Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
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ISSN-L : 0021-1575
Instrumentation, Control and System Engineering
Recent Progress of Instrumentation Technology for Process Automation in Steel Industry
Yoshito Isei
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2020 Volume 106 Issue 9 Pages 591-601

Details
Abstract

The instrumentation technology for process automation in the steel industry has been evolving with the demands of the times, adapting to its production process and its harsh environment as the latest measurement techniques applied by considering the physical measurement principles. Today, the instrumentation technology has become one of the essential technologies to maintain the competitiveness in the steel industry. In this review, the recent development trends and future prospects are described based on lectures and papers on process instrumentation technology published by the Iron and Steel Institute of Japan (ISIJ) in the last decade. The main challenges in recent steel processes were reducing greenhouse gas emissions, supplying high-quality products represented by high-strength steel sheets, and keeping stable operation without skilled workers. To meet these challenges, new measurement techniques that had been advanced in recent years, such as radio waves sensing, image processing, optical fiber sensors, and multivariate analysis, had been applied. The newly obtained process information contributes to further sophisticated processes automation, and is applied to Artificial Intelligence (AI) and Cyber-Physical Systems (CPS). In the next decade, it is hoped that the instrumentation technology will continue to make progress toward the establishment of a sustainable steel industry.

1. 緒言

鉄鋼プロセスは,1500°Cを超える溶鋼,1000°Cに近い状態で加工されつつ高速移動する鋼材といった特殊な状態の高温金属を対象としている。そのため,高温であり,鋼材加工に伴う振動や大量の冷却水,大量の粉塵が存在する苛酷な環境である。大型設備を用いた大量生産を前提としたプロセスであり,高速かつ安定した生産が強く要求される。くわえて,高精度な成分調整,金属組織作りこみ,高度な寸法・形状制御を行い,高品質化の要求に応えることも重要である。このようなプロセスを対象とした計測器は,素材には非接触でありながら高応答な測定を実現し,くわえて,この過酷な環境において,耐久性と長期間にわたる測定の安定性が要求される。新しい計測技術の発明により従来把握できていなかったプロセス情報を得ることができれば,起こっている現象の解明や新しい制御の考案につながり,生産性向上や高度な製品の作りこみに寄与できる。鉄鋼プロセスにおける計測技術は,物理的な計測の原理にもとづき最新の技術を適用しながら,鉄鋼特有の製造プロセスとその環境に順応し,時代の要求とともに進歩してきた。そのため,計測技術は現在の日本の鉄鋼業において競争力を維持し続けるうえで欠かせない要素技術となっている。

2010年以降の10年間は,中国がけん引してきた世界の粗鋼生産量の増加傾向が飽和に転じ,原料価格の高騰が起こった期間にあたる。環境問題の面からは,2005年の京都議定書発効,2015年のパリ協定を経て,より一層の温室効果ガスの排出削減が求められている。日本の鉄鋼業においては,団塊の世代を代表する熟練作業者の大量引退により,作業者の急速な若返りが進み,生産の自動化と設備の安定稼働が大きな課題となった。このような時代の要求に対して,鉄鋼プロセスの何を解決しようとして,計測器開発がなされ,どのような新しい技術が計測に適用されたかを整理することは有意義なことと考えた。

本レビューでは,最近10年間において,日本鉄鋼協会の講演大会で発表された講演,鉄と鋼,ISIJ Internationalに掲載された論文から,鉄鋼プロセスを対象とした計測技術に関する報告を抽出して,最近の計測関連論文の動向,プロセス毎の開発状況,近年の計測技術のトピックス,今後の展望を解説する。

2. 最近の計測関連論文の動向

Fig.1に,鉄と鋼に最初の温度計測の論文が掲載された1937年から2019年までに,鉄と鋼,ISIJ Internationalに掲載された計測技術に関する研究論文の件数を10年ごとに集計した結果を示す。鉄と鋼の論文数が1980年代に急激に件数が増加している理由は,鉄と鋼100周年時のレビュー1)によると,各地に新製鉄所が誕生し,軌道に乗った高度成長期の終盤,日本の鉄鋼が世界最高レベルに達した頃の勢いと推察されている。以降,鉄と鋼における論文の掲載件数は,現在まで各10年あたり十数件で推移している。これは1980年代において,その当時の技術力で実現可能かつ自動化の効果が大きい計測・制御の開発と導入がほぼ完了し,過酷な環境であるために計測が難しく,人の五感や経験に頼らざるを得ない案件が残ったことが理由のひとつと考えられる。ところで,ISIJ Internationalにおける計測関連の論文の掲載件数は直近10年間に急激に増加している。Fig.2に最近10年間に掲載された計測関連論文の技術分類と,筆頭著者の所属する機関の所在国と分類についての割合を示している。技術分類としては,本レビューの対象とするプロセス計測が約半数を占めており,積極的にプロセス改善に向けた計測技術の開発が進められている様子がうかがえる。現在,約6割が海外からの投稿による論文であり,2000年代に粗鋼生産量が急速に増加した中国からの投稿が多い。鉄鋼メーカ主体の日本とは対照的に,これら海外からの投稿のほとんどは大学等の研究機関によるものであった。中国において,鉄鋼業を急速に進展させるために産学連携した技術開発が進められている様子がうかがわれる。世界に目をむければ,現在の鉄鋼プロセス計測の研究開発は1990年代以降で最も活発に行われている状況にある。

