Tetsu-to-Hagane
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Special Issue on: Temperature Production of Clean Alloyed Steel
Preface to the Special Issue “High Temperature Production of Clean Alloyed Steel”
Takahiro Miki
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2022 Volume 108 Issue 8 Pages 439

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合金鋼は優れた特性を有し,幅広い鉄鋼材料に使用されており,例えばステンレス,耐熱鋼,ハイテン材,工具鋼などが挙げられる。これらは我が国にとって重要なプロダクツであり,安定して不純物・欠陥の少ない製品を供給できることが我が国の大きな強みとなる。合金鋼を溶製する際の挙動は,普通鋼の溶製と異なることが多く,高清浄度の合金鋼を溶製するためには,精錬工程中の諸現象を理解し,プロセスを制御することが必要である。

普通鋼に比べ,合金鋼中H, O, N, C, P, S等不純物の活量係数が小さいため不純物除去は難しく,例えば,脱炭を行う際,同一C, O濃度条件下では13%Cr鋼のCO分圧は普通鋼の1/10である。また,Cr含有鋼溶製時のスラグ流動性,溶融状態等の影響は大きいが,基本となるCaO-SiO2-CrOx系状態図は酸素分圧によって大きく変化することが知られている。

普通鋼と比較すると生産量が少なく成分系が複雑となり,共通のプラットフォームを構築しにくいことから,高合金鋼・特殊鋼に関する日本鉄鋼協会における研究会活動・討論会活動は,1994年から2016年の間,行われてこなかった。このような背景のもと,2017年3月より,「スラグ・介在物制御による高清浄度クロム鋼溶製」研究会が設立され,3年間の活動を行った。本研究会では,高清浄度合金鋼溶製のキーとなるスラグ,介在物をコントロールするために必要なデータを実験的に求めた。共通プラットフォーム上での議論を行い,汎用性があるデータを収集し,経験的に行われていた操業を理論的に最適化するための指針を示すことができた。また,品質要求が益々厳格化された場合にも,すみやかに対応することができ,各企業のみならず我が国全体にとってインパクトが非常に大きい成果をあげることができた。

本特集号では,精錬研究者が団結して,高清浄度高合金鋼の溶製に取り組んだ研究会活動成果を取りまとめることができた。本研究会をベースに発展した鉄鋼協会研究プロジェクト「サステナブル高清浄クロム鋼溶製プロセス」の活動が2021年から開始されており,日本鉄鋼協会・日本およびアジア地域における一層の鉄鋼業発展につながることを期待したい。

 
© 2022 The Iron and Steel Institute of Japan

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