2022 年 108 巻 3 号 p. 211-223
The structure of the oxide as a nucleus for intragranular ferrite formation in the low O weld metal and the formation mechanism of Mn depleted zone (MDZ) at the oxide/matrix interface were studied using liquid-tin quenched specimens at high-temperature conditions during laser welding of low carbon Ti added steel. At a high temperature of 1720 K, MDZ is formed around the complex oxides of (Ti,Mn)3O5, (Ti,Mn)2O3, and liquid phase oxides (containing Si, Mn, Ti, and S). The width of the MDZ increases with cooling, and at low temperatures (1275 K) MDZ is formed around the complex oxide consisting mainly of (Ti,Mn)2O3 with MnS and Si-Mn oxides. These MDZs are formed all around the complex oxides, regardless of the kind of oxide. The formation of MDZs is considered to promote the ferrite transformation around the oxides. The equilibrium Mn concentration in each of the oxide phases increases during the cooling process and the thermodynamically stable phase changes from (Ti,Mn)3O5 with a low equilibrium Mn concentration to (Ti,Mn)2O3 with a high equilibrium Mn concentration, which drives the diffusion of Mn from the matrix phase to the oxide. In this process, MDZs are formed all around the complex oxides.
低炭素鋼溶接金属組織の靱性向上を目的とした組織微細化には粒内フェライトの活用が有効である1,2)。そのため,粒内フェライトの生成については,粒内フェライトの核として有効な第二相3–7),添加元素の影響8,9),溶接方法の影響10)など,多くの関連研究がある。溶接金属の粒内フェライトは主に酸化物上に核生成することから,粒内フェライトの核生成に有効な酸化物を高密度に分散させることが金属組織の微細化には効果的である。これまで溶接金属の粒内フェライト核として有効な酸化物はGlaxite(MnO·Al2O3)3,11,12),TiO3,13),MnTi2O414)といったMn,Tiを含む酸化物が知られており,これらの酸化物はフェライトと格子整合性が良好であることでフェライトが核生成しやすいと言われている。一方,溶接熱影響部においてはMnSが生成する酸化物の周囲でMn濃度の低下領域であるMn欠乏層(Mn depleted zone,以下MDZと記す)が生じ,粒内フェライトが生成しやすいことが知られている15–19)。このようにフェライトと格子整合性が良好な酸化物やMDZの形成を促進する酸化物を生成させることが,低炭素鋼溶接部の組織微細化には重要であると考えられる。
低炭素鋼溶接金属の粒内フェライト生成に関する研究は,主にO濃度が200 - 1000 ppmのアーク溶接金属中の粒内フェライト生成に関するものがほとんどである。一方,電子ビーム溶接金属やレーザ溶接金属では,O濃度がアーク溶接金属の1/10以下となるため,このような低O濃度の溶接金属では,一般的に酸化物を核に生成する粒内フェライトを利用した金属組織の微細化は難しいとされてきた。しかしながら,著者らは電子ビーム溶接の低O濃度の溶接金属中でのSやSiが非晶質Si-Mn酸化物上でのMnSの生成を促進し,これが粒内フェライト生成を促進することを示した20)。また,Tiは低O濃度の溶接金属中にTi酸化物を生成させ,粒内フェライト生成の促進に有効であることを報告している21,22)。これらの低O濃度の溶接金属中での粒内フェライトの生成については,酸化物/母相界面で顕著なMDZが形成し,このMDZによって粒内フェライトの生成が促進されると考えられている19,21)。