Fig. 1.

Trend in number of papers on instrumentation in Journals published by ISIJ.

Fig. 2.

Percentage of the papers on instrumentation published in the last decade.

3. プロセス毎の開発状況

3・1 製銑プロセス

製銑プロセスは,原料である鉄鉱石と石炭等から溶銑を作り出すプロセスであり,常に安定生産が最重要視されている。これにくわえ,近年は高い生産性の確保と同時に,資源劣質化への対応と温室効果ガスの排出抑制が強く要求されている。高炉操業においては,高出銑比,低還元材比操業の中で高微粉炭比,低コークス比化が志向されており,高炉内での通気性確保と反応効率向上の両立は重要な課題となっている。近年,これら課題に対応するため,装入物分布の制御精度を向上させるための計測技術,高炉の安定操業を支援するための計測技術の開発が積極的に行われた。Fig.3に高炉において近年開発された計測技術とその目的を示している。

Fig. 3.

Recent developed sensors for blast furnace.

装入物分布の制御は,高炉半径方向の原料の堆積状況を制御することであり,その手段として,層状装入されるコークスと鉱石の層厚制御に加えて,炉内半径方向の粒度分布や鉱石層内に小塊コークスを混合する混合装入が行われている。層厚制御の高精度化のために,従来技術であるマイクロ波レベル計の機械的走査による装入物表面の断面プロフィール測定に代わり,複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)レーダ技術を適用し,電気的な走査による炉内装入物最表面の3次元プロフィール測定技術24)が開発された。くわえて,マイクロ波の減衰率を測定することで,炉内を通過する空気の流速を測定できる可能性5)も示されている。一方,炉内半径方向の粒度分布や混合装入の高精度化のためには,原料のコンベア切り出しからホッパー等の装入経路での原料の偏析状況の把握が必要であり,原料粒子を模擬したRFID(Radio Frequency IDentification)タグをトレーサとして利用する装入原料のトラッキング技術6,7)が開発され,実機高炉において原料トラッキング結果と炉頂バンカー排出シミュレーションとの比較8)が行われた。いずれも電波を用いた計測技術であり,粉塵の多い原料運搬工程や炉内環境下での使用に適している。

高炉の安定操業を支援するために,従来から,高炉に取り付けられた数多くの熱電対や圧力計などの外周部の計測情報,羽口内部のレースウエイ生成や微粉炭反応の状況,高炉下部の出銑口から流出する溶銑の温度や重量の情報は,高炉内部の高温反応場や湯溜り部分の状況を知る情報として注意深く監視されてきた。近年は,これらの情報を,より正確に,かつ迅速に,連続的に把握するための計測技術の開発が進められてきた。羽口内部の状況把握の場合,高炉オペレータが,一つの高炉に40本程度ある羽口内部のカメラ画像を監視して操業に活用するには無理があった。このため,羽口内部のカメラ画像を画像処理して特徴的なパラメータを抽出することで,時間的変化や炉周方向の空間的変化を定量化する開発913)が行われた。羽口における計測技術としては,2次元カメラの画像から2色温度演算を行いカメラ内部の温度分布を測定する方法14),羽口管をアンテナとして用いたマイクロ波距離計によりレースウエイの深さを測定する方法15)も報告されている。出銑口から流出する出銑流に対しても,画像処理により輝度のヒストグラムを解析することで溶銑とスラグの部分を分離して認識し,溶銑流の温度,スラグ混合度,流速をリアルタイムで計測する技術1618)が開発された。また,従来の高炉炉底の起電力EMF(Electromotive Force)測定に代わり,疑似ランダム信号を印加した4端子法により,溶銑レベル付近のレンガの抵抗値を高精度に測定することで炉底部の溶銑レベルを推定19)できる可能性が報告された。

原料に対しては,LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)による成分分析20),形状測定による特性把握の試み21)が進められている。高炉内部状況の安定した直接測定の実現にはまだブレークスルーが必要と考えられるが,得られた情報を用いて高精度な高炉内反応シミュレーションで内部状況を推定することも夢ではない。

