きくなると述べている。

成型炭サイズは,コークス品質と装入嵩密度の両方に影響を及ぼすと考えられるが,高炉用コークス製造用に用いられる一般的な原料炭(強粘結炭,非微粘結炭)の成型炭を用いた詳細な検討はされていない。そこで本研究では,主に通常の配合炭から構成される成型炭を対象とし,コークス品質と装入嵩密度に及ぼす成型炭サイズの影響について検討した。

2. 実験方法

2・1 試料

実験にはTable 1に示す4種類の石炭を用い,Table 2の配合比で混合して4種類の配合炭1~4を調整した。なお,石炭A,BおよびCは強粘結炭,石炭Dは全膨張率(TD)が28%と低い非微粘結炭である。配合炭4は実機プラントから採取した配合炭である。成型用バインダーとしては軟ピッチ(以後,ピッチと略記)を用いた。ピッチの軟化点は25°C,QI(キノリン不溶分)とTI(トルエン不溶分)はそれぞれ8%,17%であった。

Table 1. Characteristics of the coals used in the experiment.
CoalProximate AnalysisRuhr DilatometryGieseler PlastometryPetrographic Analysis
VM (%, db)Ash (%, db)Total Dilatation (%)Log10 (Max. Fluidity/ddpm)Mean Max Vit. Ref. (%)
A21.39.4221.381.43
B24.48.91343.001.28
C36.89.42334.390.85
D36.69.3282.320.79
Table 2. Characteristics of the blended coals.
BlendCoalProximate Analysis VM (%, db)Ruhr Dilatometry Total Dilatation (%)
ABCD
Blend 180%20%26.855
Blend 230%30%40%28.481
Blend 330%30%40%28.432
Blend 428.047

2・2 粉炭と成型炭

コークス強度は,膨張比容積(Specific dilatation volume,以後SVと略記;ジラトメーター法により測定する全膨張率(Total Dilatation; TD)に類似)に依存する17)ので,石炭配合,石炭粒度,ピッチ添加比率を変えて粉炭および成型炭のSVを変化させ,成型炭サイズがコークス品質に及ぼす影響を詳細に検討した。

粉炭70 mass%と成型炭30 mass%の混合物で乾留試験を実施するため,粉炭,成型炭原料をそれぞれTable 3に示すような条件で調整した。ここで,粉炭は乾留試験にそのまま供給する粉砕した石炭を,成型炭原料は成型炭製造のために成型機に供給する石炭を意味する。Test1では,配合炭1を-3 mm 85%に粉砕したものを粉炭とし,配合炭1を-1.5 mmに粉砕してピッチを8 mass%混合したものを成型炭原料とした。ピッチは,高速かくはんミキサーに蒸気を吹き込んで70-80°Cに加温して石炭(水分3%)と混合した。以下ピッチと石炭の混合は同じ条件とした。Test2では,配合炭2を-3 mm 85%に粉砕したものを粉炭とし,配合炭4を-3 mm 85%に粉砕した後,0.5 mmの篩でふるいわけた篩下-0.5 mm試料にピッチを12%混合したものを成型炭原料とした。Test3では,配合炭3を-3 mm 85%に粉砕したものを粉炭とし,配合炭3を-1.5 mmに粉砕してピッチを8%混合したものを成型炭原料とした。Test4では,配合炭3を-3 mm 85%に粉砕した後に0.3 mmの篩でふるいわけ,篩上+0.3 mm試料を粉炭とし,篩下-0.3 mm試料にピッチ10%を混合したものを成型炭原料とした。