このような粒内フェライトの生成を促進するMDZの形成は,大きく分けて2つの機構が考えられている。一つは酸化物上にMnSやTiNなどが生成し,それに伴いこれらの複合酸化物に母相からMnが拡散し,複合酸化物の周囲にMDZが生成するという機構であり,もう一つは,MnSやTiNの生成,成長に関係なく,母相から酸化物へMnが拡散し,MDZが形成するという機構である。前者の機構において重要であるMnSが生成しやすい酸化物としてはTi2O3を含む複合酸化物15,23),Si-Mn酸化物16,18,20),Al2O317)が知られており,これらのうちTi酸化物やSi-Mn酸化物は,母相の固相線直下の高温で酸化物融体となっており,その酸化物融体がSを多く含有しているため,MnSの有効な核生成サイトとなる24–26)。このような酸化物上にMnSが生成,成長する際,Mnが母相からMnSへ拡散し,酸化物/母相界面でMDZが形成すると考えられている24)。一方,Ti酸化物上へTiNが生成する際は,Ti酸化物中のMn固溶量が増加してMnが母相からTi酸化物へ拡散し,MDZの生成を促進すると考えられている27)。後者の機構においては,Ti酸化物28,29)やSi-Mn酸化物30)の周囲では,酸化物上にMnSやTiNが存在しなくてもMDZが生じることが確認されている。さらに,Kosekiらは熱力学計算により冷却過程の母相中で安定相がMullite(2SiO2·3Al2O3)からGalaxite(MnO·Al2O3)に変化する際,Galaxiteの形成には母相からGalaxiteへMnが拡散する必要があり,このときMDZが形成すると考察している31)。このように冷却中の酸化物の安定相の変化に伴い,母相から酸化物へMnが拡散する過程でMDZが形成する可能性が指摘されているが,高温での酸化物の状態を実験的に確認することは難しく,詳細な機構に関しては不明な点が多い。
著者らは20,22),これまで電子ビーム溶接の低O濃度の溶接金属中において,酸化物/母相界面で生じたMDZが粒内フェライトの生成を促進させることを報告してきたが,MDZの形成挙動については明かではなかった。そこで本報では,低O濃度の溶接金属中の酸化物/母相界面で生じるMDZの形成機構を明らかにすることを目的として,低炭素Ti添加鋼を用いて溶接時の高温状態を急冷凍結し,酸化物の構造および酸化物/母相界面のMn濃度分布を詳細に調査した。これに加え母相と酸化物の熱力学計算による安定相の変化も考慮し,低O濃度の溶接金属中のMDZ形成機構を検討した。なお,本報での低O濃度の溶接金属の検討にはレーザ溶接法を適用し,これまでの検討に使用してきた電子ビーム溶接と同様のビード形状,冷却速度および溶接金属のO濃度となるように,レーザ溶接法の溶接条件を調整した。
供試鋼の化学成分はFe - 0.08 mass% C - 0.3 mass% Si - 2.0 mass% Mn – 0.0008 mass% S - 0.01 mass% Ti - 0.004 mass% N(以下,単純に%と表記する)である。供試鋼は真空溶解した20 kg鋳片を加熱温度1373 K,最終圧延温度1128 Kで熱間圧延して板厚15 mmに仕上げた。長さ120 mm,幅50 mm,板厚12 mmの試験片を切り出し,ファイバーレーザ(波長 1070 nm)を用いてフィラーワイヤーを使用せず溶接長約80 mmのビードオン溶接を行った。レーザ溶接は出力:3 kW,溶接速度:0.2 m/min,焦点長さ:300 mm,焦点位置:試料表面から上方に5 mm,シールドガス:Ar - 2%O2,流量20 L/minの条件で実施した。溶接金属のO濃度は44 ppmであった。レーザ溶接の溶融池後端部の温度測定は二色測温法を用いた32)。温度測定は溶接面の鉛直方向から実施した。溶接金属の急冷凍結には,液体Sn急冷法を用いた33–35)。トーチ後方・直上より約600Kで溶融したSnをレーザ溶接終了と同時に素早く大量に注ぎ,凝固中および冷却中の溶接金属を急冷凍結した。なお,液体Sn急冷法の冷却速度は104 K/s以上と推定される33)。
二色測温法により測定された溶融池後端部の温度測定結果をFig.1(a)に示す。なお,Fig.1(a)の横軸は溶融池後端の固相/液相界面(以下,S/L interfaceと示す)からの距離を示す。また,溶融池後端のS/L interfaceからの距離と温度の関係は,式(1)で表される。なおS/L interfaceのFactSageTM(Ver.7.3,データセットはFS stel,FT oxid)36)で計算した液相線温度(1789 K)とした。
(1) |
Ts:表面温度(K),d:S/L interfaceからの距離(mm)
(a) Relationship between distance from L/S interface and temperature in laser weld joint, and (b) sampling position of M1 and M2 in liquid-tin quenched specimen.
金属組織観察用試験片の採取位置はFig.1(b)に示すように,急冷凍結時の温度が液相線温度(1789 K)直下である高温部(M1)とオーステナイト/フェライト変態点(Ae3:1090 K)直上でフェライト析出前である低温部(M2),および室温まで冷却された部位(以下,室温部と示す)の3箇所とした。高温部(M1)の採取位置は式(1)により温度が1720 KとなるS/L interfaceから0.5 mmとし,低温部(M2)の採取位置は式(1)により温度が1275 KとなるS/L interfaceから3.7 mmの位置とした。また,室温部はS/L interfaceから十分離れた位置から試料を採取した。
溶接金属の組織観察は全て試料表面側から実施した。光学顕微鏡用試料は表面を鏡面研磨し,ナイタールエッチングした後に観察した。溶接金属中の酸化物の観察は電界放出型透過型電子顕微鏡(FE-TEM)を用いた。試料作製にはレプリカ法(Cuメッシュ)とFocused Ion Beam(FIB)法を用いた。化学組成はTEMに付属のエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy:EDS)により測定した。
室温部のミクロ組織をFig.2に示す。塊状のベイナイトと粒内フェライト(矢印)が認められる。粒内フェライトはアスペクト比の比較的大きな針状で,短径が1 - 3 μm,長径が10 μm程度であり,ベイナイトよりも微細である。
Optical micrograph of laser weld metal at room temperature. (Online version in color.)