3・2 製鋼プロセス

製鋼プロセスは,高炉で出銑された溶銑に対し,炭素,脱リン処理を行い精錬した後に,連続鋳造機にてスラブ,ビレット等の鉄鋼製品の中間素材を製造するプロセスである。溶鋼成分の精度,内部品質は,鉄鋼製品の品質に大きな影響を及ぼす。

精錬プロセスにおいて,脱リン処理時のスロッピング防止による生産性改善のために,トラニオンピン付近で振動を測定し,その信号をFFT(Fast Fourier Transform)解析した周波数スペクトルは,従来のランス部での振動測定に比べ,炉内のスラグレベルとの良好な相関が得られること22)が報告された。

連続鋳造プロセスにおいて,生産性と内部品質の両立が重要となっている。近年,鋳造速度の高速化にともない,浸漬ノズルからの溶鋼吐出流の影響による凝固シェルの再溶解や凝固遅れに起因したブレークアウトや短辺バルジングの発生が操業上の課題の一つにあげられている。鋳片品質を維持しつつ,ブレークアウトなど鋳造トラブルを防止し生産性を向上させるためには,湯面レベル,凝固シェルの状況をモニタリングすることが効果的である。モールド湯面レベル変動に関して,中心偏析改善の重要因子である連続鋳造機ロール間でのバルジング挙動が着目された。セグメント内に設置された水柱式の超音波センサにより鋳造中のバルジング量の直接測定がなされ,測定されたバルジング量と湯面レベルセンサによる鋳型内の湯面変動量に相関があること23,24)が確認された。また,モールド内の溶鋼の状況を測定する方法として,モールド銅板内に多点の温度計を設置して温度分布の測定が試みられた。複数の熱電対設置によりモールド銅板縦方向の局所熱流束値を測定することで,凝固シェル厚推定の可能性25)が示された。近年実用化されたFBG(Fiber Bragg Grating)温度計は,電磁場の影響を受けない,多くの温度測定点を有した光ファイバである。複数のFBG温度計をモールド銅板に埋め込み,モールド銅板の温度分布を高分解能測定することで,左右の流量バランス不均等など異常状態の検知だけでなく,電磁流動制御への適用が期待26)されている。また,マイクロ波レベル計によりモールド内の溶鋼レベルと同時にパウダ厚みを測定する方法27)も検討された。一方,モールドに安定的に溶鋼を供給するために,タンディッシュにおける溶鋼レベル計28,29),溶鋼連続測温30,31)の高精度化,安定測定に向けた研究も報告されている。

3・3 熱間圧延プロセス

熱間圧延プロセスは,製鋼で製造されたスラブを要求された寸法に圧延するプロセスである。近年,温室効果ガス排出抑制の要求のもと,自動車の重量を軽量化することで燃費向上が可能となる薄手,高強度の鋼板の適用比率が増加している。このような薄手,高強度鋼板を熱間圧延する際に,圧延荷重の増加に伴い圧延ロールの変形が大きくなり,蛇行や曲がりによる通板トラブルが増加するため,通板安定性の向上が大きな課題となった。また,要求された機械的特性を作り込むためには,設計された温度履歴に従い鋼板を冷却する必要があり,冷却時温度精度の向上も課題となった。Fig.4に近年熱間圧延プロセスにおいて開発された計測技術とその目的を示している。

Fig. 4.

Recent developed sensors for hot strip mill.

通板安定性を向上させるために,圧延される鋼材の挙動をリアルタイムで計測し,圧延機へFB(Feed-Back)制御することでトラブルを未然に防止する技術開発が進められた。薄板熱間圧延の仕上圧延機においては,圧延スタンド間の鋼板尾端部で発生する急激な蛇行を測定し圧延機のレベリングをリアルタイムに制御する方法32,33)が開発された。さらなる制御性向上を目的に,尾端に到達する前の定常部においてスタンド間の幅方向張力分布を測定することで,尾端蛇行の要因となるレベリング不良を検出する分割ルーパ方式形状計34)が開発された。また,粗圧延機においては,光学式のキャンバ計が開発35)され,キャンバ発生の原因解明と制御方法も検討36,37)されている。