Table 3. Test conditions (powder coal and briquette).
Test 1Test 2Test 3Test 4
PowderCoal blendBlend 1Blend 2Blend 3Blend 3
Coal grind–3 mm 85%–3 mm 85%–3 mm 85%+0.3 mm
(of –3 mm 85%)
Specific dilatation volume (cm3/g)1.882.241.511.52
BriquetteCoal blendBlend 1Blend 4Blend 3Blend 3
Coal grind–1.5 mm–0.5 mm–1.5 mm–0.3 mm
(of –3 mm 85%)
Pitch8%12%8%10%
Specific dilatation volume (cm3/g)2.621.941.841.71
Briquette size0.6-2 mm*
2-6 mm*
6-15 mm*
15-40 mm*
0.6-2 mm*
2-6 mm*
6-15 mm*
4.7 cm3
15 cm3
56 cm3
0.6-2 mm*
2-6 mm*
6-15 mm*
15-40 mm*
0.6-2 mm*
6-15 mm*
15-40 mm*
56cm3

* prrepared from 56 cm3 briquette

次に,成型炭原料炭をダブルロール型の成型機を用いて成型した。成型炭の大きさは64×42×32 mm,体積56 cm3である。サイズが異なる成型物を得るため,体積56cm3の成型炭の一部を破砕し,0.6 mm,2 mm,6 mm,15 mmおよび40 mmのふるいで所定の粒度にふるいわけた。成型炭を破砕・ふるいわけして調整した成形物は,粒径が小さいもの(例えば,0.6-2 mmや2-6 mm)であっても,以後全て便宜上成型炭と呼ぶことにする。実験に用いた成型炭をTable 3に示す。Test2では,成型機の成型カップの大きさを変更し,体積4.7 cm3,15 cm3の成型炭も製造した。Test4では,体積56 cm3の成型炭の原型物も試験に用いた。なお,成形炭の密度は,平均で1.18 g/cm3であった。実験に用いた成型炭および成型炭を破砕して調整した成形物の一例をFig.1に示す。

Fig. 1.

Photographs of briquettes.

粉炭試料とピッチ混練後の成型炭原料に関しては,粘結性を評価するためにSV17)を測定した。SVは,ジラトメーターで測定される膨張率と同様の指標であるが,石炭を微粉砕してペンシル状に成型せず,粉体のあり姿のままで測定し,石炭重量あたりの膨張後体積で評価することに特徴がある。実験は,2.5 gの試料を容器に入れ(充填高さ60 mm),電気炉で550°Cまで昇温速度3°C/minで加熱し,加熱後の最大試料高さを測定してSVを評価した。最大試料高さは,試料上面位置を変位計で検出することにより求めた。それぞれの試験条件における粉炭と成型炭原料のSVをTable 3に示す。

Test1では,成型炭原料のSV>粉炭のSVであるのに対し,Test2では,成型炭原料のSV<粉炭のSVであり,Test1とTest2を比較することで粉炭と成型炭のSVの大小が異なる条件で成型炭サイズがコークス品質に及ぼす影響を評価した。また,Test3およびTest4は非微粘結炭Dを40%含む配合炭3を原料としているため,粉炭のSVが1.51-1.52,成型炭原料のSVも1.71-1.84と低く,非微粘結炭を多量に配合した条件(SVが低い条件)で成型炭サイズがコークス品質に及ぼす影響を評価した。

2・3 乾留およびコークス品質評価

粉炭と成型炭は,水分3%に調整した後に70:30の重量比率で混合し,装入密度850 kg-dry/m3(ドライ)で電気加熱式試験コークス炉(炉幅420 mm;炉長610 mm;炉高400 mm)に装入後,実機コークス炉のフリュー温度1250°Cに相当する昇温条件で18.5時間乾留してコークスを製造した17)。乾留後のコークスは窒素雰囲気中で冷却した後,スタビライズのために2 mの高さから3回落下衝撃を加えた後,コークス強度(ドラム強度指数(DI15015:JIS K2151に記載のドラム150回転後15 mm篩上指数))18),塊コークスの反応性(CRI:Coke Reactivity Index:20 mmの塊コークス試料200gをCO2雰囲気中1100°Cで2 h反応させた後の重量減少百分率)および熱間反応後強度(CSR:Coke Strength after Reaction:上記の反応後試料にI型ドラムで600回転の衝撃を加えた後の9.5 mm篩上重量の反応後重量に対する百分率)を測定した19)

