鉄と鋼
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ISSN-L : 0021-1575
特集号:今後の資源・環境問題解決に資する鉄鉱石処理プロセス
焼結機での複合焼成を目指した炭材核ペレットの設計
岩瀬 一洋 樋口 隆英山本 哲也村上 太一
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2021 年 107 巻 6 号 p. 483-493

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Abstract

Current global demand for the carbon emission reduction and the depletion progress of high-grade iron ore deposits require the integrated solution toward sinter and ironmaking process. Several countermeasures have been proposed regarding the development of highly reducible burden materials for the blast furnace and the use of beneficiated fine iron ores in the sintering machine. However, their application to actual sintering and ironmaking equipment have been limited because the sinter productivity is deteriorated. Here the present study investigated co-production of the carbon composite pellet and sinter with existing sintering machines. Even if fired in an oxidizing atmosphere, carbon-core-pellets can be produced under conditions that simulate the conventional sintering process. This is because a protective shell over the carbon core inhibits the carbon from combustion. Importantly, the structure and composition of the pellets are properly designed so that this protective shell does not melt overly or break during firing. The design parameters govern the strength and reducibility of pellets after firing, and those influence is analyzed quantitatively. Overall, a pot test trial in which designed pellets have been blended exhibited the viability of the pellet-sinter co-production.

1. 緒言

製銑工程でのCO2排出量削減の観点から,低スラグで被還元性の高い焼結鉱の製造ニーズが一層高まっている。高炉原料の品質向上および操業改善の結果,長期的に見ると高炉の還元材比は徐々に低減しており1),また更なる省力化を志向する新塊成鉱の開発についても種々の知見が報告されている。例えば,炭材中に触媒効果を示す金属を分散させ,ソリューションロス反応の開始温度を低化させるもの2-15)や,鉱石中に炭材を分散あるいは内包させ還元およびガス化反応を高速化させるもの16-20)である。これらは高炉内の還元効率を制約する熱保存帯温度を低下させ,COガス利用率を上昇させる事から,還元材比のさらなる低減が期待される21,22)。また近年,高品位鉄鉱床の枯渇に伴い焼結鉱のスラグ比や溶銑中リン濃度の上昇が懸念されている。対応策として,脈石や有害元素の少ない精鉱微粉を焼結生産性を低下させずに使用できる技術の開発が求められている。

Yokoyamaらは,鉄分と炭素分を含む製鉄所内ダストをセメントで冷間塊成化した含炭塊成鉱(RCA: Reactive Coke Agglomerate)を実機高炉で使用し,熱保存帯温度の低下および還元材比の低減効果を確認した17)。これに対して,Satoらはセメント養生の期間と用地を必要としないプロセスを指向した。焼結過程で擬似粒子の一部を金属鉄まで還元する部分還元焼結鉱の製造プロセスを考案したが19),高還元率と成品品質の両立が課題であり実用化には至っていない。Otomo and Matsumuraは,無煙炭に精鉱微粉を被覆造粒して焼成した炭材内包型塊成鉱(CIS: Carbon Included Sinter)を提案し,Kamijoらがラボスケールで製造した炭材内包型塊成鉱の被還元性向上と高炉内圧損の低減効果を確認した20)。炭材を内包した塊成鉱を安定的に製造するためには,炭材の内包と焼結鉱性状を両立させる必要があるが,既往の研究では焼成過程での内包炭材の反応挙動や炭材の残留条件,好適な造粒粒子構造や焼成条件などについて明確でない。

そこで本研究では,焼結機での複合焼成を前提とした,高被還元性かつ低スラグ比の炭材核ペレット(以下CCP; Carbon Core Pelletと表記)を製造するための基礎検討を行った。本プロセスでは,既存の焼結機に炭材核グリーンペレットを混合し,通常の焼結原料である擬似粒子の焼結の進行を利用して,ペレットの塊成化を図る23)。そこで,高温かつ酸化雰囲気で炭材核ペレットを焼成した場合に,炭材がペレット内部に残留する条件を調査した。次に,強度と被還元性の観点から,焼結機での製造に適したCCP構造および製造条件を明らかにし,CCPの強度と被還元性を支配する因子について考察した。また,被還元性に影響を及ぼす残留炭材量の推定モデルを構築し,焼結層内のヒートパターンで焼成した場合の残留炭材量を推定した。最後に,炭材核グリーンペレットと通常擬似粒子のラボ複合焼成試験を行ったので報告する。

2. 実験方法

2・1 炭材核グリーンペレットの作製

Table 1に本実験で使用した原料の化学組成と粒度分析の結果を示す。主原料としてブラジル産のヘマタイト精鉱微粉を使用した。生石灰は粒径が150 µm以下のものを使用し,造粒時のバインダーおよび焼成時の融剤として,精鉱微粉に対し0-7.5 mass%の範囲で配合した。粉コークスは3種類の粒度に整粒(4.0-4.8 / 4.8-6.7 / 8.0-9.5 mm)して使用した。