溶接金属中で観察される代表的な酸化物のTEM観察結果をFig.3に示す。Fig.3(a)の明視野像では酸化物の左側外縁部にコントラストの異なる部分が存在しており複合酸化物であることが示唆される。Fig.3(b)に示す点1のEDS結果からはTi,Mn,Oが検出され,電子線回折像からTi2O3(Trigonal)と同定された。Mnを含有しておりMnTiO3(Trigonal)の可能性もあるが,結晶構造がほぼ同じで電子回折像からは区別が難しいため,以下ではこのようなMnを含んだTi2O3を(Ti,Mn)2O3と表記する。Fig.3(c)に示す点2のEDS結果からはSi,Oが高く検出され電子回折像はハローパターンを示していることから,点2は非晶質Si酸化物であることがわかる。その他の酸化物も同様の複合酸化物であることが確認された。このようにレーザ溶接金属の室温部では,微細な粒内フェライトが生成し,酸化物として(Ti,Mn)2O3と非晶質Si酸化物の複合酸化物が存在していることから,これらの複合酸化物が粒内フェライトの核生成を促進していることが推察できる。なお,このような金属組織や酸化物は,これまで著者らが検討してきた電子ビーム溶接金属における低O濃度の溶接金属で観察される金属組織や酸化物とほぼ同じであることから20,22),粒内フェライトの生成機構も同じであると考えられる。
TEM image and analysis of the oxide in laser weld metal at room temperature (a) bright field image, (b) diffraction pattern of point 1, and (c) diffraction pattern of point 2. (Online version in color.)
Fig.4に高温部(1720 K)のM1位置で確認された酸化物のTEM観察結果を示す。Fig.4(a)に示す明視野像では酸化物内部の回折コントラストが複雑な形態を呈しており,複数の結晶構造が存在していることが示唆される。Fig.4(b)に示す点1のEDS結果ではTi,Mn,Oが検出されており,電子線回折像からTi3O5(Orthorhombic)と同定された。以下ではこのようなMnを含むTi3O5を(Ti,Mn)3O5と表記する。Fig.4(c)に示す点2のEDS結果では点1と同様にTi,Mn,Oが検出されているが,電子線回折像から点2は(Ti,Mn)2O3(Trigonal)と同定された。TiとMnの検出量の比では(Ti,Mn)3O5がMn/Ti=0.12に対して(Ti,Mn)2O3はMn/Ti=0.41であり,(Ti,Mn)2O3の方が明らかにMn濃度が高い。Fig.4(d)に示す点3のEDS結果ではSi,Mn,Oが検出され,さらに微量のTi,Al,Sが検出されている。電子線回折像はハローパターンを示しており,点3は非晶質Si-Mn酸化物(微量のTi,Al,Sを含む)であることがわかる。このように高温部(1720 K)で確認される酸化物の構成は,Fig.3で示した室温部で確認された酸化物の構成とは明かに異なる。ただし,高温部で観察されるその他の酸化物も含めて,MnSは観察されず,また母相と格子整合性が良いTiOなどの酸化物は観察されなかった。
TEM image and analysis of oxide in M1 specimen. (a) Bright field image, (b) EDS analysis and diffraction pattern of point 1, (c) EDS analysis and diffraction pattern of point 2, and (d) EDS analysis and diffraction pattern of point 3. (Online version in color.)
Fig.5に元素マッピング結果を示す。Oは概ね酸化物全体に分布している。Siは酸化物中に不定形に分布している。TiはSiの検出領域以外の概ね酸化物全体で検出されている。Siは(Ti,Mn)3O5や(Ti,Mn)2O3には固溶しないことから,Siの検出領域が非晶質Si-Mn酸化物に対応し,それ以外はTi酸化物であると考えられる。酸化物左側外縁部にはSが検出されており,非晶質Si-Mn酸化物の一部にはSが含まれている。Mnは酸化物の左上の領域で検出量が低く,右下の領域で比較的高く検出されている。Fig.4の結果も合せて考えると,酸化物の左上部分にあたるTiの検出量が高くMnの検出量が低い領域で非晶質Si-Mn酸化物以外の領域が(Ti,Mn)3O5,酸化物の右下部分でTiとMnの検出量が高く非晶質Si-Mn酸化物以外の領域が(Ti,Mn)2O3であると考えられる。以上より,高温部(1720 K)では(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,非晶質Si-Mn酸化物(微量のTi,Al,Sを含む)から構成される複合酸化物が存在している。
TEM image and EDS elemental mapping of oxide in M1 specimen. (Online version in color.)