2・4 嵩密度測定

成型炭サイズが装入嵩密度に及ぼす影響を検討するため,代表としてTest 4において,乾留試験を行う前に,粉炭と成型炭(4種類のサイズが異なる成型炭(0.6-2 mm,6-15 mm,15-40 mm,56 cm3))の混合試料を落下させて充填密度を測定した。測定は,2 mの高さから34 kgの試料を,秤の上に設置した一辺305 mmの立方体容器(内容積0.0283 m3)内に落下させ,容器に振動を与えないで容器高さよりも上にある試料を排除した後,容器内の石炭重量を容器容積で除することにより求めた20,21)

3. 結果および考察

3・1 コークス強度に及ぼす成型炭サイズの影響

成型炭サイズとコークス強度DIの関係をFig.2に示す。ここで成型炭サイズは,成型炭を調整する時に用いたふるい目上下の平均値,あるいは次式で示される球相当体積径D(mm)で表示した。

  
D=2×(3V/4π)1/3×10

ここで,V(cm3)は成型炭の体積である

Fig. 2.

Relationship between briquette size and (a) DI1506, (b) DI15015 and (c) DI1506-15.

Fig.2(a)のDI1506は表面破壊により生成すると考えられる6 mm以下の粉率(%)を100から差引いた指数で,表面破壊の強度に相当する。Fig.2(c)のDI1506-15は,体積破壊により生成すると考えられる6-15 mmの粉率で,体積破壊粉率に相当する指数である22)。DI1506-15,DI1506およびDI15015の間には,DI1506-15=DI1506-DI15015の関係がある。Fig.2(b)に示すように,試験条件により成型炭サイズとDI15015の関係は異なり,成型炭サイズが10 mmの条件において,DI15015が極大値を示す場合(Test1),成型炭のサイズが大きくなるとDI15015が増加する場合(Test2)および成型炭のサイズが10 mmの条件においてDI15015が極小を示す場合(Test3,4)があることがわかる。

上記のように,条件によって成型炭のサイズがコークス強度に及ぼす影響が変化する現象は,Fig.3に示すような成型炭の膨張による影響と粘結材の分散による影響の差から説明することができる。一般的に,石炭は粒子サイズが大きいと加熱時に軟化溶融したときの膨張率が高くなる23)。これは,粒子サイズが大きいほど軟化溶融した石炭粒子内にトラップされたガスの拡散距離が長くなり,粒子に内包されるガスにより膨張が促進されるためであると考えられている。成型炭に関しても,成型炭のサイズが大きくなると同様の効果により膨張率は大きくなると推察される。成型炭が大きく膨張すると,成型炭の周囲に存在する粉炭が圧密されてコークス強度が向上する17)。ここで,56 cm3成型炭を破砕・ふるいわけして,サイズが異なる小さい成型炭を調整する際,元の成型炭は内部の低密度で弱い部分を起点として破砕されたと考えられる。このことは,破砕・ふるいわけして調整した成型炭の表面近傍の局所的な充填密度が,元の56 cm3成型炭とは異なり,若干低い可能性があることを示唆している。成型炭の膨張現象を考えるうえで,この差異が及ぼす影響は無視できると考えられるが,局所的な密度差の有無については今後検討する価値がある。

Fig. 3.

Mechanism to explain the effect of briquette size on coke strength.