Table 1. Chemical assays and granulometric analyses of raw materials.
Raw
materials
T.Fe
(mass%)
FeO
(mass%)
SiO2
(mass%)
Al2O3
(mass%)
CaO
(mass%)
MgO
(mass%)
CW
(mass%)
T.C
(mass%)
Ash
(d.b.)
Blaine
(cm2/g)
−45 μm
(vol.%)
Concentrated
iron ore
66.70.781.950.320.060.122.43221788.7
Burnt lime0.240.2297.340.9565.6
Coke breeze88.111.5

炭材核グリーンペレットの造粒には,直径600 mmのパンペレタイザーを使用した。17 rpmで回転するペレタイザーに粉コークスを投入した後,精鉱微粉と生石灰の混合粉を追加投入しながら,含水率8-9 mass%となるように適宜散水することで,粉コークスを混合粉で被覆した。Fig. 1に,グリーンペレットの作製条件と焼成条件を示す。ペレット作製条件として,炭材核サイズ,被覆層厚およびCaO配合量を変更し,焼成条件として温度と保持時間を変更した。

Fig. 1.

The schematic image and CCP’s design parameters to be adjusted in this study.

2・2 電気炉焼成

グリーンペレットの焼成にはマッフル炉を用いた。ニッケル製の試料皿にペレットを重ならないよう一層に並べ,1,200-1,350ºCで1-40分,大気雰囲気で焼成した。所定温度で保持した炉の扉を空け,サンプルを速やかに投入した後,炉内温度が所定温度-10ºCに達した時点を焼成開始時刻とした。所定時間経過後,炉から取り出した試料を空冷した。1回の処理で100-200 gのグリーンペレットを焼成した。

2・3 CCPの品質評価

焼成後のCCPの圧壊強度をオートグラフで測定した。測定にはShimadzu製AGS-Xを用い,1.0 mm/min.で垂直荷重を印加した。計測された破壊荷重をP,CCPの直径をxとして,岩石類の球形圧壊強度Scに関する理論式Sc=2.8P/(πx2)を用いて24)CCPの圧壊強度を評価した。また焼成後の被覆層の化学組成や,ペレット内部に残留した炭素量を定量するため,CCPを150 µm以下に粉砕し,化学分析に供した。この際に測定した炭素含有量を,焼成後の残留炭素量と定義した。CCPの被還元性はJIS-RI(JIS M8713)に従い,500 gの試料を30%CO-70%N2雰囲気で900ºC,180分間還元した際の重量減少をもとに算出した。また,還元粉化性はJIS-RDI(JIS M8720)に従い,500 gの試料を30%CO-70%N2雰囲気で550ºC,30分間還元したのち,30 rpm,30分間のドラム試験に供した際の,篩目2.83 mm以上の重量割合として算出した。

2・4 炭材核グリーンペレットと通常原料の複合焼成

電気炉焼成試験の結果から,焼結機での複合焼成に適すると判断した条件でグリーンペレットを作製し,複合焼成試験を実施した。試験条件をTable 2に示す。焼結試験機として直径300 mm,高さ600 mmの円筒形の鉄製鍋を用いた。通常原料の鉱石配合としては豪州産ピソライト鉱石60 mass%,ブラジル産ヘマタイト鉱石40 mass%,焼結鉱の塩基度(CaO/SiO2)は1.8とした。ドラムミキサーで造粒後の通常原料に,グリーンペレットを25 mass%混合し鉄鍋に均一に装入した。凝結材の配合比は,鉄鍋装入原料に対し外数で4.0 mass%とした。ただし,グリーンペレットが有する炭材核は凝結材には含めないものとした。

Table 2. Pot test conditions for co-production of CCP and sinter.
Pot dia.300 mm
Pot height600 mm
Sinter mix
Ore blend60%-Aussie & 40%-Brazil
Basicity1.8
CCP mix ratio25 mass% in sinter mix
Return fine20 mass%
Fuel4 mass% (outer percentage)
Ignition1073 K, 30 sec.
Suction pressure10 kPa

3. 実験結果

3・1 炭材核を内包する被覆層の安定性

Fig.2に,2種類の異なる条件で作製したペレットの外観写真と断面画像を示す。Fig.2 a)は被覆層中にCaOを7.5 mass%配合し,1,300ºCで3分間焼成した。Fig.2 b)はCaO配合量を2.0 mass%とし,1,350ºCで3分間焼成した。a)の条件で作製したものは焼成中に被覆層が崩壊し炭材核が露出した。また断面画像から被覆層が過度に溶融し,ペレット内部に粗大な欠陥が生成する様子が確認された。一方,b)の条件で作製したものはペレットの外形を保ち,断面画像からもペレット内部に粗大な欠陥は観測されなかった。このように,炭材核を内包したペレットを製造するためには,適正な作製条件を見出す必要がある。そこで,強度と被還元性の観点からCCPの設計パラメータを適正化すべく,被覆層厚,炭材核サイズ,CaO配合量および焼成条件について検討した。

Fig. 2.

