2022 Volume 108 Issue 9 Pages 679-685
Long-term creep rupture data of 0.5Cr-0.5Mo (STBA20), 1Cr-0.3Mo (KA-STBA21) and 1Cr-0.5Mo (STBA22) steels were analyzed to estimate 100,000 h creep rupture strength.
The creep rupture data were fitted to the regression equation of logarithmic stress using the time-temperature parameters of Larson–Miller (LM), Orr–Sherby–Dorn (OSD) and Manson–Haferd (MH) to estimate the 100,000 h creep rupture strength. The appropriate parameter and degree of regression equation was MH-2nd degree and LM-4th degree for 1Cr-0.3Mo and 1Cr-0.5Mo steels, respectively. For 0.5Cr-0.5Mo steel, the creep rupture data under stresses lower than 80% of tensile strength was analyzed because the scatter band of the creep rupture data was very large under high stress regimes. The appropriate parameter and degree of regression equation was LM-3rd degree for the 0.5Cr-0.5Mo steel. It was confirmed that the creep rupture data up to 550°C should be used for evaluation of 100,000 h creep rupture strength because oxidation scale decreased creep rupture strength at 600°C or above. The allowable stress of the steels studied was estimated based on average and minimum values of 100,000 h creep rupture strength. The estimated allowable stresses were equal to or greater than current allowable stress of ASME boiler and pressure vessel code and Technical Standard for Thermal Power Plant in Japan.
物質・材料研究機構(NIMS)では,国産の耐熱金属材料のクリープ強度特性評価を目的とした,クリープデータシートプロジェクトを実施している1)。同プロジェクトでは,火力発電プラントや石油化学プラントなどで使用される国産の規格材を対象に,10万時間クリープ試験データを取得し,クリープデータシートとして公表してきた。同プロジェクトの初期の目的は,国産耐熱金属材料の性能を確認することであった。したがって,取得したクリープ破断データの解析結果を掲載しているものの,データの使用方法や意義については,基本的にユーザー側に委ねることとしてきた。
2004年に12Cr鋼を用いたプラント部材において不具合が発生したことから2),同鋼のクリープ強度評価とそれに基づく許容応力の見直しが行われた。以降,同鋼を含む高Cr耐熱鋼の許容応力の見直しが継続的に行われている3,4)。NIMSのクリープデータや提案した解析方法5)は上記の許容応力の見直しで活用されている。このようなことから,発電プラント部材の信頼性を担保するためには,NIMSにおいて取得した長時間クリープデータについても,データの使用方法や意義についてユーザーに委ねるだけでなく,データを用いた長時間クリープ強度評価を随時実施していくべきと考えられる。
最近,NIMSクリープデータシートプロジェクトの一環として1Cr-0.3Mo鋼(火STBA21)のクリープデータを取得したため,既にクリープデータシートを発刊済の0.5Cr-0.5Mo鋼(STBA20)6)および1Cr-0.5Mo鋼(STBA22)7)を含めて,クリープ破断データの解析とそれに基づく10万時間クリープ破断強度評価を実施した。
供試鋼はSTBA20(9ヒート),火STBA21(2ヒート),STBA22(11ヒート)で,火STBA21の化学成分および熱処理条件をTable 1に示す。規格に規定されていない化学成分は,参考として,NIMSにて別途分析した結果である。STBA20およびSTBA22は約50年前にサンプリングしたものであり,10万時間クリープ破断データを既に取得し,化学成分を含むクリープデータシート6,7)として結果を公表している。一方,火STBA21は2014年にサンプリングし,数万時間レベルのクリープ破断データを取得したところであり,10万時間破断データの取得を目指して試験を継続中である。
| Heat | Chemical composition (mass percent) 1) | ||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| C | Si | Mn | P | S | Ni* | Cr | Mo | N* | Cu* | Al* | |
| Requirement2) | 0.10-0.20 | ≤ 0.50 | 0.30-0.60 | ≤ 0.035 | ≤ 0.035 | 0.80-1.25 | 0.20-0.45 | ||||
| MKA MKB | 0.13 | 0.2 | 0.46 | 0.019 | 0.005 | 0.02 | 0.92 | 0.31 | 0.007 | 0.01 | 0.006 |
| Heat treatment: 930°C / 5min → 680°C / 35min AC | |||||||||||
1) The chemical composition given above was reported by the steel manufacturer except for the elements marked with asterisk, for which the analysis was carried out at NIMS.
2) KA-STBA21, The material specification in the Technical Regulation of Equipment for Thermal Power Plant, 2007.
引張試験およびクリープ試験で用いた試験片は,標点間距離30 mm,平行部直径6 mmで,ボイラチューブの長手方向と試験片の応力軸方向が平行になるように採取した。引張試験は,室温~600°C(STBA22のみ650°C)で,JIS G 05678)に準拠して実施した。公称ひずみ速度は,1%耐力までは0.3%/min,以降は7.5%/minである。なお,室温の引張試験規格JIS Z 22419)と高温引張試験規格であるJIS G 0567のひずみ速度の規定は異なるので,強度特性を直接比較することが困難なため,本実験では,室温の引張試験もJIS G 0567に準拠して実施した。クリープ破断試験およびクリープ試験は,それぞれJIS Z 227210)およびJIS Z 227111)に準拠して実施した。クリープ破断試験およびクリープ試験の温度範囲は,450~600°C(STBA20),500~600°C(火STBA21),500~650°C(STBA22)である。引張試験,クリープ破断試験,クリープ試験の温度はいずれも100~600°Cまでは,±3°C以内,650°Cは±4°C以内に制御した。
Fig.1に,3鋼種の0.2%耐力,引張強さと温度の関係を示す。0.2%耐力については,STBA22のヒート間差が大きいため,厳密な鋼種間比較は難しいが,3鋼種ともに同レベルの強度と考えられる。一方,室温~高温における引張強さは,STBA20>STBA22>火STBA21の順になっていた。いずれの鋼種においても,200~300°Cにおいて動的ひずみ時効による引張強さの逆温度依存性が認められた。Fig.2に,伸び・絞りと温度の関係を示す。いずれの鋼種とも,400°C程度までは伸び・絞りは大きくは変化しないが,400°C以上では,温度の増加に伴い,伸び・絞りが上昇する。また,伸びの鋼種間差はあまり大きくない。一方,絞りの値には鋼種間差が認められ,火STBA21>STBA22>STBA20の順に大きな値を示した。