要求の機械特性を確保するためには,ランアウトテーブルで熱間圧延後の鋼板を冷却する際に,指定した温度履歴に従い鋼板温度を制御する冷却温度履歴制御と,幅方向および圧延方向の冷却温度むらを抑制する均一冷却が必要である。冷却温度履歴制御の高精度化を目的として,冷却帯内の水環境下でリアルタイムに鋼板温度を測定可能な水パージ方式のファウンテン・パイロメータが開発38,39)され,冷却帯内部の測温結果にもとづき,残りの冷却帯の水量を操作するFF(Feed-Forward)制御40)により温度履歴精度を向上させた。一方,冷却温度むらの抑制には,大きな要因の一つである冷却前の平坦形状を改善することが効果的である。そのため,薄手材において板波が静止したように観察される板波定在時にも精度悪化がなく,安定測定が可能なLED(Light Emitting Diode)ドットパターン投影方式平坦度計が開発41,42)された。平坦度測定値を圧延機のベンダとレベリングの操作に適用する自動平坦度制御AFC(Automatic Flatness Control)により鋼板をフラットに制御し,形状不良起因の冷却温度むら抑制に効果を発揮している。

これらの計測・制御技術は,熟練作業者の目視と経験による手介入に依存していた作業を自動化した。近年,団塊の世代を中心とする熟練作業者の引退より作業者が急速に若返りつつある日本の鉄鋼業において,安定生産を維持しつつ高品質製品を製造するうえで効果を発揮している。今後も自動車の軽量化による低燃費化を目的とした薄手化と高強度鋼板の要求は続くため,さらなる生産安定化のための計測器開発,材質作り込み精度を向上させるための計測器開発は継続すると予想される。

3・4 酸洗,表面処理プロセス

酸洗プロセスは,熱間圧延された鋼板表面の酸化スケールを取り除くプロセスである。近年は,ライン速度向上による生産性向上,製造安定化による歩留まり向上を目的とした計測器開発が行われた。酸洗プロセスではライン速度が変化時しても一定の酸濃度を保持する必要があるが,従来はサンプリングによる濃度分析のため遅れが生じていた。このため,近赤外分光により酸洗液中の吸収スペクトルを直接測定するオンラインで使用可能な高応答な酸濃度計が開発43)された。ディープ槽式酸洗において,酸洗不良によるスケール残りや槽底との接触による表面疵が発生しないように槽内の一定高さに鋼板を通過させる必要がある。この対策として,酸洗槽入側の鋼板傾きを画像処理により測定することで,酸洗槽内のカテナリ形状に弛んだ鋼板の最下点高さを測定するカテナリ高さ計が開発44)された。ステンレス焼鈍酸洗ラインにおいて,放射光の分光スペクトルを主成分分析することで表面酸化膜による放射率変化に対応可能な分光主成分放射温度計が開発45,46)された。

自動車に用いられる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は溶融した亜鉛を塗布して熱処理によりFe-Znの合金化層を形成することで製造される。従来,この合金化度を測定する際にはX線回折で測定されるFe-Znピーク強度が用いられていたが,Siを含有した高強度鋼板においてはFe-Zn化合物の比率が異なるため,測定精度が悪化する。合金化度に比例してFe-Zn層の格子定数が変化することに着目し,1次元検出器を用いたX線回折ピーク角度測定方法が開発47)され,高強度鋼板においても高精度で合金化度を測定することが可能となった。

4. 最近の計測技術のトピックス

4・1 電波を用いた計測技術

4・1・1 RFIDを用いた高炉原料トラッキング技術

近年,RFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれる電波を用いた非接触の認証技術が開発され,広く一般に使用されている。タグとリーダとの間の無線通信技術であり,IDコードを付与したタグを様々な物や人に取り付け,リーダによりID検出することでそれらの位置や動きをリアルタイムで把握することが可能となる。実世界の物や人の動きを,デジタルの仮想世界と結びつけて認識できる点が,社会的にも様々な波及効果を与えている。

Fig.5にRFIDを用いた原料トラッキングの構成図6)を示している。原料を模擬したアクティブ方式のRFIDタグを装入原料に混合して,装入経路の途中および炉内装入直前でそのIDコードを読み出すことで,搬送経路での偏析挙動を把握し,コンベア上への原料排出順を制御するための情報を得ることができる。使用されるRFIDタグは原料と共に搬送とされて衝撃を受けるため,故障しないように耐久性を考慮したケースに収納された。このケースの大きさ,重さを調整することで実際の原料を模擬している。密度偏析が生じやすい鉱石層内への小塊コークス混合を対象として実高炉での性能評価試験が行われた。高炉内に装入される直前に検出アンテナを配置して検出することで,遅れなく正確に通過タイミングを検出できること,原料サンプリングとの相関が良好であること,実操業中おいても83%以上の検出率を確保できることが確認された。炉頂バンカー排出シミュレーションとの比較の結果も良好であること8)が確認された。

Fig. 5.

Burden material tracking by using RFID for direct charge type6).