Overviews and cross-section images of fired CCP prepared with two different conditions. (Online version in color.)

3・2 被覆層厚および炭材核サイズが強度に及ぼす影響

焼成後に内包炭材を露出させないためには,被覆層の過溶融を防止し,炭材をペレット内部に深く配置する事が有効である。そこで,被覆層の液相率,および内包炭材とペレット外表面との距離の影響を検討するために,CaO配合量と被覆層厚,炭材核サイズを変更して焼成した。CaO配合率が7.5 mass%以上の場合,被覆層厚や焼成条件によらず,Fig.2 a)のように被覆層が過溶融し,被覆層の破れやペレットの変形が生じた。そのため,これ以降の試験ではCaOの配合上限を5.0 mass%とした。

Fig.3に,被覆層厚と焼成後CCPの圧壊強度の関係を示す。炭材核サイズは4.0-4.8 mmに固定し,種々の条件で作製したペレットの結果を示す。いずれの条件でも,ペレット外部への炭材核の露出は見られなかった。被覆層厚を3 mmから5 mmに増加させると圧壊強度は増加したが,さらに7 mmまで増加させると強度は低下した。この理由としては,被覆層厚の増加に伴いペレット径も増加し,伝熱律速によりペレット内部の焼結進行が遅れ,焼成不足の領域が生成するためと考えられる。

Fig. 3.

The shell thickness of CCP v.s. the cold crush strength.

Fig.4に,炭材核サイズと圧壊強度の関係を示す。被覆層厚は最も強度の高かった5 mmに固定し,種々の条件で作製したペレットの結果を示す。炭材核サイズの低下に伴い圧壊強度は増加し,炭材核サイズの最も小さい4.0-4.8 mmの場合に最も高強度となった。粒径8.0 mm以上の炭材核を用いた場合には,焼成後CCPの断面観察から,被覆層中に粗大な亀裂が存在した。これは,炭材核の一部が燃焼して生成したガス圧に起因し,このような脆弱部が強度低下を引き起こしたと考えられる。

Fig. 4.

The coke core size of CCP v.s. the cold crush strength.

3・3 CaO配合量が被還元性に及ぼす影響

被還元性を向上させるためには,還元性の良好な鉱物組織を形成させるとともに,還元ガスの流通に寄与する微細気孔を多く残存させる事が重要である。自溶性ペレットの焼成過程で生成する高被還元性の鉱物組織としては,多成分系カルシウムフェライトが挙げられるが,この形成過程にはCaO配合量が密接に関係する。また,微細気孔に関しては元鉱由来のものと融液生成と気孔統合にともなって二次的に生成するものが挙げられ,同じく被覆層中のCaO配合量が支配因子となる。そこで,CaO配合量がCCPの被還元性に及ぼす影響を検討した。

Fig.5に,CaO配合量を変えた2種類の焼成後CCPの断面画像と被覆層の微細組織像を示す。CaOを5.0 mass%配合した場合,CaO無配合の場合に比べ,被覆層中に数十から数百µmサイズの気孔が多く生成した。またCaOを配合した場合には,被覆層中に多成分系カルシウムフェライトが多く生成した。

Fig. 5.

Microscopic images of cross section of CCP a) without CaO, b) with 5.0 mass% CaO in the shell and c,d) their representative mineral texture.

Fig.6に,被還元性に及ぼすCaO配合量の影響をについて焼成時間で層別した結果を示す。焼成温度は1,300ºCとした。被還元性はCaO配合量が多いほど,また焼成時間が短いほど高い値を示した。Fig.2で示したように,CaO濃度が7.5 mass%以上では被覆層が過溶融するが,5.0 mass%以下の配合量では被覆層の崩壊は観測されなかった。

Fig. 6.

The CaO content in CCP shell v.s. the reduction degree (JIS-RI).