Fig.5で元素分布を示した高温部(1720 K)の複合酸化物の周囲で測定した酸化物/母相界面近傍のMn濃度分布をFig.6に示す。Mn濃度の測定はFig.6(a)に示す5箇所で行った。線分A,線分Bの酸化物側は(Ti,Mn)3O5,線分C,線分Dの酸化物側は(Ti,Mn)2O3,線分Eの酸化物側は非晶質Si-Mn酸化物である。いずれの位置においてもMnSは認められなかった。Fig.6(b)に各測定箇所におけるMn濃度分布を示す。Fig.6(b)において酸化物/母相の界面が横軸0であり,横軸+側は母相側,−側は酸化物側の値である。線分A – EのMn濃度はいずれも似たような分布を示しており,固相線温度直下にも関わらず,既に明瞭なMDZが形成している。酸化物/母相の界面から母相側へ20 nm付近でMn濃度が最も低下し約1.0 mol%となる。酸化物/母相界面から離れるにつれてMn濃度は上昇し,酸化物/母相界面から80 nm付近でMn濃度の上昇が止まり,Mn濃度は2.2 mol%程度で一定となる。一定となるMn濃度2.2 mol%を母相のMn濃度として,Mn濃度の低下範囲をMDZ幅と考えると,高温部(1720 K)のMDZ幅は80 nm程度である。一方,TiやSiはMnのように酸化物/母相界面付近での濃度低下は確認されなかった。このように高温部(1720 K)では酸化物/母相界面の母相側のMn濃度は,母相のMn濃度よりも約1.2 mol%低下し,幅80 nm程度のMDZが認められる。また,これらのMDZは酸化物の種類によらず,複合酸化物の周囲全体に形成している。
Mn contents adjacent to oxide in M1 specimen. (a) Bright field image and (b) distributions of Mn contents. (Online version in color.)
Fig.7に低温部(1275 K)のM2位置で確認された酸化物のTEM観察結果を示す。Fig.7(a)に示す明視野像ではいくつかのコントラストに分かれており,複合酸化物であることが示唆される。Fig.7(b)に示すようにEDS結果ではTi,Mn,Oが検出され,電子線回折像から点1は(Ti,Mn)2O3(Trigonal)である。Fig.7(c)に示す点2は,電子回折像により点1と同じ(Ti,Mn)2O3(Trigonal)であるが,EDS結果では微量にSiが検出されており,周囲とのコントラストの違いは試料表層部に非晶質Si酸化物が存在しているためと推察される。一方,酸化物の右側の試料表面に近い部分でコントラストが異なるのはFIB試料作製時にダメージを受けたためであり,酸化物相と化学成分は隣接するFig.7(b)と同じであった。Fig.7(d)に示すEDS結果と電子線回折像から点3はMnS(Cubic)と同定された。供試鋼のS濃度は極めて低いが,このようにTi酸化物に微量のMnSが生成する場合がしばしば認められる。以上より低温部(1275 K)の酸化物は(Ti,Mn)2O3を主体に微量のMnSや非晶質Si酸化物が生成した複合酸化物であることが確認された。すなわち,低温部(1275 K)で確認される酸化物の構成は,Fig.4で示した高温部の酸化物の構成とは異なっており,Fig.3で示した室温部の酸化物の構成に近くなっている。また,低温部(1275 K)で観察されるその他の酸化物も含めて,母相と格子整合性が良いTiOなどの酸化物は確認されなかった。
TEM image and analysis of oxide in M2 specimen. (a) Bright field image, (b) EDS analysis and diffraction pattern of point 1, (c) EDS analysis and diffraction pattern of point 2 and (d) EDS analysis and diffraction pattern of point 3. (Online version in color.)
Fig.8に低温部(1275 K)の複合酸化物の周囲で測定した酸化物/母相界面近傍のMn濃度分布を示す。Mn濃度の測定はFig.8(a)に示す3箇所で行った。線分A,線分Bの界面付近の酸化物は(Ti,Mn)2O3,線分Cの界面付近にはMnSが存在する。Fig.8(b)に各測定箇所におけるMn濃度分布を示す。Fig.6(b)と同様に酸化物/母相の界面が横軸0である。いずれの測定位置においても酸化物/母相界面の母相側20 nm付近でMn濃度が最も低下し,Mn濃度は1.0 mol%程度となっており,母相のMn濃度よりも約1.3 mol%低下している。また,酸化物/母相界面から離れるにつれてMn濃度は上昇し,酸化物/母相界面から約200 nm付近で母相のMn濃度となることから,低温部(1275 K)のMDZの幅は約200 nmであり,高温部(1720 K)のMDZの幅に比べて遙かに大きくなっている。さらに高温部(1720 K)と同様に低温部(1275 K)のMDZは酸化物の種類によらず,複合酸化物の周囲全体に形成している。
Mn contents adjacent to oxide in M2 specimen. (a) Bright field image and (b) distributions of Mn contents. (Online version in color.)
