Tetsu-to-Hagane
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Steelmaking
Effects of Particle Velocity, Particle Mass Flow Rate and Liquid Velocity on Penetration Phenomena of Fine Particles into Liquid
Atsushi Kushimoto Shuhei Kasahara
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2021 Volume 107 Issue 8 Pages 624-632

Details
Abstract

RH water model experiments were carried out in order to evaluate penetrating phenomena of fine particles into liquid. Effects of particle velocity, particle mass flow rate and liquid velocity on deposition of fine particles on liquid surface, and amount of penetrated particle into liquid were investigated. The following results were obtained:

(1) Particle layer was formed on liquid surface and prevented penetration of particles when fine particles were blown.

(2) Weight of particle layer decreased with increase of of particle velocity and liquid velocity, with decrease particle mass flow rate.

(3) Amount of penetrated particle into liquid increased with decrease of weight of particle layer.

1. 緒言

鋼中における不純物元素を極限まで低減する高純度鋼のニーズがますます高まっている。なぜなら,鉄鋼製品が使用される環境がますます過酷になり,より高機能化する特性に対応させなければならないためである。鋼中不純物の中でも硫黄は,厚板やラインパイプにおける低温靭性や絞り値の悪化1,2),サワーガス環境での水素誘起割れの発生3),そして加工用熱延・冷延高張力鋼における曲げ性,伸びフランジ性の悪化4)など,幅広い鉄鋼材料の特性に悪影響を及ぼす。

溶鋼中の硫黄を除去するプロセスの一つとして,RH真空脱ガス装置内で,上吹きランスを用いてCaO系脱硫剤粉体を上吹きするプロセスがある5)。この上吹きプロセスにおいて高い脱硫能を得るためには,上吹きした粉体を効率的に溶鋼内部に侵入させ,浴内に分散させることが重要であり,脱硫剤粉体を模擬した粒子の侵入・分散に関する基礎検討611)が数多く行われてきた。これらは,大まかに粒子の液浴への侵入可否68),および浴内侵入後の滞留挙動911)の2つに分類される。

まず,粒子の液浴への侵入可否に関して,Enghら6),Ozawaら7)は,密度および粒径が異なる粒子が水あるいは液体金属浴へ侵入する挙動を調査し,粒子の浴面近傍の運動方程式に基づいた粒子侵入可否を記述する指標として臨界We数を提案している。Odaらは,水モデルで調査した微細粒子の連続インジェクション供給時の粒子侵入挙動に対し数値解析を適用し,粒子侵入可否に粉体/液体間の濡れ性が大きく影響することを指摘している8)

次に,粒子の浴内侵入後の滞留挙動に関して,Kimura9)は,粒子や液浴の物性,粒子供給条件が粒子の侵入深さに及ぼす影響を調査している。Matsuzawaら10,11)は,粒子が液浴に侵入する際に生成する気注,および粒子が気注から破断した際に付着する残留気泡に着目し,粒子速度や粒子の濡れ性が気注および残留気泡の生成,ならびに浴内での粒子滞留時間に及ぼす影響を調査している。

しかしながら,いずれの基礎検討においても液浴の流動を考慮しておらず,上吹きした粒子群と液浴流動が複雑に絡み合う実プロセスで生じる現象を十分かつ定量的に解明できているとは言い難い。そこで本研究では,RH水モデルを用いて,吹付け粒子群の液浴内への侵入現象を解明することを目的として,流動を付与した液浴に微細粒子群を吹付けた際の粒子侵入・分散挙動に及ぼす吹付条件と液浴流動の影響を定量的に検討した。

2. 実験方法

2・1 実験装置の概要

RH水モデル実験装置の概略図をFig.1に示す。真空槽(内径Dvac:0.33 m,浸漬管径Dleg:0.10 m)および取鍋(内径0.40 m)はいずれも透明なアクリル製であり,内部の流動を観察可能である。また,粒子はポリエチレン(密度ρp:920 kg/m3,粒子直径dp:0.15 mm,水との接触角:94°)を用い,真空槽内に取り付けた単孔ストレートノズル(φ4.0 mm)からキャリアとなるArガスとともに供給した。なお,本装置では,Arガスの一部を粉体タンクに分配することで,粒子速度を制御する全Ar流量を同一としながら,タンクに導入するAr流量の変更により上吹き粒子群の質量流速を個別に制御可能である。

Fig. 1.