類似例として,プラスチックのサイズがコークス品質に及ぼす影響について報告されている24)。この検討では,サイズが異なるプラスチックを石炭に2 mass%混合し,あるプラスチックサイズでDI15015が極小値を示すこと,極小を示すプラスチックのサイズはプラスチックの種類によって異なり,ポリエチレン(PE)では10 mm,ポリスチレン(PS)では3 mmであることが示されている。

プラスチックを添加した場合と同様に,成型炭の配合比率が同一の条件では,成型炭と粉炭との接触面積は成型炭のサイズに反比例し24),成型炭のサイズが増加するほど接触面積,すなわち圧密される粉炭の領域は小さくなる。そのため,成型炭のサイズを増加させることによって成型炭の膨張率が増加する影響(つまり,コークス強度が向上する効果)が大きく,成型炭のサイズの増加によって圧密される面積の減少の影響が相対的に小さい場合,成型炭のサイズの増加によってコークス強度が向上する場合があると考えられる。成型炭が膨張する割合は,成型炭の原料に依存し,成型炭の原料の膨張性が高い場合(Fig.3のC1)は,低い場合(Fig.3のC2)よりもコークス強度を向上させる効果が大きいと考えられる。

一方,成型炭中にはバインダーとして粘結補填材のピッチが8-12 mass%含まれており,成型炭のサイズが小さいほど,装入物全体(粉炭と成型炭の混合物)にピッチがより均一に分散し(理由については後述する),コークス強度向上に寄与することになる。ここで,成型炭の密度は1180 kg/m3,乾留試験実施時の平均装入密度は850 kg/m3であることから,残部である粉炭部の平均装入密度は710 kg/m3と計算することができる。ピッチの分散性の向上によるコークス強度を向上させる効果は,粉炭部のSVに依存すると考えられる。そのため,粉炭部の膨張性が低い場合(Fig.3のD2)は,高い場合(Fig.3のD1)よりもコークス強度を向上させる効果が大きいと考えられる。これは,膨張性が十分高い場合に,膨張性が増加することによってコークス強度が向上する効果が飽和するため17)である。

Test1では,成型炭原料のSVは2.62であり,粉炭のSV=1.88と比較して極めて高い。この条件では,成型炭の膨張による圧密効果(Fig.3のC1)とピッチの分散効果(Fig.3のD2)の両効果の加算により,成型炭のサイズが10 mmの条件でDI1506が極大になったと考えられる。成型炭のサイズによりDI1506-15はあまり変わらず,その結果として成型炭のサイズが10 mmの場合にDI15015が極大になったと考えられる。

Test2では,粉炭のSVが2.24であり,成型原料のSV=1.94と比較して高い。この条件では,ピッチの分散効果(Fig.3のD1)が小さく,成型炭の膨張による圧密効果(Fig.3のC1)の影響が支配的となり,成型炭のサイズが増加するのにともなってDI1506は単調増加していると考えられる。成型炭のサイズによってDI1506-15は大きく変化せず,その結果として成型炭サイズの増加にともなってDI15015が単調増加したと考えられる。

Test3およびTest4は,粉炭および成型炭原料のSVがTest1およびTest2と比較して小さく,成型炭のサイズがコークス強度に及ぼす影響は成型炭の膨張による圧密効果(Fig.3のC2)とピッチの分散効果(Fig.3のD2)の加算になると考えられる。成型炭のサイズが大きい場合では,成型炭膨張による圧密効果とピッチ分散効果はともに小さいために,成型炭のサイズによってDI1506は変化しないと考えられる。しかしながら,いずれにおいても成型炭のサイズが10 mmの場合でDI1506-15は極大値を示している。この現象は,サイズが10 mmのポリエチレン(PE)配合時にDI1506-15が極大値を示した結果と類似である24)。Test3およびTest4は粉炭および成型炭原料のSV(膨張性)が小さいため,Fig.3に示すように成型炭と周囲の粉炭部との接着が不十分であり,成形物を混合したときに,成形物と同等のサイズの亀裂が生成し,衝撃を受けることによって破壊されやすくなり,体積破壊に相当する6-15 mmの粉が増加したと考えられる。成型炭のサイズによってDI1506は大きく変化せず,成型炭のサイズが10 mmの場合にDI1506-15が極大値を示すため,その結果として成型炭のサイズが10 mmの場合にDI15015が極小値を示した。特に低膨張率の石炭を用いる場合,成型炭のサイズによっては体積破壊の増加を招く可能性があることに注意する必要がある。