Short-time tensile properties of three steels. (Online version in color.)

Tensile ductility of three steels. (Online version in color.)
Fig.3に,500~600°Cにおける3鋼種の応力-破断時間線図を示す。STBA20では450°Cにおける試験データを取得しているが,他鋼種との比較のため,ここでは500°C以上のデータのみを示す。いずれの鋼種も,500°Cおよび600°Cでは,短時間域の強度のトレンドと比べて,長時間域のデータは短寿命側にずれる傾向がある。一方,550°Cでは数千時間~1万時間域の強度は短時間域の強度トレンドより短寿命側になるものの,さらに長時間の強度のトレンドは短時間域の強度トレンドと同程度になる。Kushimaらは,STBA22の550°Cにおける応力-破断時間線図が上記で示したS字形状になる理由として,長時間域では析出強化の効果が消失し,いわゆる基底クリープ強度に支配されることを報告している12)。STBA20や火STBA21もSTBA22と同様の傾向を示している。また,500°Cで比較すると,クリープ強度はSTBA22>火STBA21>STBA20の順となっており,強化に寄与するCrやMo量の違いに対応していると思われる。550°Cでは3鋼種のクリープ強度差は小さい。600°Cにおけるクリープ強度は,STBA22が最も高く,STBA20と火STBA21の差は小さい。