Schematic image of experimental apparatus.

2・2 粒子侵入現象の観察方法

本実験では,上吹きした粒子の速度および質量流速,ならびに真空槽内液浴の平均流速の3つの因子を制御した。上吹き粒子の速度vp(m/s)は,粒子およびArガスが浴面で衝突する凹み直上の粒子を8000 fpsで撮影し,無作為に選択した10個の粒子について一定距離を通過するために要したフレーム数を求め,単位時間あたりの移動距離の平均値を算出した。粒子群の質量流速FPB(kg/s)は,粉体タンクに粒子を50 g挿入して上吹きを開始し,タンク内の粒子を全量吹き切るまでの時間を測定することで,単位時間あたりの供給量を算出した。また,真空槽内液浴の平均流速は,式(1)に示す本RH水モデル装置における経験式から求まる環流量を,真空槽内液浴の断面積で除した式(2)を用いて算出した。

  
Q=2.69103GHe1/3Dleg4/3{ln(P0/P)}1/3(1)
  
vl=Q/(ρlhDvac)(2)

ここで,vl:液浴の平均流速(m/s),ρl:液体密度(kg/m3),h:槽内浴深(m),Dvac:真空槽内径(m),Q:環流量(kg/s),GHe:環流ガス流量(Nl/s),Dleg:浸漬管径(m),P0:ガス吹込位置圧力(Pa),P:槽内圧力(Pa)である。

実験方法は以下の通りである。はじめに取鍋内に水を150 L装入し,取鍋を上昇させ液浴内に真空槽下部の浸漬管を浸漬させた。次に,真空ポンプを用いて真空槽内を99.3 kPaに減圧し水を槽内に吸い上げ,取鍋の昇降にて液浴の浴深hが0.075 m,ランス下端から浴面までの距離Hが0.20 mとなるように調整した。浴深を調整した後に,片方の浸漬管から環流用Heガスを導入し水を環流させ,粒子の上吹きを開始した。

実験条件をTable 1に示す。本研究では,浴面近傍の粒子侵入現象の直接観察(観察(1)),および真空槽の液浴内に侵入した粒子量の定量化(観察(2))の2つの実験を行った。観察(1)では,環流He流量および全Ar流量の変更により液浴平均流速vlおよび粒子速度vpを変更し,所定の条件に制御した直後に高速度カメラにより浴面近傍の粒子を撮影した。観察(2)では,平均流速および粒子速度に加え,タンク導入Ar流量の変更にて粒子群質量流速FPBも制御した。所定の条件に制御して粒子上吹きを開始し,液浴内に侵入した粒子が下降管から排出されてから環流にて再び真空槽に到達するまでの間に,下降管側液浴内部を高速度カメラで撮影した。撮影した画像に対して画像処理ソフトによる二値化処理を行い,画像視野内で粒子が占める面積率Rを算出することで,侵入量を定量化した。

Table 1. Experimental conditions.
Exp. No.CirculationTop blowing
He gas flow rateTotal Ar gas flow rateTank Ar gas flow rate
(1)0~20 Nl/min
(vl: 0~0.11 m/s)
0~30 Nl/min
(vp: 3.0~16 m/s)
0 (Free fall)
(FPB: 0.15 g/s)
(2)0.30~20 Nl/min
(vl: 0.025~0.11 m/s)
10~20 Nl/min
(vp: 6.0~12 m/s)
2.0~10 Nl/min
(FPB: 0.60~1.5 g/s)

3. 実験結果

3・1 浴面近傍での粒子侵入現象

粒子およびキャリアガスが吹き込まれている浴面近傍を撮影した画像をFig.2に示す。液浴の流動がない場合は浴面に堆積した粒子層により上吹き粒子の侵入が阻害され,浴面上部に飛散していることがわかる。この状態から液浴の流動を付与し,更に粒子を加速していくと,浴内への粒子侵入が促進,ならびに浴面上部への粒子飛散が緩和されていくことがわかる。

Fig. 2.