4. 考察

4・1 強度の律速因子

Figs.3 and 4では,被覆層の物理的な安定性を評価するために被覆層厚と炭材核サイズに着目して強度を評価した。一方で,被覆層自体の構造的な強度を議論するためには,焼結過程における融液生成や空隙構造の影響を考慮する必要がある。そこで,焼成時の溶融・融液生成に寄与するCaO配合量および焼成温度が圧壊強度に及ぼす影響を検討した。

Fig.7は,被覆層の含有CaO量と焼成温度に基づき,Fe2O3-CaOの2元系平衡状態図25)から求めた液相率と圧壊強度の関係を示す。実際には,被覆層(鉄鉱石)中の脈石成分や炭材核中のAsh分が液相率に与える影響を考慮する必要があるが,本検討では簡易的にFe2O3-CaOの2成分系平衡状態図から液相率を求めた。焼成時間が1分および2.5分の場合,液相率が0.2近傍(CaO:3-5%,焼成温度:1,250-1,350ºC程度)でペレットの圧壊強度が極大となった。液相率が0.2以上になると,気孔率の上昇や気孔の合体・粗大化による強度低下の影響が支配的になると考えられる。一方,焼成時間が6分および15分の場合には液相率0.1近傍で強度が極大となった。このような強度ピークを示す液相率の違いについて,液相率は平衡状態を仮定した計算値であるが,焼成時間(高温保持時間)が比較的短い場合には,被覆層内部に温度勾配がありFe2O3-CaOの溶融反応が平衡に達していない可能性が挙げられる。この場合,実際の液相率は状態図から予想される液相率よりも低下する。したがって,十分な量の融液量を生成させるためには,高液相率となる原料配合を採用する必要がある。一方で焼成時間が6分および15分と通常の焼結プロセスに比べて長い場合には,被覆層内部は概ね平衡に達していると考えられ,実際の液相率は状態図で予想されるものと近い値を示すと考えられる。

Fig. 7.

The relationship between the crush strength of CCP and liquid phase ratio in the shell based on the Fe2O3-CaO equilibrium diagram.

Fig.8に,液相率と被覆層中の気孔率の関係を示す。被覆層中の気孔率は,ペレットの断面画像を2値化処理して求めた。これより,液相率の増加に伴い,被覆層中の気孔率が上昇した。以上より,液相率が0から0.2程度まで増加すると,被覆層内の気孔率が約20%から30%まで上昇するものの,鉱石粒子間のスラグボンド形成による効果が支配的となり,強度が向上すると推察される。一方,液相率が0.2以上になると,被覆層内の気孔率増加の影響が無視できなくなり,強度低下を引き起こすものと考えられる。

Fig. 8.

The relationship between the porosity in the shell measured by the image analysis of cross sections and the liquid phase ratio in the shell based on the Fe2O3-CaO equilibrium diagram.

4・2 被還元性の律速因子

還元反応速度は還元ガスの物質移動速度と被還元鉱物の反応性に支配される。Figs.5 and 6では,被還元性に及ぼす操業因子としてCaO配合量と焼成時間に着目したが,気孔構造と鉱物組織に及ぼすCaO配合量の影響について明確ではない。そこで,1界面未反応核モデル26)を用いて種々の条件で作製したCCPの被還元性の律速過程を解析した。CCPのCaO配合量3水準(0.5 / 2.0 / 5.0 mass%),焼成温度1,300ºCで1分間焼成した条件に関して,JIS-RI還元実験で得られた還元曲線の混合律速プロット27)から拡散係数Deと反応速度定数kcを求めた。本来なら,炭材核からのCOガス発生およびCCP内部からの還元反応も考慮すべきだが,本検討では簡易的に1界面モデルを用いた。CCP内外からの還元を考慮した解析については今後の課題である。

Fig.9に,CCPおよび比較材として,CaO濃度10.4 mass%,塩基度2.0の条件で作製した焼結鉱の還元解析結果を示す。これより,CCPの性状に着目すると,CaO濃度の増加に伴い拡散係数Deと反応速度定数kcが増加するが,拡散係数への影響が大きい。また, CCPと焼結鉱の比較に関しては,CCPは低CaO濃度にも関わらず高い被還元性を示した。CaO配合0.5 mass%のCCPと焼結鉱を比べると,Deはほぼ等しいにも拘わらずkcが約2倍に増加した。すなわち化学反応速度の差による影響が大きい。

Fig. 9.

The comparison between CCPs, fired at 1573 K for 1 min., and conventional sinters in De vs kc map with JIS-RI contour lines.

そこで次に,拡散係数および反応速度定数に影響を与える操業因子について検討した。

4・2・1 拡散係数

CCP中の還元ガスの拡散しやすさは,被覆層の厚みや層内構造に起因する。Fig.10に,CaO配合量と還元解析より求めた拡散係数の関係について,焼成時間で層別して示す。いずれの焼成時間においても,CaO配合量の増加に伴い拡散係数は増加した。これはFig.8で示したように,被覆層内に生成する気孔率が増加し,還元ガスの拡散が促進されるためと考えられる。焼成時間の延長に伴い拡散係数が低下したが,Fig.8に示すように焼成時間の延長に伴い気孔率も増加するため,気孔率と拡散係数の関係は整合していない。気孔形状に着目して断面組織を観察した結果,焼成時間が長い場合には被覆層中の微細な開気孔が閉塞・合体し,粗大な円形の閉気孔が増える傾向が観察された。したがって,ミクロ気孔を介した鉱物組織内部へのガス拡散が抑制されたものと考えられる。

Fig. 10.