Creep rupture strengths of 0.5Cr-0.5Mo (STBA20), 1Cr-0.3Mo (KA-STBA21) and 1Cr-0.5Mo (STBA22) steels. n = 168 (0.5Cr-0.5Mo), n = 60 (1Cr-0.3Mo), n = 278 (1Cr-0.5Mo). (Online version in color.)
3鋼種の許容応力を評価するために,時間-温度パラメータ(P)を応力の関数で表示できるという考えに基づき,Larson-Miller(LM)13),Orr-Sherby-Dorn(OSD)14),Manson-Haferd(MH)15)の3パラメータを用いてクリープ強度予測を行った。
| (1) |
| (2) |
| (3) |
ここで,tRは破断時間(h),Tは温度(°C),C,Q,taおよびTaは定数,Rは気体定数である。応力(S)の関数としては,一般に用いられる下記の2つの多項式を用いた。
| (4) |
| (5) |
ここで,Sは応力(MPa),b, b0, b1, b2, b3, …, bkは最小二乗法によって見積もられた回帰係数,kは回帰次数である。
式(1)~(3)に対して,(4)および式(5)の両方を適用し,解析を試みた。Fig.4~Fig.6は,鋼種ごとの解析結果を示している。図中,例えばLMP_1およびLMP_2の表記は,それぞれ式(1)と式(4)および式(1)と式(5)を適用したことを示しているが,式(4)と式(5)を適用した結果に大差がなかったため,比較的再現性の良い方の結果のみを示した。また,例えばLMP_1 4thの表記は,式(1)と式(4)の4次式を適用したことを示している。最適な次数は,図中に示す決定係数CODおよび標準誤差SEEの値と,データプロットの傾向を適切に表現しているかどうかに基づいて決定した。Fig.4~Fig.6に示す次数は,この方法で決定した値を示している。STBA20については,Fig.4の3つの解析結果のうち,最も適切にデータの傾向を再現しているものとして,LMP_1の4次式を選んだ。同様の方法で火STBA21については,Fig.5の結果の内,MHP_2の2次式を,STBA22については,Fig.6のLMP_2の4次式を選んだ。Table 2に各鋼種について,選定したパラメータ,回帰係数,回帰次数を示す。

Results of regression analysis by LM, MH and OSD parameters for 0.5Cr-0.5Mo (STBA20) steels. SEE: standard error of estimate, COD: coefficient of determination

Results of regression analysis by LM, MH and OSD parameters for 1Cr-0.3Mo (KA-STBA21) steels. SEE: standard error of estimate, COD: coefficient of determination