Photographs of fine particles close to the liquid surface.

液浴の平均流速および粒子速度を変更した条件において,浴面直下の浴内粒子を撮影した画像をFig.3に示す。液浴の流速がない条件では粒子速度が11.0 m/s以上で粒子が浴内に侵入したが,侵入した粒子は浴面直下に密集し浴内に分散しなかった。一方,液浴に流速を付与した条件では粒子速度が6.5 m/s以上で浴内に侵入できており,かつ一度侵入した粒子は液浴の下降流により浴内に分散されていることがわかる。

Fig. 3.

Photographs of fine particles beneath the liquid surface.

3・2 粒子侵入量に及ぼす液浴平均流速,粒子群質量流速および粒子速度の影響

下降管側液浴の断面を撮影した画像の一例をFig.4(a),撮影画像に対し二値化処理を施した結果をFig.4(b)に示す。Fig.4(a)の黒色部が浴内に侵入した粒子であり,二値化処理により粒子に相当する領域を抽出できていることがわかる。

Fig. 4.

Photographs of fine particles in the liquid. (a) Before binarization, (b) after binarization.

画像処理で得られた面積率の結果の中から,粒子速度が同一である結果を抽出し,粒子群質量流速で層別し液浴の平均流速で整理した結果をFig.5に示す。液浴平均流速,あるいは粒子群質量流速が増加するほど浴内粒子の面積率は増加しているが,平均流速を過度に増加させても面積率の増加は飽和した。一方,粒子群質量流速が同一である結果を抽出し,液浴の平均流速で層別し粒子速度で整理した結果をFig.6に示す。粒子速度の増加により,浴内粒子の面積率は単調に増加した。

Fig. 5.

Effects of vl and FPB on R.

Fig. 6.

Effects of vp and vl on R.

4. 考察

4・1 浴面での粒子侵入現象

4・1・1 微細粒子群吹付時の粒子侵入条件

粒子の液浴内部への侵入条件に関して,Enghらは,ある速度を持つ固体球が液体へ侵入する限界は式(3)~(5)に示す臨界ウェーバー数WeCで整理できることを報告している6)

  
WeC=8{1exp(34ρ*)}(83ρ*1+cosθ)+16(3)
  
ρ*=ρp/ρl(4)
  
WeC=rpρlvC2/σ(5)

ここで,ρp:粒子密度(kg/m3),ρl:液体密度(kg/m3),θ:固体-液体間接触角(rad),σ:表面張力(N/m2),rp:粒子半径(m),vC:臨界侵入速度(m/s)である。一方,Ozawaらは,Enghの式を基本として,表面張力にかかる窪みが生じた場合の補正係数A,液体から及ぼされる抗力係数CDを考慮した式(6),(7)を提案し7),Odaらは微細粒子を液中へ連続インジェクションした条件でのWeCについて,AおよびCDをさらに補正かつ式(6)の重力項(=2 G/3 A(ρ*-0.5))を省略した式を報告している8)。また,式(6)中のAおよびCDについて,Ozawaらはそれぞれ2.5,0.44,Odaらはそれぞれ3.69,1.69を報告している。

  
WeC=4ACD[{1exp(3CD2(ρ*+0.25))}{4(ρ*+0.25)3CD1+cosθ+2G3A(ρ*0.5)}+2](6)
  
G=rpρlg/σ(7)