溶接金属中で生成する酸化物の形成過程を推測するため熱力学計算を実施した。計算にはFactSageTM(Ver.7.3,データセットはFS stel,FT oxid)36)を用いた。Fig.9に溶接金属中の安定相を計算した結果を示す。成分系はFe - 0.08% C - 0.3% Si - 2.0% Mn - 0.001% S - 0.01% Ti - 0.01% Oである。なお,母材や溶接金属のO濃度に相当する0.001% Oで計算した場合,Ti酸化物とMnSが生成したが,Si-Mn酸化物は生成せず,Fig.3に示した溶接金属中の酸化物と一致しなかった。熱力学計算の目的は冷却過程で形成する酸化物相の種類とその生成順序を把握することであるため,本研究においては実際の観察結果に近い酸化物相を再現可能なO濃度である0.01%で計算した。Fig.9(a)は各安定相の生成量と温度の関係を示しており,横軸は温度(K),縦軸は各相の生成量(mole)である。図中に示すTL,TSはそれぞれ母相の液相線温度と固相線温度である。TL(1789 K)より低温ではSlagが安定相である。Slagは液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)であり1450 K付近で凝固し,それより低温側ではMnSiO3とMnSが安定相になる。一方,Ti酸化物に関しては1742 Kで(Ti,Mn)2O3が一時的に安定化するが,1736 Kですぐに消失し,1736 Kでは(Ti,Mn)3O5が安定相となる。1700 K付近のTi酸化物の安定相は(Ti,Mn)3O5であり,温度の低下に伴い生成量は増加する。温度の低下に伴い1072 Kでは(Ti,Mn)3O5に代わり(Ti,Mn)2O3が安定相となる。Fig.9(b)に各相に含まれるMn濃度(mol %)と温度(K)との関係を示す。1700 K付近でのSlagの平衡Mn濃度は16 mol%,(Ti,Mn)3O5の平衡Mn濃度は3 mol%であり,いずれも母相の平衡Mn濃度である2 mol%よりも高い。これらの酸化物は温度の低下とともに平衡Mn濃度が増加する。低温で安定相となる(Ti,Mn)2O3の平衡Mn濃度は19 mol%であり,(Ti,Mn)3O5よりも遙かに高濃度にMnを含有する。
Calculated contents of stable phases and Mn contents of each phase in weld metal. (a) Temperature variations of the content of each stable phase and (b) temperature variations of the Mn content of each stable phase. (Online version in color.)
Fig.4に示した高温部(1720 K)の観察結果より,複合酸化物は(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,非晶質Si-Mn酸化物(微量のTi,Al,Sを含む)から構成されている。これにFig.9の熱力学計算結果を考慮して1720 Kの液体Sn急冷開始時点での複合酸化物の状態を検討する。最も高温ではSlagが存在し,冷却過程で1742 Kで(Ti,Mn)2O3が一時的に生成するがすぐに消失して1736 Kで(Ti,Mn)3O5が安定となる。その後(Ti,Mn)3O5が成長し,1479 KでMnSが生成,1455 KでSlagが凝固してSi-Mn酸化物となる。さらに(Ti,Mn)3O5は1072 Kで(Ti,Mn)2O3に変化する。以上より1720 Kの液体Sn急冷開始時点ではSlagと(Ti,Mn)3O5が存在していたと考えられる。Slagは急冷過程で凝固して非晶質Si-Mn酸化物が生成したと考えられる。一方,(Ti,Mn)3O5は通常の溶接金属では(Ti,Mn)2O3へ変化するため室温でこれほど広い領域では認められない。これは急冷によりMnの拡散が抑制されてMn濃度が上昇せず,1720 Kの状態のまま(Ti,Mn)3O5が残存したと考えられる。
次に(Ti,Mn)2O3の1720 Kでの状態を検討する。Fig.4(c)の点2で示す(Ti,Mn)2O3が認められた領域は,Fig.4(b)の点1で示す(Ti,Mn)3O5よりもMnが明らかに高く検出されているため,液体Sn急冷開始時点の1720 Kで(Ti,Mn)3O5とは別の相として存在していた可能性が高い。したがって,1720 Kで同領域は,Slagとして存在しており急冷過程でSiとTiが分配して非晶質Si-Mn酸化物と(Ti,Mn)2O3が生成した可能性と,(Ti,Mn)2O3として既に存在していた可能性の2つが考えられる。前者の可能性については急冷過程でSiやTiが分配可能なのか,今後さらに検討する必要がある。後者の可能性については,Fig.9において一時的ではあるが(Ti,Mn)3O5よりも高温で(Ti,Mn)2O3が安定相となるように,Ti,Mn,Oバランスと温度により(Ti,Mn)3O5と(Ti,Mn)2O3の安定性が複雑に変化することが知られている37–39)。また低Oポテンシャルの場合Ti /(Mn+Ti)のモル比により1773 K超でも(Ti,Mn)2O3が安定となる場合もある40,41)。これらのことから,本研究のような低Oの溶接金属中では1720 Kで(Ti,Mn)2O3が存在していた可能性が考えられる。