RFIDタグには温度,加速度,振動などのセンサを内蔵したものも開発され,くわえて位置検出の可能性も示されている。このような新しいRFIDタグを用いることで,例えば,これまで把握できなかった原料処理過程での情報を得られる可能性がある。

4・1・2 MIMOレーダを用いた高炉内装入物プロフィール測定

炉内装入物のプロフィール計測についても進展があった。従来装入物のレベル測定には,粉塵の多い高炉内での測定のためFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のマイクロ波レベル計48)が用いられてきた。この方式で装入物のプロフィールを測定するためには,アンテナを機械的に走査する必要があるが,走査に時間を要するため,装入バッチごとの測定は困難であるし,一直線上のプロフィール測定に限定されていた。近年,複数の送受信アンテナを用いることで,機械的な走査なしに,高速に3次元形状を測定できるMIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダ技術の適用が検討3,4)された。装入バッチ毎の高速な3次元プロフィール測定は,原料層厚分布の把握も可能とする。MIMOレーダとは,複数の受信アンテナで受信された信号間の位相を解析することで,対象物までの距離にくわえて,角度を高精度に測定することが可能である。Fig.6にT字状MIMOレーダのアンテナ配列,Fig.7に高炉での測定結果例を示す。本事例では,32個のアンテナを送信と受信に分けてT字状に配置することで256個分のアンテナを配置したMIMOレーダと等価な分解能を得られること,近接場イメージング手法を組み合わせることで高速に3次元形状を測定可能なことが理論的,実験的に確認され,実機試験により高炉内の面内形状を瞬時に測定できることが確認された。実機試験において,エアパージや水冷など環境対策を施すことで,高炉内の高温,高圧の環境下において耐久性を確保し安定した測定が可能なことが確認された。

Fig. 6.

Virtual array of T-shaped MIMO radar with single target on burden surface4).

Fig. 7.

Print screen of radar system software online4).

電波を用いたレーダは霧発生時や雨天時も安定して測定可能なため,自動車の自動運転への適用を目的に,ミリ波MIMOレーダの開発49,50)が進められている。このため,使用する部品の安価化,高精度化が驚くべきスピードで進展している。電波を用いた3次元形状測定は,粉塵や水蒸気下での測定に適用可能であり,鉄鋼プロセスへの適用が今後一層広がると考えられる。

4・2 画像を用いた計測技術

4・2・1 2次元画像を用いた出銑流測定

近年,撮像カメラがデジタル化されて,ダイナミックレンジの向上,高フレームレート化等性能の向上に加えて,画像処理に使用されるパソコンの処理速度向上が進んでいる。高速化に関してはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いた画像処理51)も開発されており,1秒間に1000回を超える計測処理も可能となっている。このため,カメラ画像による温度測定,高速で形状が変化する流動物体の状態計測など,高度な画像処理を実装できるようになってきた。出銑口近傍で出銑流の熱放射を可視光カメラにより高速シャッター撮像すると,放射率の差により溶銑とスラグが斑状に分離した熱画像が得られることが見いだされ,この熱画像から温度とスラグ比率を非接触で測定する手法17)が提案された。Fig.8に高炉出銑口における出銑流の熱画像の例,Fig.9に熱画像の輝度ヒストグラムを示す。また,出銑流は5 m/s程度の高速で移動する乱流であるが,例えば200フレーム/sで撮像すると,溶銑とスラグの模様が徐々に変形しながら移動して行く様子が観察できる。このような熱画像を利用して,パターンマッチングによる出銑流の移動速度測定,出銑口の直径測定が可能となった。出銑口は出銑流に浸食されて徐々に広がるが,これまでは流出量の測定しかできず,出銑口径と流速を個別に知る方法はなかった。

Fig. 8.

Example of thermal image of molten iron and slag stream17).

Fig. 9.

Histogram of the thermal image17).

画像計測方式による測温は,単なる熱電対測定の代替でなく,急峻な温度変化を捉える連続測定を可能にしている。くわえて,対象物の領域面積やその比率測定,速度を同時に測定可能なマルチセンサとしての活用も可能である。近年は,深層学習を用いた画像認識技術も進歩しており,画像を用いた計測は,従来人間でしか判断できなかったあいまいな画像の認識52)にも適用の範囲を広げている。