本研究における浴内への粒子侵入可否を,粒子速度および液浴平均流速で整理した結果をFig.7に示す。また,既往のWeCの式にて算出した臨界侵入速度をFig.7中に併せて示す。なお,WeCの計算に際し,ρlは水の1000 kg/m3ρpはポリエチレンの920 kg/m3rpは0.075 mmとした。また,式(6)中のパラメータであるAおよびCDは,Ozawaらの式ではそれぞれ2.5および0.44,Odaらの式ではそれぞれ3.69および1.69を仮定した。液浴に流速を付与した条件での粒子侵入可否は,Odaらの式とよく整合した。これは,Odaらの検討では,水,および粒子直径が0.53から1.6 mmの微細なポリスチレン粒子を使用しており,本研究の実験条件と最も近かったためと考えられる。一方で,液浴に流速を付与しなかった条件では,粒子速度が臨界侵入速度以上であっても液浴内に侵入しない条件があった。これは,浴面に粒子が堆積し,上吹き粒子の浴内への侵入を阻害したことが要因と考えられる。この粒子の堆積現象は,粒子の浴内への侵入可否のみならず,侵入量にも影響を及ぼす可能性がある。

Fig. 7.

Effects of both vl and vp on penetrability of particle.

4・1・2 粒子侵入挙動に及ぼす浴面での粒子堆積の影響

浴面での粒子侵入現象の直接観察から,粒子堆積が粒子侵入挙動に大きく影響している可能性を見出した。そこで,本実験で得た撮影画像から,粒子侵入挙動に及ぼす粒子堆積の影響を定性的に考察した。浴内への粒子の侵入挙動の模式図をFig.8に示す。

Fig. 8.

Schematic image of penetration behavior of particle into liquid.

静止浴に単一粒子を供給した場合,粒子の浴内への侵入可否は粒子および液浴の物性ならびに粒子の慣性力のみで決定される。一方で,微細粒子群を供給した場合は,粒子群およびガスが吹き込まれた凹み直上に堆積粒子層が形成され,上吹き粒子の侵入が阻害される。さらに,液浴に流速を付与した場合,凹み直上に堆積した粒子の一部が凹み外に移動し,堆積粒子量が低減する。これにより,上吹き粒子が浴内に侵入する際の抵抗が大幅に低減したため,流速を付与した条件の侵入可否条件が過去に報告された単一粒子の侵入条件にて整理できたと考えられる。

4・2 浴面での粒子堆積現象

4・2・1 堆積粒子量の計算方法

粒子の浴面での堆積現象を定量化するため,以下の手順にて浴面凹みに堆積した粒子量を求めた。粒子を上吹きした浴面近傍の模式図をFig.9に示す。なお,浴面に形成される凹みは,実際には円弧状の窪みであるが,今回は計算簡略化のため平坦な形状とし,その直上に粒子が堆積するモデルを仮定した。浴面凹みに堆積した粒子量は,式(8)~(9)により簡易的に概算できる。

  
Wp.cavity=πrc2hpρp(8)
  
rc=Htanθj(9)
Fig. 9.

Schematic image of depositing particles on liquid surface.

ここでWp.cavity:浴面凹みに堆積した粒子量(kg),rc:浴面の凹み半径(m),hp:浴面凹みに堆積した粒子層の厚み(m),H:ランス高さ(m),θj:ガスジェットの広がり角(rad)である。ガスジェットの広がり角は,Sumiら12)の実測値を参照し12°とした。粒子の堆積速度は,式(10)に示すように上吹き供給した粒子群,浴内に侵入した粒子,および液浴流動にて凹み外に移動した粒子の質量流速バランスで決定される。また,凹み外に移動した粒子の質量流速は,Fig.9に基づき幾何学的に式(11)で算出した。

  
dWp.cavity/dt=FPBFpenetrationFflow(10)
  
Fflow=2rcvlhpρp(11)