The correlation between the effective diffusion coefficient (De) and CaO content in the CCP shell.

4・2・2 反応速度定数

還元反応速度には,反応対象物である鉱物組織や,還元ガスの生成挙動が影響する。CCPと焼結鉱の大きな違いは,内包炭材の存在であることから,反応速度定数に及ぼす残留炭素の影響を検討した。

Fig.11に,焼成後CCPの内部に残留した炭素量と,還元解析で求めた反応速度定数の関係を示す。これより,残留炭素量の増加に伴い反応速度定数が増加した。この理由として以下3点が挙げられる。1点目としては,残留炭素量が多いとCO2による炭材核のガス化反応が引き起こされ,還元中のペレット内部の還元ポテンシャルが増加する可能性が挙げられる。2点目として,CCPの中心部は還元対象物ではない炭材核および空隙が存在する。そのため,一般的な焼成ペレットではガス拡散律速となり粒子内部の還元遅れが生じるが,本CCPにおいてはペレット中心部の還元が不要であるという構造的な利点が挙げられる28)。3点目としては,残留炭素量は焼成過程における熱履歴を反映しており,焼成温度が高い(すなわち残留炭素量が少ない)場合には被還元性の低いMagnetiteが増加し速度定数は小さくなる。また,焼成中に炭材核が多く燃焼するほど,ペレット内部からCOガスが多く生成し,被覆層が内部から還元される。その結果,MagnetiteやWüstiteといった被還元性の低い組織が増加し,速度定数が低下したと考えられる。Fig.12に,焼成時間とCCP被覆層のFeO含有量の関係を焼成温度で層別して示した。これより焼成温度が高いほどFeOが上昇し,ペレット内部からの還元による影響を受けたものと推定される。また,焼成時間の延長に伴いFeOが上昇するが,1300ºCおよび1350ºCでの焼成であれば6分以上,1200ºCおよび1250ºCでの焼成であれば15分以上の条件においては,内部からの還元よりも雰囲気からの再酸化の影響が大きくなり,FeOは減少傾向となった。

Fig. 11.

The correlation between the reaction rate constant (kc) and the residual carbon in the fired CCP.

Fig. 12.

The relationship between the FeO content in the CCP shell and firing time with 4 different firing temperatures (CCP made of 5 mm shell thickness and 2.0 mass% of CaO content in the shell).

4・2・3 残留炭素量の推定モデル

Figs.10 and 11より,CaO配合量および残留炭素量が,拡散係数Deおよび反応速度定数kcに影響を与えることが分かった。CaO配合量はグリーンペレットの製造条件として制御可能である。しかし,残留炭素量は焼成後の結果であり,所定の残留量に制御するためには焼結過程における内包炭材の反応挙動を把握する必要がある。実際の焼結機での複合焼成の際には,充填層内でのグリーンペレットの偏析状態によりペレットが受ける熱履歴が大きく異なる。したがって,焼結機での複合焼成条件を提案するためには,任意の焼成条件で残留炭素量を求めるモデルを構築し,焼成後の被還元性等の品位を予測する必要がある。

Fig.13にCCPの焼成過程の断面画像を示す。焼成の進行に伴い,炭材核の一部が燃焼して縮小するため,炭材核と被覆層の間に空隙が生成する。このような焼成過程でのCCPの構造変化をFig.13下段のようにモデル化した。炭材核4.0-4.8 mm,被覆層厚3 mm,CaO 5 mass%配合でグリーンペレットを作製し,複数の温度・時間条件で焼成した実験データを用いて,炭材核の燃焼に関わるガスの拡散や燃焼反応など一連の現象を総括的に定式化した29)

Fig. 13.

Cross section images of CCP fired in three different firing times and schematic models corresponding to each.

Fig.14に定式化のイメージを示す。本モデルで仮定した素過程は以下の通りである。雰囲気中の酸素の(1)ガス境膜内拡散,(2)被覆層内拡散,(3)空隙内拡散および(4)炭材核との燃焼反応(C+1/2O2=CO)。反応により生成したCOガスの(5)空隙内拡散および(6)被覆層内内拡散。ただし,COガスはFe2O3層中で酸化し,その後CO2として扱った。最後に,(7)CO2のガス境膜内拡散である。本モデルでは,被覆層の溶融と内部からの還元の過程は省略し,また粒径方向の温度は一定とした。以上7つの素過程を式(1)~(7)のように立式した。

  
nO2film=4πR2kf(Cb,O2CS,O2)(1)
  
nO2shell=4πr2DO2dCO2dr(2)
  
nO2void=4πr2DO2dCO2dr(3)
  
nC=4πrC2kCC,O2(4)
  
nCOvoid=4πr2DCOdCCOdr(5)
  
nCO2shell=4πr2DCO2dCCO2dr(6)
  
nCO2film=4πR2kf(CS,CO2Cb,CO2)(7)
Fig. 14.