低温部(1275 K)ではFig.7で示すように(Ti,Mn)2O3を主体に微量のMnSや非晶質Si酸化物が認められた。計算上で安定相である(Ti,Mn)3O5が存在しないのは,上述したように低Oでは熱力学計算結果よりも高温で(Ti,Mn)2O3が安定相となりやすいためであると考えられる。またMnSは液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)中に含まれるMnとSが析出したものと考えられる。MnSはFig.9(a)に示すように液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)の凝固温度より僅かに高温で生成するため,MnSの生成により非晶質酸化物中のMn濃度が低下し,残部が非晶質Si酸化物となると思われる。
以上をまとめると,1720 Kでは(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)の複合酸化物が存在しており,1275 Kでは(Ti,Mn)2O3,MnS,非晶質Si酸化物の複合酸化物が存在すると推察される。各相は母相よりも高濃度にMnを含有しており,冷却過程において平衡Mn濃度が増加する。加えて1720 Kから1275 Kへの冷却過程においては主要なTi酸化物の安定相が(Ti,Mn)3O5から(Ti,Mn)2O3へ変化し,これに伴いTi酸化物の平衡Mn濃度は増加する。
4・2 溶接金属中のMn欠乏層形成過程Fig.6に示したように高温部(1720 K)では5箇所の測定位置のいずれにおいても幅80 nm程度のMDZが同様に観察された。すなわち,固相線以下での冷却過程で酸化物の種類に関係なく複合酸化物の周囲全体にMDZが形成したと考えられる。各測定位置には(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,非晶質酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)が存在しており,いずれの酸化物もFig.9(b)に示すように冷却過程で平衡Mn濃度が増加することから,冷却過程で母相から各酸化物へMnが拡散し,酸化物/母相界面の母相側にMDZが形成したと考えられる。それぞれ別の研究となるが(Ti,Mn)3O542),(Ti,Mn)2O322,28,29,43–45),非晶質Si-Mn酸化物20,30)の周囲で生じるMDZが報告されていることからも,これらの酸化物が複合した高温部(1720 K)の複合酸化物の周囲においても同様にMDZが形成したと考えられる。なお,母相に隣接する酸化物の種類によりMn濃度分布の差が殆ど無い理由としては,1720 K付近の高温域ではMnの拡散速度も比較的速く,また次節で示すようにMDZの形成は母相のMn拡散律則と考えられるため酸化物の平衡Mn濃度の影響が生じにくいと推察される。
低温部(1275 K)ではFig.8に示したように幅200 nm程度の明瞭なMDZが観察された。すなわち1720 Kから1275 Kの冷却中にMDZ幅は拡大した。ところで酸化物上のMnS成長によりMDZが形成する機構では,母相からMnSへMnが拡散し酸化物/母相界面の母相側にMDZが形成する24)。MnSの成長が停止すると,母相からMnSへのMnの拡散も停止するが,その後,母相からMDZへのMnの拡散は継続するため酸化物/母相界面の母相側のMn濃度は平衡濃度に近づきMDZは次第に消滅していく17)。このことから,MDZ幅が拡大するためには,1720 Kから1275 Kの冷却過程で母相から酸化物へMnの拡散が継続する必要がある。1720 K付近で大きな割合を占める(Ti,Mn)3O5の平衡Mn濃度は1500 K以下では殆ど増加しない,またその後生成するMnSや非晶質Si酸化物は複合酸化物における割合が僅かである。一方,Oyaらなどの実験により(Ti,Mn)2O3中の平衡Mn濃度は低温で増加することが確認されている43)。加えて1720 Kで存在する平衡Mn濃度の低い(Ti,Mn)3O5が,1275 Kへの冷却過程で減少し,その代わりに平衡Mn濃度の多い(Ti,Mn)2O3が増加する。これらことから,1720 Kから1275 Kへの冷却過程においては,母相から平衡Mn濃度が高い(Ti,Mn)2O3への拡散が継続し,MDZが形成されると推察される38)。このように(Ti,Mn)3O5から(Ti,Mn)2O3への相変化もMDZの形成を促進すると考えられる。以上のことから,1720 Kから1275 Kへの冷却過程でMDZ幅が拡大した理由は,平衡Mn濃度の高い(Ti,Mn)2O3の生成量が増すことにより,酸化物/母相界面で母相から複合酸化物への多量のMnの拡散が生じたためと考えられる。