4・2・2 LEDドットパターン投影法による熱間平坦度計

従来高温物体の形状を測定する際には高温の放射光に負けない強い光を用いる必要があり,単色性,直進性,集光性に優れた高出力レーザが用いられてきた。青色LEDの発明をきっかけに,照明への適用のためにLED光源のパワー密度が向上してきた。近年,照明分野での省エネ推進の手段として,LED光源の高出力化と高効率化が急速に進み,投入電力1Wあたりの発光強度が100 lmを越えるパワーLEDチップが登場してきた。この様なパワーLEDチップを2次元に配列することで周期的なパターンを構成し,これを鋼板表面に結像投影するLEDドットパターン投影方式平坦度計41)が開発された。Fig.10にLEDドットパターン投影方式平坦度計の装置構成を示す。LEDプロジェクタにより2次元の格子状パターンを鋼板表面の広い範囲へ投影し,異なる方向から2次元カメラにて鋼板表面に投影された格子パターンを撮像すると,パターンピッチは表面角度に応じて変化する。このため,画像中のパターン投影範囲内のパターンピッチ分布を測定して,鋼板表面の角度分布を導出し,この角度分布を圧延方向に所定区間の線積分を行うことで,鋼板の表面長さを計算し,伸び率を求めることができる。この平坦度計は,瞬間的に一定範囲の形状を測定して伸び率を計算するため定在波発生時の精度劣化を抑制でき,また,高輝度なLEDドットパターン投影のため,測定成功率98.5%以上の安定した平坦度測定,光源の長寿命を実現している。本方式の平坦度計は厚板の仕上圧延機出側向けにも展開42)されている。側面から撮影したカメラ映像からの板波形状と比較することにより,LEDドットパターン投影方式平坦度計の測定精度評価がなされ,熱間の形状計として十分な精度を有することが確認されている。LEDはレーザ光のように人の目に障害を与える恐れは低く,安全に使用できるのは良点である。今後さらに光学計測への適用が進むと考えられる。

Fig. 10.

Configuration of shapemeter employing the LED dot pattern projection method41).

4・3 光ファイバを用いた計測技術

光ファイバ式の温度計は,最大数kmの長距離にわたる温度分布を1 m程度の分解能で測定可能なラマン散乱方式温度計が設備監視53)に使用されてきたが,光ファイバの長手方向に複数の温度測定点をもつ空間分解能の高いFBG(Fiber Bragg Grating)温度計が開発されて連続鋳造機のモールド銅板の温度分布測定26)に適用された。

FBG温度計とは,光ファイバの特定の位置に紫外線レーザ光を照射し屈折率の周期構造FBGを加工した温度計である。光ファイバの熱膨張によるFBGの周期変化を,入射した白色光の反射光の波長から測定し,FBG部の温度を算出する。光ファイバ1本あたりに複数の温度測定点を作ることが可能なこと,細い光ファイバであるため応答性が良好であること,光による温度測定であるため電磁場の影響を受けないことが特徴である。モールド温度分布センサとして,5 mmピッチ70箇所の温度測定点FBGを有したFBG光ファイバ38本をモールド銅板内に埋め込むことで,モールド銅板の上送受信部30 mmから375 mmまでの広い範囲にわたり,総計2660箇所の銅板内部の温度を2 Hzの応答速度で測定可能となった報告がある。実機連続鋳造装置での評価試験において,湯面形状の非対称性をリアルタイムで検出可能なことが確認されており,電磁力による溶鋼流動や鋳造速度の制御へ適用できる可能性がある。

現在では,1000°C以上まで測定可能な再生FBGを用いた温度計,FBGを材料内を伝わる超音波の検出54)に使用するなど,適用範囲の拡大にむけた研究開発が進められており,モールド銅板の温度分布に限らず,新たな適用先が広がる可能性がある。また,長距離での温度分布測定型のセンサとして,従来のラマン散乱方式に比べ,距離分解能が数cmと高く,温度とひずみを独立して測定可能なブリリアン散乱方式の光ファイバセンサも実用化55)されている。設備監視,プロセス計測において光ファイバセンシングの技術開発と鉄鋼プロセスへの適用が今後一層進むと思われる。

4・4 放射測温の新しい展開

4・4・1 ファウンテン・パイロメータ

熱延工場におけるランアウトテーブルでの冷却過程の温度履歴制御には,冷却帯内での温度測定が有効である。冷却帯内において,鋼板上面には水乗り,鋼板下面の空間には大量の水滴状の冷却水が存在しており,この状況は冷却条件によって刻々と変化する。従来の放射温度計では,測定対象との間に水蒸気や水滴が存在すると,熱放射光が吸収され生じる吸収誤差や,散乱されて生じる散乱誤差を生じ,測定が困難である。また,強力なエアパージでこれら水滴を光路から取り除く方法も考えられるが,強力なエアパージが周囲の冷却状況に影響するなど,測定値の代表性を失う可能性がでてくる。Fig.11に冷却帯内鋼板温度計ファウンテン・パイロメータFP(Fountain Pyrometer)の構成を示す。この温度計は独自の噴水状水パージを用いることで,熱放射検出のための光路を安定化して,水による散乱誤差と吸収誤差の抑制等を図っている。

Fig. 11.

Configuration of Fountain pyrometer38).