The schematic image for the coke core combustion model of CCP and the outline graph of concentration distributions of oxygen, carbon monoxide, and carbon dioxide.

ここで,擬定常状態を仮定し式(8)が成り立つとする。

  
nO2film=nO2shell=nO2void=nC=nCOvoid=nCO2shell=nCO2film=nOverall(8)

式(8)式(1)~(7)からnOverallについて解くと,総括反応速度式は式(9)のように表せる。

  
nOverall=4πR2kOverallCc,O2(9)

ここで,総括反応速度定数kOverall式(10)で表せる。

  
1kOverall=1kf+R(Rr0)r01D+R2(r0r)rcr01D+R2rc21k(10)

一方,炭材核の燃焼による消失速度は式(11)で表せる。

  
nCoke=ddt(43πrc3ρ)(11)

C + 1/2 O2→COより,2 nOverall = nCokeであるから,式(9)式(11)から式(12)を得た。

  
Cb,O2tr0ρfr02R2kf33f+f231Dr0(3f2f2)6=1Dr0(Rr0)3R(33f+f2)+1k(12)

ただし,fおよびxは以下の通りである。

  
f=1(1x)1/3(13)
  
x=w0ww0=1(rcr0)3(14)

ここで,式(12)の未知パラメータはDkであり,これらを求めるために式(12)式(15)のように表す。

  
Y=1DX+1k(15)

ただし,XYは以下である。

  
X=r0(Rr0)3R(33f+f2)(16)
  
Y=Cb,O2tr0ρfr02R2kf33f+f231Dr0(3f2f2)6(17)

XおよびYは,焼成試験の結果から,各温度に対して複数求められるので,それらを式(15)に代入し,その傾き1/Dと切片1/kからDkを決定した。実験値より求めたXYの回帰直線の傾きと切片から各焼成温度でのDkを求めた。これらのArrheniusプロットをFig.15に示す。これより,Dkをそれぞれ温度の関数として式(18)(19)のように定式化した。

  
D=2.45×103exp(218000RT)(18)
  
k=5.84×104exp(197000RT)(19)
Fig. 15.

Arrhenius plots for the reaction rate constant of the coke core and effective diffusion coefficient in the shell.

式(18)(19)式(12)に代入し,焼成時間と炭材核の燃焼率の関係を計算した結果をFig.16に破線で示した。電気炉試験の実験値も同図にプロットした。計算曲線と実験値は良く一致した。以上より,本モデルにより,任意の焼成条件で残留炭素量を予測する事が可能である。また,Fig.11に示すように,算出した残留炭素量から反応速度定数を導出し,焼成後の被還元性を予測できる。さらに,被覆層の厚さや炭材核の粒径が変化した場合でも残留炭素量を計算できるため,様々な焼成条件に適したCCPの構造設計に活用することができる。

Fig. 16.

The time dependence of carbon consumption ratio with three firing temperatures and theoretical curves by the established carbon core reaction model (Eq. 12).

4・3 複合焼成に適したCCP設計

これまでの検討結果に基づき,被覆層の焼成安定性,強度および被還元性の観点からCCP製造に適した造粒粒子構造,組成設計および焼成条件をFig.17に示す。被覆層の安定性に関しては,Fig.2 a)に示したように,焼成中に被覆層が過溶融して炭材核が露出するのを防ぐため,CaO配合量には上限が存在する。CaOが過剰になると,被覆層の一部あるいは全部が過溶融し,ペレットの外形を保つことができない。また,焼成過程で炭材核の一部が燃焼すると,核表面から生じる輻射熱およびCOガスで被覆層の主成分であるFe2O3が還元され,被覆層の内壁近傍で2FeO-SiO2系の低融点のスラグ融液が生成する。そこにペレット外部へ向かう燃焼ガスの圧力が作用すると,被覆層強度の脆弱部を起点として層の破れが生じる。その結果,ペレット内部の炭材核が雰囲気中に露出する。本検討では,ペレットの外形を保持可能なCaO濃度の上限は5 mass%とした。

Fig. 17.

The preferred CCP design and manufacturing condition for the co-production with the conventional sinter.