4・3 冷却過程でのMn欠乏層形成の計算前節の考察より,MDZは酸化物上のMnSの生成を必ずしも必要とせず,母相から酸化物へMnの拡散が進むことにより形成されると考えられる。Shigesatoらは母相からMnSへのMn拡散によるMDZの形成を計算し,1373 K,100 s保持時にオーステナイト中の初期Mn濃度1.5 mass%に対して母相/MnS界面でのMn濃度の低下量が0.3 mass%に達することを示しており17),酸化物上のMnS生成により生じるMDZについてはいくつかの計算例が存在する15,16)。一方,本研究において主なMDZ形成機構と考えられるMnSの生成が無い場合に酸化物/母相界面で生じるMDZについては計算による検証例がない。そこで本節では,母相から(Ti,Mn)2O3へのMnの拡散を仮定した数値計算により酸化物/母相界面でのMDZ形成可否について検討した。Fig.10(a)に計算モデルの概略図を示す。なお計算ではモデルの単純化のため下記の仮定を行った。
Calculation of Mn contents in matrix (γ) adjacent to (Ti,Mn)2O3. (a) Model for calculation and (b) calculated Mn contents in matrix continuously cooled at 20 K/s. (Online version in color.)
(a)酸化物は半径0.5 µmの球とし,オーステナイト(γ)中に均一に分散していると仮定する。
(b)酸化物の核生成,成長は考えない。厳密には冷却過程でオーステナイト中O濃度は低下して酸化物が成長するが,10-6 mol%オーダーのO濃度変化であるためこのような仮定とする。すなわち酸化物/オーステナイト界面の位置は一定であり,冷却中の酸化物中のMn濃度変化のみを考える。
(c)酸化物/オーステナイト界面では常に平衡条件が成立するものと仮定する。
(d)酸化物の組成変化に起因するMnの濃度勾配は粒子半径方向,すなわち酸化物中心を原点と考えたときの球座標表示における法線方向のみにあるとする。
(e)Mnの拡散は上記方向に対する拡散方程式を界面組成で与えられる境界条件を考慮しながら差分法を用いて数値計算する。
(f)オーステナイト中でのTiは常に平衡状態に保たれていると仮定する。観察結果では酸化物/オーステナイト界面でTiの欠乏層は形成されていないことからこのような仮定は妥当である。
TiとMnのオーステナイト中での平衡固溶量は(Ti,Mn)2O3/オーステナイト間のMn分配挙動を実験的に示したOyaらの研究46)を参考に式(2),式(3)で示す溶解度積で計算した。
(2) |
(3) |
T:絶対温度(K),XγTi:オーステナイト中のTi濃度(mol %),XγMn:オーステナイト中のMn濃度(mol %),X2Mn0.5Ti0.5O1.5:(Ti,Mn)2O3の濃度(mol %)
オーステナイト中のTiとMnの拡散係数は以下の式(4)47),式(5)47)とする。
(4) |
(5) |
DγTi:オーステナイト中のTiの拡散係数(m2/s),DγMn:オーステナイト中のMnの拡散係数(m2/s),R:ガス定数(J/Mol・K)
オーステナイト中のMn濃度の変化は式(6)に示す球座標法線方向の拡散方程式により計算した。
(6) |
t:時間(s),r:法線方向の距離(μm)
式(6)をtについて前進差分を取り,rについて中心差分をとると式(7)に示す差分形式にに展開できる。
(7) |
Δt:時間の刻み量(s),Δr:r方向の刻み量(μm)
初期条件を1773 K,2 mass% Mn-0.01 mass% Ti,Δr=0.03,Δt=0.015とし,1273 Kまで連続冷却したときのオーステナイト中のMn濃度を計算した。冷却速度はレーザ溶接金属の冷却速度に近い20 K/sとした。Fig.10(b)に1773 Kから各温度に連続冷却した場合の計算結果を示す。縦軸はオーステナイト中のMn濃度(mol %),横軸は(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面を原点としてオーステナイト側への距離(μm)を示す。(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面のMn濃度は1773 Kでの2.03 mol%から100 K低下した1673 Kでは1.95 mol%に低下する。温度が低下するのに伴い,(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面のMn濃度は徐々に低下し,Mn濃度が低下する領域がオーステナイト側に拡大していく。