ここでFPB:上吹きした粒子群の質量流速(kg/s),Fpenetration:浴内に侵入した粒子の質量流速(kg/s),およびFflow:凹み外に移動した粒子の質量流速(kg/s)である。粒子群の供給が定常状態に到達した場合はdWp.cavity /dt=0となるため,式(10)を解くことでhpを求めることができる。

ところで,上記計算に必要となる浴内に侵入した粒子の質量流速Fpenetrationは実測することが極めて困難であったため,得られた浴内粒子の面積率の結果を用いて以下のように概算した。浴内に侵入・分散した粒子の模式図をFig.10に示す。本研究の実験条件範囲では画像撮影方向における粉体の投影面上の重なりは小さかったため,真空槽の中心断面に粒子を投影し,式(12)のように投影面の実面積に粒子の面積率を乗じ,単一粒子の断面積で除することで浴内に侵入した粒子の個数を算出した。更に,式(13)に示すように,得られた粒子個数に単一粒子の体積および密度を乗じることで,浴内に存在する粒子の質量に換算した。

  
 np=Dvachrp2(R100) (12)
  
Wp.vac=4/3πrp3npρp(13)
Fig. 10.

Schematic image of penetrating and dispersing particles into liquid.

ここで,np:浴内に存在する粒子個数,Dvac:真空槽断面積(m),h:浴深(m),R:粒子面積率(%),およびWp.vac:浴内に存在する粒子質量(kg)である。また,本実験では,浴内に侵入した粒子,および環流により真空槽外に排出された粒子の質量流速が釣り合った定常状態を撮影していることになる。そこで,粒子が浴内に均一に分散していると仮定し,環流により槽外に排出された水浴体積が真空槽内の下降管側液浴体積に占める割合に相当する粒子量が槽外に排出されるとした。定常状態では粒子の排出量と侵入量が同じと仮定し,上記体積割合に浴内に存在する粒子質量Wp.vacを乗じ,Fpenetrationを式(14)のように記述した。

  
Fpenetration=Wp.vac(8QπDvac2hρl)(14)

4・2・2 堆積粒子層の厚み

上述の手法で算出した堆積粒子層の厚みと上吹き粒子群の質量流速との関係をFig.11に示す。上吹きした粒子群質量流速の減少とともに堆積粒子層の厚みも低減していることがわかる。また,堆積粒子層の厚みは,粒子群質量流速の低減により層を構成する最小単位である単一粒子径に近づいた。このことから,本計算で得た堆積粒子層の厚みは,値のオーダーとして概ね妥当であったと考えられる。

Fig. 11.

The effect of FPB on hp.

4・2・3 粒子侵入量および堆積粉体量

計算で求めた粒子侵入量Fpenetrationおよび堆積粒子量Wp.cavityを,同一の粒子速度の水準にて粒子群質量流速で層別して液浴の平均流速を横軸で整理した結果をFig.12に示す。上吹きする粒子群質量流速を増加させると堆積粒子量は大きく増加し,これにより単位時間あたりの粒子侵入量の増加代は僅かであった。一方,液浴の平均流速を増加させることで粒子を凹みから移動させることができるため,堆積量を大幅に低減でき,粒子侵入量が飛躍的に増加してることがわかる。

Fig. 12.

The effect of vl on Fpenetration and Wp.cavity.

粒子侵入量Fpenetrationおよび堆積粒子量Wp.cavityを,同一の液浴平均流速の水準にて粒子群質量流速で層別して液浴の平均流速を横軸で整理した結果をFig.13に示す。粒子速度を増加させることでも堆積粒子量が低減し,粒子侵入量が増加した。これは,粒子の加速にて浴内への粒子侵入深さが増大し,これにより液浴の下降流に乗って浴内に分散し易くなったことで,浴面に再浮上する粒子量が低減したことに起因したと考えられる。

Fig. 13.

The effect of vp on Fpenetration and Wp.cavity.