焼成後CCPの圧壊強度を最大化させるためには,被覆層厚は5 mm,炭材核は4.0-4.8 mmとするのが適正である。また液相率0.1-0.2近傍で最も強度が高く,焼結層内の最高温度を1,250-1,350ºC程度と想定すると,CaO配合量の適正範囲は3-5 mass%である。一方,被還元性の観点からは CaO配合量を増加させるのが望ましく,強度と被還元性を両立させる上では,CaOの配合上限は5 mass%となる。

焼成雰囲気に関しては,充填層の熱履歴は場所によって異なり変動幅があるため,焼成温度や焼成時間を一律に制御する事は難しい。kcの観点からは,ペレット内部により多くの炭材を残留させることが望ましく,ペレットが受ける熱履歴を制御するために,凝結材の配合量や偏析条件を適正化する必要がある。本検討では1,250-1,350ºCの温度範囲で,焼成時間が6分以内であれば,ペレット内部に炭材核を残した2層構造ペレットを製造可能である。一般的な焼結プロセスにおける最高温度は1,200~1,350ºCで,高温保持時間は2-3分程度である事から,本検討で示した条件で炭材核グリーンペレットを安定製造できるものと考えられる。

以上をまとめると,炭材核の粒径4.0-4.8 mm,被覆層厚5 mm,CaO配合量3.0-5.0 mass%で炭材核グリーンペレットを作製し,焼結層内の最高温度が1,250-1,350ºC,高温保持時間が6分以内となる焼成条件を設定するのが適している。本条件で作製したグリーンペレットを通常の擬似粒子とともに実際に複合焼成し,CCPの製造可否を次節で検証した。

4・2・3項で構築した残留炭素量の推定モデル式を用い,Fig.17に示した条件で作製したグリーンペレットを充填層の各位置に配置した場合のCCPの残留炭素量を推計した。Fig.18に,グリーンペレットが焼結機内の各温度プロファイルに曝された場合の残留炭素量の計算結果を示す。ここで,焼結機内の温度プロファイルの計算にはOyamaらの焼結ヒートパターン数学モデル30)を使用した。空隙率35 vol%,層厚600 mmの標準的な充填層を想定し,層表面から100 mm深さ(上層),300 mm深さ(中層),500 mm深さ(下層)の各位置のヒートパターンを計算した。また,グリーンペレットは周囲の凝結材(粉コークス,無煙炭等)が燃焼することで昇温するため,ペレット近傍のバルクガスO2濃度は凝結材燃焼場のバルクガスO2濃度に相当すると考えられる。しかしこれを正確に求めることは困難であったため,本検討では簡易的に,吸引空気中O2濃度(20.9 vol.%)と排ガス中O2濃度の平均値を,計算時のバルクガスO2濃度と仮定した。CCPがこれらのヒートパターンおよびO2濃度のもとで焼成されたと仮定し,残留炭素量の時間推移を示した。焼成後,CCP中の炭材核は上層で92 mass%,中層で72 mass%,下層で41 mass%残留する計算結果を得た。これより,実際の焼結機内の温度プロファイルに相当する焼成を経ても,ペレットの賦存箇所に関わらず,炭材核が内部に残留した炭材核ペレットを得られる可能性がある。

Fig. 18.

The model estimation of the residual carbon core ratio at each part in the sintering bed (top, middle and bottom) with corresponding heat patterns.

4・4 鍋試験機での複合焼成

Fig.17に示した条件で作製したグリーンペレットを通常の焼結原料に25 mass%配合し,原料充填層中に均一装入して鍋試験機で複合焼成を試行した。焼成後のケーキ内部の写真(Fig.19 a))と,ケーキを破砕・分級した後の成品焼結鉱の写真(Fig.19 b))を示す。焼成後も被覆層が破れることなくペレットの外形を保ち,また内部に炭材核が残留していることを確認した。焼成後のペレットの多くは通常の焼結鉱と融着しており,充填層の上/中/下部からそれぞれCCP単体の分析試料を採取するのは困難であったため,上中下の区別なく,焼結ケーキ全体からCCP単体として採取可能なものを集め,残留炭素を分析すると,平均して76 mass%の炭材核が焼成後に残留した。これより,実際に通常の焼結原料とともに焼成しても,炭材核が内部に残留した炭材核ペレットを得ることが可能である。ただし,充填層内高さ方向のペレット偏析や凝結材偏析によって層内ヒートパターンが変化することから,安定的に炭材核を残留させるための偏析制御については今後の検討課題である。

Fig. 19.

A co-production trial for CCP and sinter with the pot test and photos of a) the inside view of sintered plug and b) product samples after crushing. (Online version in color.)