1273 Kでは(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面のMn濃度は1.63 mol%まで低下し,MDZ幅は1 μm近くに達する。上記仮定に基づく拡散計算により(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面で生じるMDZが冷却過程において発達する様子が再現できた。すなわち,冷却過程の溶接金属中において母相から酸化物へMnが拡散し,MDZが形成するというMDZ形成機構の妥当性が確認できたといえる。なお,Fig.6の高温部(1720 K)で観察されたMDZおよびFig.8の低温部(1275 K)で観察されたMDZに比べて,Fig.10(b)に示す計算結果ではMnの低下量は小さく,MDZの幅は大きく算出されている。この原因として液体Sn急冷凍結法の影響も考えられるが,定量的な精度の向上には今回の計算では考慮していない(Ti,Mn)3O5や液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)による効果を取り入れて計算する必要があると思われる。
以上の考察をもとにして,本研究での低O濃度の溶接金属の冷却過程で考えられる酸化物とMDZの形成過程の模式図をFig.11に示す。1700 K付近では(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)が存在する。各酸化物の平衡Mn濃度は冷却過程で増加するため母相から酸化物へMnの拡散が進み,これらの酸化物の周囲でMDZが形成される。1700 K以下でも酸化物の平衡Mn濃度は増加するため,母相から酸化物へMnの拡散がさらに進む。これに加えて,冷却過程では(Ti,Mn)3O5は(Ti,Mn)2O3へ変化する。(Ti,Mn)3O5の平衡Mn濃度は4 mol%程度であるのに対し,(Ti,Mn)2O3の平衡Mn濃度は約20 mol%である。したがって(Ti,Mn)3O5からに(Ti,Mn)2O3に変化する過程で母相から酸化物へのMnの拡散がさらに促進される。これに伴いMDZの形成が一層進むと考えられる。このように複合酸化物を構成する各酸化物相の平衡Mn濃度が冷却過程で増加すること,かつ熱力学的に安定な相が平衡Mn濃度の低い(Ti,Mn)3O5から平衡Mn濃度の高い(Ti,Mn)2O3に変化することにより,これを駆動力として母相から酸化物へMnの拡散が生じてMDZが形成される。なお著者らがこれまで検討してきた電子ビーム溶接の低O濃度の溶接金属で形成されるMDZ20,22)も本研究と同様の機構により生じていると考えられる。
Schematic illustration of formation process of oxide and Mn depletion behaviour in the oxide/matrix interface. (Online version in color.)
溶接時の高温状態を急冷凍結し,低O濃度の溶接金属中の酸化物の構造および酸化物/母相界面で生じるMDZの形成機構を調査した結果,以下の結論を得た。
(1)急冷凍結試験片の観察結果から,固相線直下の1720 Kから急冷凍結された部位では(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,非晶質Si-Mn酸化物(微量のTi,Al,Sを含む)から構成される複合酸化物が確認され,オーステナイト/フェライト変態前の1275 Kから急冷凍結された部位では(Ti,Mn)2O3を主体に微量のMnSや非晶質Si酸化物から構成される複合酸化物が確認された。一方,母相と格子整合性が良好なTiOなどの酸化物は確認されなかった。これらの観察結果と熱力学計算の結果から,1720 Kでは(Ti,Mn)3O5,(Ti,Mn)2O3,液相酸化物(Si,Mn,Ti,Sを含有)の複合酸化物が存在し,1275 Kでは(Ti,Mn)2O3,MnS,非晶質Si酸化物の複合酸化物が存在すると推察される。
(2)1720 Kの高温部では酸化物/母相界面の母相側に幅80 nm程度のMDZが形成される。冷却に伴いMDZの幅は拡大し,1275 Kの低温部では幅200 nm程度のMDZが形成される。これらのMDZは酸化物の種類によらず,複合酸化物の周囲全体に形成される。このMDZの形成により酸化物周囲のフェライト変態が促進されると考えられる。
(3)複合酸化物を構成する各酸化物相の平衡Mn濃度が冷却過程で増加すること,かつ,熱力学的に安定な相が平衡Mn濃度の低い(Ti,Mn)3O5から平衡Mn濃度の高い(Ti,Mn)2O3に変化することにより,これを駆動力として母相から酸化物へMnの拡散が生じ,複合酸化物の周囲全体にMDZが形成されると考えられる。
(4) MnSの生成が無い場合に酸化物/母相界面で生じるMDZについて,冷却過程での(Ti,Mn)2O3中のMn濃度の増加ならびに(Ti,Mn)2O3/オーステナイト界面でのMnの拡散律則を仮定した拡散計算によりMDZの形成過程が再現できた。