本検討では,粉炭と成型炭の混合物を同じ装入嵩密度で試験コークス炉により乾留しているが,装入口からトップチャージを行う実機コークス炉では,粒度分布が装入嵩密度に及ぼす影響について考慮する必要がある。

Montianoら16)の研究では,23 gと4-6 gの成型炭(成型炭見かけ密度1.149-0.873 g/cm3と仮定すると体積はそれぞれ20.0-26.3 cm3と4.4-5.7 cm3,球相当径に換算すると33.7-36.9 mmと20.3-22.2 mm)を用いている。成型炭の配合比率が15 mass%の条件において,小さい成型炭を用いたほうが大きい成型炭を用いた場合よりもDI15015は大きく,Test1はMontianoらの結果と傾向が一致するが,Test2-4は異なっている。これは,彼らの用いた成型炭は非粘結炭あるいは非粘結炭とバイオマスの混合物であり,ほとんど粘結性がないためであると考えられ,成型炭のサイズが増加することによって生じる圧密によるコークス強度を向上させる効果(Fig.3のC2)が全く得られなかったためであると推定される。彼らの実験系では,成型炭のサイズを小さくすることでピッチ分散性が向上する効果(Fig.3のD1やD2)により,小さい成型炭を用いたほうが大きい成型炭を用いた場合よりもDI15015は大きくなっていると考えられ,本実験結果と矛盾せずに説明することができる。

3・2 成型炭のサイズがコークス粒度,CRIおよびCSRに及ぼす影響

成型炭サイズと平均コークス粒度の関係をFig.4に示す。ここで,平均コークス粒度は,ドラム試験30回転後の+25 mm試料の平均粒度である。コークス内の亀裂はコークス粒度を支配する因子の一つであり,亀裂が増えるほどコークス粒度は低下する。いずれの条件においても,成型炭サイズが大きくなるとコークス粒度が低下することがわかる。粒径が大きい成型炭の場合,密度が高い成型炭由来コークス部分には亀裂が入りやすく,これはコークス粒度が低下する原因の一つとして考えられるが,今後,亀裂の発生状況の調査も含めて詳細な検討が必要である。

Fig. 4.

Relationship between briquette size and mean size of coke.

成型炭サイズとCRIおよびCSRの関係をFig.56に示す。Test4を除き,成型炭のサイズが変化してもCRIに大きな変化はないことがわかる。一方,Test4で最も成型炭のサイズが小さい条件においてCRIは低下している。ピッチを添加することによりCRIが低下することは知られており25),小さい成型炭を添加することで装入物全体(粉炭と成型炭の混合物)にピッチがより均一に分散し,CRIを全体的に低下させたと考えられる。Test4のみにおいてこの効果が発現したのは,分散させる前のCRIが25以上と他の条件でのCRI(15-22)に比べて高く,バインダーによるCRIを低減させる効果が発現しやすかったためであると考えられる。

Fig. 5.

Relationship between briquette size and CRI.

Fig. 6.

Relationship between briquette size and CSR.