Table 3に,通常の焼結原料のみで焼成した場合と,炭材核グリーンペレットを25 mass%配合して焼成した場合の結果を比較して示す。ペレットを配合することで充填層内の通気は改善しFFSが17.4 mm/min.から19.8 mm/min.に向上した。成品歩留は79.7%から72.3%に低下したが,通気性向上効果が大きく,生産性は31.9 t/m2・dから33.2 t/m2・dに向上した。成品品質として,TI強度は73.8%から67.2%に低下したものの,JIS-RIは68.7%から78.5%に大幅に向上した。これより,脈石や有害元素の少ない精鉱微粉を,炭材を核とするグリーンペレットとして通常の擬似粒子とともに焼成することで,生産性を悪化させずに被還元性の高い高炉原料を製造できる可能性を示した。

Table 3. The pot test result of the base case and the co-production case that mixes green pellets by 25 mass% into the sinter mix.
FFS*1
(mm/min.)
Yield*2
(%)
Productivity
(t/m2/d)
TI
(%)
JIS-RI
(%)
Base case17.479.731.973.868.7
Co-production case
[CCP 25 mass%]
19.872.333.267.278.5

*1 Flame front speed.

*2 Mass fraction of +5 mm after 4 times falls of a sintered plug from 2 m height.

本研究では主にペレット単一粒子を対象に実験や解析を行ったが,通常の擬似粒子とグリーンペレットを焼結機に混合装入し,擬似粒子の焼結の進行を利用したペレットの塊成化を志向している。焼成後はCCPと焼結鉱が融着した複合的な成品が得られると想定するが,その場合の焼成過程の解析や,強度低下を抑制するための品質制御は今後の検討課題である。

5. 結言

焼結機での複合焼成を前提に,高被還元性かつ低スラグ比の炭材核ペレット(CCP; Carbon Core Pellet)を製造するための基礎検討を行い,以下の知見を得た。

(1)被覆層厚の増加に伴いCCP強度は増加し,層厚5 mmの時に強度最大となった。層厚7 mmの時,被覆層内の伝熱律速により強度が低下した。

(2)炭材核サイズの低下に伴いCCP強度は増加し,4.0-4.8 mmの時に強度最大となった。炭材核サイズが増加すると,炭材核の燃焼消失によって生成する粗大な空隙や亀裂の影響により強度低下を引き起こす事が分かった。

(3)CaO配合率の増加に伴い,融液生成と気孔の形成が促進され,被還元性が向上した。配合率が7.5 mass%の時には被覆層が過溶融して崩壊した。被覆層の安定性と還元率最大化の観点で,適正なCaO配合率は5.0 mass%であることが分かった。

(4)炭材核焼成ペレットの被還元性特性の解析により,従来焼結鉱に比べて炭材核CCPの反応速度定数が高い事がわかった。速度定数と残留炭素量の間には正の相関が認められる事から,任意の焼成条件,ペレット構造においてペレット内部の残留炭素量を推定できるモデルを構築した。

(5)通常原料と炭材核グリーンペレットを複合焼成し,通常の焼結鉱とともに内部に炭材を保持したペレットを製造できることを実証した。

記 号

Cb, i:成分iのバルクガス濃度(mol/m3)

Cc, i:成分iのコークス核表面ガス濃度(mol/m3)

Cs, i:成分iのCCP表面ガス濃度(mol/m3)

Cv, i:成分iの空隙内ガス濃度(mol/m3)

dc:コークス核の初期径(mm)

D:CCP中の炭材燃焼モデルにおける被覆層内有効拡散係数(m2/s)

D’:空隙内有効拡散係数(m2/s)

De:CCP還元解析における被覆層内有効拡散係数(m2/s)

DO2:空気中のO2拡散係数(m2/s)

k:コークス核燃焼の反応速度定数(m/s)

K:C + 1/2 O2 → CO反応の平衡定数(-)

kOverall:総括反応速度定数(m/s)

kc:CCP還元解析における反応速度定数(m/s)

kf:ガス境膜内物質移動係数(m/s)

nO2 film:ガス境膜内のO2拡散速度(mol/s)

nO2 shell:ペレットフィード層内のO2拡散速度(mol/s)

nO2 void:空隙内のO2拡散速度(mol/s)

nC:コークス核とO2の反応速度(mol/s)

nCO void:空隙内のCO拡散速度(mol/s)

nCO2 shell:被覆層内のCO2拡散速度(mol/s)

nCO2 film:ガス境膜内のCO2拡散速度(mol/s)

nOverall:総括反応速度(mol/s)

rc:コークス核半径(m)

r0:コークス核初期半径(m)

R:CCP半径(m)

t:焼成時間(s)

w:コークス核重量(kg)

w0:コークス核初期重量(kg)

x:コークス核反応率(-)

ρ:コークス中のカーボン濃度(mol/m3)

文献
 
© 2021 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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