従来,超音波方式の熱間距離計において,測定対象表面までの空間に水柱を形成し,その水柱を測定路として利用する試み23)があったが,温度計測の場合は表面温度の低下を招き測定精度が悪化する。そこで,鋼板からの放射光を集めることができれば,視野が広がっても温度測定値に影響しないことに着目し,噴水状の水パージを通して放射光を測定することで,材料を冷やさず,かつ,水滴の影響を受けないロバストな温度計38,39)が開発された。検出波長は水の透過波長域を積極的に利用しており,透過率の高い0.83 μmより短い波長帯の熱放射を検出するFP1と,1.1 μm近傍の熱放射を検出するFP2の2種類が開発された。それぞれの測定範囲は,500~1200°C,360~800°Cであり,測定対象の温度レンジに対応して,冷却帯の温度帯域により使い分けがなされている。

このような悪環境下で使用される計測器において,オンラインでの測定安定性や測定精度の評価は,開発された計測器の実用可否を判断するための重要な開発項目である。Fig.12に示すように2台のNo.1-FP2,No.2-FP2と巻取り温度計CT(Coiling Temperature)を用いて冷却帯内での測定精度評価が行われた。まずは,非冷却の状態で測定精度が確認されている2台のNo.1-FP2とNo.2-FP2間の温度低下により,空冷時の伝熱係数が求められた。次に,No.2-FP2の設置バンクの下面のみを水冷条件とすると巻取り温度が低下するが,その温度低下分を補うような水冷バンクの伝達係数を求めることで,No.2-FP2部の温度が高精度に計算できる。この計算温度との比較により,水冷条件下におけるNo.2-FP2の測定精度が良好であることが確認された。悪環境下における計測開発においては,今回の水パージによる光路確保技術のような周辺技術の開発,オンラインでの評価方法の確立も必要不可欠であり,鉄鋼プロセスにおける計測特有の環境対策技術,または,ノウハウとして今後も蓄積していくべきと考える。

Fig. 12.

Online accuracy evaluation of the fountain pyrometer38).

4・4・2 分光主成分放射温度計

連続焼鈍炉内の板温計測は,鋼板表面の酸化膜発生により放射率が変動すると測定誤差になる問題点があった。この放射率変動は酸化膜内の光干渉が原因であり,酸化膜厚により放射率の波長依存関係が変化するため,複数の波長の放射率の関係を用いた多波長温度計56)は使用できない。そのため,板がロールに巻き付いている部分での多重反射を利用し,見かけ上の放射率を向上して影響を抑制する多重反射温度計57),もしくは,複数の補助光源を用いてオンラインで反射率を測定しキルヒホッフの法則により放射率を求める広光束温度計58)が用いられてきた。

その課題に対し,測定対象からの分光放射を測定し,得られた分光スペクトル,すなわち,複数波長での放射強度と真温度の組み合わせに対し,主成分分析PCA(Principal Component Analysis)を適用する分光主成分放射温度計45)が提案され,鉄鋼プロセスへの適用例が報告された。Fig.13に分光主成分放射温度計の測定原理を示している。本温度計は,あらかじめ主成分分析などで評価しておいた放射率スペクトルの変動と直交するなど,多変量解析により放射率変動の影響を受けにくい基底スペクトルをあらかじめ求めておき,測定対象を測定したときの放射スペクトルに含まれるその基底スペクトルの大きさから,あらかじめ定めた検量線を用いて温度を算出する。このような手法で温度を算出することにより,放射率変動の影響を受けにくい放射測温が実現できる。ステンレスの焼鈍酸洗ラインにおいて,分光主成分温度計が,従来単色温度計よりも最大誤差,ばらつきともに小さいことが確認された。くわえて,物理的な酸化膜内での干渉現象により生じる放射率変動を試算し,本方式を適用できる膜厚範囲と測定精度についても検討がなされ,比較的薄い酸化膜厚の生成に対して高精度な測定が可能と結論46)づけられた。直接測定が困難な鉄鋼プロセスにおいて,物理的な原理を理解したうえで,多変量解析を適用して測定精度を向上させること,目標とする測定値を得ることは有効な手段となりうる。

Fig. 13.

The schematic concept of Principal Spectral Component Analytic Thermometer46).