4・2・4 粒子分散挙動に及ぼす浴面での粒子堆積の影響

上述した計算結果から,浴内への粒子分散挙動に及ぼす浴面での粒子堆積の影響を整理した。堆積粒子層を伴う条件における浴内への粒子分散挙動の模式図をFig.14に示す。液浴の流動がない場合は,凹み直上の堆積粒子層により上吹き粒子群の侵入が阻害され,浴深くまで粒子が侵入することができない。従って,粒子が浴内に侵入できたとしても,侵入粒子が浴面に速やかに再浮上し,粒子層に取込まれてしまう。

Fig. 14.

Schematic image of dispersion behavior of particles into liquid with particle layer.

一方で,液浴に流速を付与することで浴面に堆積した粒子が凹みから移動することに加え,一度侵入した粒子が液浴の下降流に乗り浴内に分散するため,堆積粒子量が大きく減少する。この状態から更に粒子速度を増加させると,粒子の浴内への侵入深さが増加するため浴内に分散しやすくなり,再浮上粉体量が更に低減して堆積粒子量が低減,ならびに浴内への粒子分散量が増加すると考えられる。

また,本研究における粒子侵入量の定量化により,実験で制御した3つの因子のうち液浴の平均流速の増加が最も粒子侵入量の改善に有効であることが示された。具体的には,液浴の平均流速を2倍とすることで,粒子侵入量を約3.5倍も増加させることが可能と判明した。

4・3 堆積粒子量と粒子侵入量との関係

浴内に侵入した粒子の質量流速と,堆積粒子量との関係をFig.15に示す。単位時間あたりの粒子侵入量は,同一の上吹き粒子群の質量流速下では堆積粒子量の抑制により粒子侵入量は単調に増加しており,液浴の流動状態や粒子供給条件によらず堆積粒子量でよく整理できた。また,同一の粒子群質量流速下で堆積粒子量を仮に半減させることができれば,粒子侵入量を約2倍と飛躍的に改善できる可能性が本結果より明らかとなった。

Fig. 15.

The relation between Wp.cavity and Fpenetration.

従来のRH脱硫プロセスでは,脱硫速度を向上させるために上吹き脱硫剤の質量流速を増加させる対策が取られてきた。しかしながら,脱硫剤の質量流速の増加は溶鋼表面での堆積脱硫剤量の増加を招くため,脱硫効率の大幅な悪化を招いていたと考えられる。これに対し,真空槽内溶鋼の平均流速の増加や脱硫剤粒子の加速等の操作により浴面の堆積粒子量を低減させることで,上吹き脱硫剤の質量流速を増加させることなく浴内への侵入量を大幅に改善できることがわかった。

5. 結言

本研究では,RH水モデルを用いて,吹付け粒子群の液浴内への侵入現象を解明することを目的として,流動を付与した液浴に微細粒子群を吹付けた際の粒子侵入・分散挙動に及ぼす吹付条件と液浴流動の影響を定量的に検討した。得られた知見を以下に示す。

(1)液浴に流動を付与した場合の粒子の侵入可否は既存の臨界侵入速度で整理できた。一方で,液浴に流速を付与しなかった条件では,浴面に堆積した粒子層に上吹き粒子群の侵入が阻害され,臨界侵入速度以上まで粒子を加速しても浴内に侵入しない条件が見られた。

(2)液浴の平均流速,粒子速度の増加,ならびに粒子群質量流速の低減により,粒子侵入を阻害している堆積粒子層の生成を抑制できること,これにより粒子の侵入量が大きく増加することを示した。また,粒子侵入量の定量化により,液浴の平均流速の増加が最も粒子侵入量の改善に有効であり,液浴の平均流速を2倍とすることで粒子侵入量を約3.5倍も増加させることが可能と判明した。

(3)堆積粒子量を低減させることで,上吹き粒子群の質量流速を増加させることなく浴内への粒子侵入量を数倍のオーダーで飛躍的に改善できること定量的に示した。

文献
 
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