木や木炭などのバイオマスを添加した場合,コークス基質と表面での灰分(特にCa)の分散状況がコークスのCO2反応性に影響を及ぼすことが報告されている2629)。細粒の木炭を配合すると粗粒木炭配合に比べてCRIが増加する。これは,触媒作用をもつCaが微細に分散したためとされている。粗粒の木炭を配合した場合,Caは特定の領域に濃縮して集中してしまい,触媒効果は小さくなる。この現象と同様に,細粒の成型炭を用いるとピッチが微細に分散すると考えられる。

成型炭サイズとCSRの関係は,Test4を除き,おおむね成型炭サイズが大きくなるとCSRは向上する傾向にある。CSRはDIとCRIの組み合わせで決まるが,成型炭サイズとDI15015の関係でみられたような,極大,極小,単調増加のように明確に分けることができない。Test4では0.6-2 mm成型炭のCSRが他のサイズに比べて高いのは,CRIが低いことに対応している。

Montianoら16)の研究では,小さい成型炭を用いた場合のほうが大きい成型炭の場合よりもCRIが高く,CSRは低い。彼らの実験系では,成型炭サイズを小さくすることによってピッチの分散性を向上させる効果(CRI低減・CSR向上効果)より,CRI向上およびCSR低減への寄与が大きい非粘結炭とバイオマスを分散させる効果のほうが大きいと考えられる。

Test4において,成型炭のサイズが最小の条件でCRIが最小かつCSRが最大となる理由は,先述したように明確ではない。CRIおよびCSR試験で用いる試料サイズは約20 mmで,ピッチを多く配合した小さい成型炭に由来する低CRIコークスが,この試料サイズのコークス中に多く含まれている可能性もある。CRIおよびCSR試験に用いる試料コークスの組織の検討は,今後の課題である。

3・3 成型炭サイズが装入嵩密度に及ぼす影響

成型炭のサイズと嵩密度の関係をFig.7に示す。図に示すように,成型炭サイズが大きくなるほど嵩密度は向上する。大きい球形粒子と小さい球形粒子の二成分を混合した場合,大きい球形粒子のサイズと小さい球形粒子のサイズの比が大きいほど空隙率は低下することが報告されている30)。粉炭のサイズは約1-2 mmであり,成型炭と粉炭の混合物は大粒子と小粒子の二成分系とみなすことができる。これにより,成型炭サイズが大きいほど空隙率は低下(=装入嵩密度が増加)する理由が説明できる。成型炭サイズが嵩密度に及ぼす影響は大きく,サイズを0.6-2 mmから50 mmにすることで装入嵩密度は110 kg/m3も増加する。装入嵩密度の増加は,コークス強度の向上と生産性の向上には寄与するが,同時に膨張圧が増加することによる押出し性の悪化とそれに伴う操業不安定化,ひいてはコークス炉の炉壁損傷の可能性につながるリスクが高まる可能性もある17)。さらに,成型炭のサイズの増加により,コークス炉炭化室内における成型炭の偏析が助長され5),炭化室内の充填物が不均一化し,コークス品質ばらつき増大や押出し性悪化を招くリスクもある。そのため,成形物のサイズの適切な選択は,コークス品質およびコークス炉操業の視点から,極めて重要な課題であるといえる。

Fig. 7.

Relationship between briquette size and coal charge bulk density.

4. 結言

高炉用コークス製造用に用いられる一般的な原料炭(強粘結炭,非微粘結炭)から構成される成型炭を対象とし,コークス品質と装入嵩密度に及ぼす成型炭サイズの影響について検討し,以下の結論を得た。成型炭のサイズはコークス冷間強度DI15015に大きな影響を及ぼし,その影響は,(1)成型炭のサイズが10 mmの条件でDI15015が極大を示す場合,(2)成型炭のサイズが増加するとDI15015が単調増加する場合,(3)成型炭のサイズが10 mmの条件でDI15015が極小を示す場合の3つに分類される。膨張率が低い石炭を配合した(非微粘結炭の配合比が高い)成型炭を用いた場合,サイズが6-15 mmの成型炭を配合することによりコークス体積破壊粉率(DI1506-15)が増加し,DI15015は低下する。また,成型炭のサイズが大きくなると,平均コークス粒度が低下し,装入嵩密度は増加する。成型炭のサイズの選択は,コークス品質,生産性およびコークス炉操業の視点から極めて重要な課題であるといえる。

文献
 
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