5. 今後の展望

5・1 労働人口減少への対策としてのプロセス自動化

近い将来の日本において,少子化による労働者人口の減少が予想されている。今回トピックスとして取り上げた計測技術は,RFID,MIMOレーダ,画像認識などの近年進歩してきた新しい技術を適用することで実現されている。これらの新しい技術は今も発展の途上にあり,今回の適用を足掛かりに適用の範囲を広げると予想される。計測技術の進歩により,従来人の感覚に頼っていたプロセス状態の認識を定量的に計測できれば,制御への適用が可能となり鉄鋼プロセスの省力化を実現することができる。また,高炉の操業にみられるように,モニタ画像など数多くのプロセス情報から異常有無を判断して適切な処置を施すことは,現在のオペレータの重要な任務の一つである。計測技術の向上により,これらのデータを定量的に電子化できれば,操業情報と組み合わせて多変量解析や機械学習を適用可能となり,作業者に頼らずにプロセス状況を判定する人工知能AI(Artificial Intelligence)を実現できる。AIは,作業者による認識と手介入に比べ,迅速かつ連続的にプロセスを監視し,過去の事例に基づき異常を認識し対処できる。これら作業者の手介入に依存していた制御の自動化,プロセス安定化のための自動異常判定は,労働者人口が減少する今後の日本の製造業においてニーズが高まると推定される。

5・2 操業の安定化,品質向上に寄与するサイバーフィジカルシステム

サイバーフィジカルシステムCPS(Cyber Physical System)とは,実世界であるフィジカル空間にある多様なデータをセンサネットワーク等で収集し,計算機上のサイバー空間でシミュレーション等の解析技術により分析を行い,そこで創出した情報によって,生産の活性化や社会問題の解決を図るシステムである。

現在の高炉において,原料の装入状況や羽口からの吹き込み状況等制御入力,それと対になる炉体の温度等の計測状況と出銑流の温度,スラグ混入率等の制御結果の出力を高精度にリアルタイムに把握できる状況となりつつある。一方,近年の計算機の能力向上により,高炉内部の反応状況を現物同等に再現できるシミュレータが実現しつつある。実機高炉において,リアルタイムで制御入力と制御出力の結果を満たすように高炉内部の状況をシミュレーションにより再現できれば,高炉内部の変化が明らかになり,操業の安定化や効率化に効果的と考える。本方法は物理の原理に基づくため,過去の操業実績にとらわれず,経験のない異常事態においても対応が可能である。同様な考え方は,熱間圧延とその冷却過程における材質制御の高精度化にも適用できる。現在,計算機シミュレーションを材料設計に活用するマテリアルズ・インフォマティクスの研究開発が進められている。このシミュレーション技術が進歩すると,実機で得られた圧延条件,温度履歴をもとに材料内部の金属組織の変化過程をリアルタイムに把握することができる。このようなCPSの実現を促進すると考えられる,高炉内部状況の測定技術,熱間オンライン材質測定技術は,部分的な限定された条件下での測定であってもシミュレーション技術で補うことが可能であり,これまで以上にニーズが高まると思われる。計測・制御にかかわる研究者は,製銑プロセスや材料開発等の他分野の研究者と連携し研究開発を進めることが重要になる。

5・3 持続可能な鉄鋼業の確立に向けて

鉄鋼業プロセスにおける今後の開発方針を考えるうえで,持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)を外すことはできない。持続可能な開発目標SDGsとは,2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。鉄鋼業は,大量の温室効果ガスを排出する生産プロセスに依存しているが,生産された鋼材は社会インフラや自動車などに使用される人々の生活に欠かせない素材であり,リサイクル性にも優れている。環境面,社会面,生活面など多くの面において,鉄鋼業がSDGsの達成に果たすべき役割は大きい。温室効果ガスの排出を減らし,持続可能な鉄鋼業へ生まれ変わるという時代の要求に答えるために,2030年までの今後の10年間においても,鉄鋼プロセスにおける計測技術が,最新の技術を適用しつつ進歩し続けることを期待している。

6. 結言

鉄鋼におけるプロセス自動化のための計測技術は,物理的な計測の原理を考慮したうえで最新の技術を適用しながら,鉄鋼業特有の製造プロセスとその環境に順応し,時代の要求とともに進歩してきた。現在の日本の鉄鋼業において,計測技術は競争力を維持し続けるうえで欠かせない要素技術となっている。本レビューでは,最近の10年間において,日本鉄鋼協会で発表されたプロセス計測技術に関する講演,論文をもとに,近年の開発動向と今後の展望を解説した。近年の鉄鋼プロセスにおける課題は,温室効果ガス排出削減,高強度鋼板を代表とする高品質な製品の作り込み,熟練作業者の減少下での安定生産の確保であった。それらの課題に対し,電波を用いた計測,画像処理,光ファイバ計測,多変量解析などの近年進歩してきた新しい計測技術が適用された。新しく得られたプロセス情報は,より一層のプロセス自動化と高度化に寄与しつつ,人工知能,サイバーフィジカルシステムへの適用が試みられている。今後の10年間において,持続可能な鉄鋼業の確立に向けてプロセス計測技術が進歩し続けることを期待している。

文献
 
© 2020 The Iron and Steel Institute of Japan
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