Results of regression analysis by LM, MH and OSD parameters for 1Cr-0.5Mo (STBA22) steels. SEE: standard error of estimate, COD: coefficient of determination
| STBA20: LM_1log tR = (T+273.15)−1 [ b0 + b1logS + b2(logS)2 + b3(logS)3 + b4(logS)4] − C KA-STBA21: MH_2log tR = (T+273.15 − Ta)[ b + b0S + b1logS + b2(logS)2] + logta STBA22: LM_2log tR = (T+273.15)−1 [ b + b0S + b1logS + b2(logS)2 + b3(logS)3 + b4(logS)4] − C | ||||||
| n*1 | logta | Ta | b | b0 | b1 | |
| STBA20 | 236 | − | − | − | −4.2486803 × 104 | 1.4506491 × 105 |
| KA-STBA21 | 60 | 1.4262686 × 10 | 500.0 | −2.0322841 × 10−2 | −2.5771345 × 10−5 | −2.9586561 × 10−3 |
| STBA22 | 319 | − | − | 1.8183374 × 105 | −3.2917815 × 102 | −4.1245736 × 105 |
| b2 | b3 | b4 | C | SEE*2 | COD*3 | |
| STBA20 | −1.1625143 × 105 | 4.0194951 × 104 | −5.1796799 × 103 | 2.1875809 × 10 | 0.546 | 0.765 |
| KA-STBA21 | −6.8909842 × 10−4 | − | − | − | 0.111 | 0.965 |
| STBA22 | 4.0822228 × 105 | −1.8092336 × 105 | 3.1945908 × 104 | 2.1010253 × 10 | 0.12 | 0.984 |
*1 n: number of data points
*2 SEE: standard error of estimate
*3 COD: coefficient of determination
許容応力を策定する際には,10万時間クリープ破断強度の平均値および最小値を評価する必要がある。平均値は,Table 2に示す式で算出することができる。最小値は95%信頼下限として,下記の式で表される。
STBA20:| (6) |
| (7) |
| (8) |
Table 3に,各鋼種における10万時間クリープ破断強度の平均値と最小値を示す。STBA20は,他の鋼種に比べて平均値と最小値の差が極めて大きいことが分かる。式(6)に示すとおり,最小値は,Table 2に示す標準誤差SEEの値に依存するため,試験データのばらつきの妥当性を確認する必要がある。STBA20の場合,他鋼種に比べてSEEの値が極めて大きい。Fig.4の450°Cおよび500°Cの300 MPa以上では,STBA20のクリープ破断寿命に一桁以上のヒート間差があり,ばらつきが極めて大きいことが分かる。Table 2のSEEの値はこの高応力域での試験データのばらつきに影響されていると考えられる。また,高応力域では,引張特性のヒート間差の影響を受けると考えられる。Kanemaruらは,炭素鋼やSTBA20のクリープ破断寿命は,各温度における引張強さの0.8倍より大きい高応力域で急激に低下するため,高応力域の破断データを除いた低応力域のみを用いると解析精度が向上することを報告している16)。STBA20の450°C,500°C,550°C,600°Cにおける引張強さの平均値の0.8倍は,379 MPa,348 MPa,307 MPa,242 MPaであり,これらの応力以下のデータに絞って解析した結果をFig.7およびTable 4に示す。回帰式として,LMP_1の3次式を選んだ。Table 4に示すように,SEEの値は0.330となり,Table 2の値0.546に比べて小さくなっていることが分かる。このように引張特性のばらつきに影響を受ける高応力・短時間域のクリープ破断データのヒート間差が極めて大きい場合には,10万時間クリープ破断強度の最小値を評価する際に,高応力・短時間域のデータを除外して解析することが有効と考えられる。STBA20相当のASME SA-213 T2の許容応力は450°Cなどの低温では,引張特性に支配されるため,低温・高応力域のデータを含めてクリープ強度評価をすることは適切ではないと考えられる。また,ASME規格では,クリープ強度評価をする際に,クリープ強度支配となる温度より25°C低い温度以上のデータを解析することを推奨している。さらに,500時間以下のデータを除外して10万時間クリープ破断強度を評価する手法が採用されている17)。
| 500°C | 525°C | 550°C | 575°C | 600°C | 625°C | 650°C | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| STBA20 | average (MPa) | 146 | 92 | 59 | ||||
| minimum (MPa) | 90 | 57 | 35 | |||||
| KA-STBA21 | average (MPa) | 150 | 90 | 51 | 26 | 13 | ||
| minimum (MPa) | 135 | 79 | 43 | 22 | 10 | |||
| STBA22 | average (MPa) | 138 | 94 | 66 | 43 | 20 | 14 | 12 |
| minimum (MPa) | 125 | 86 | 60 | 37 | 18 | 14 | 12 |

Result of regression analysis by LM parameters for 0.5Cr-0.5Mo (STBA20) steel. SEE: standard error of estimate, COD: coefficient of determination
| LM_1 log tR = (T+273.15)−1 [ b0 + b1logS + b2(logS)2 + b3(logS)3] − C | ||||
| n*1 | b0 | b1 | b2 | |
| STBA20 | 199 | 5.3943389 × 104 | −4.2504577 × 104 | 1.9590309 × 104 |
| b3 | C | SEE*2 | COD*3 | |
| STBA20 | −3.2555925 × 103 | 2.1774398 × 10 | 0.330 | 0.905 |
*1 n: number of data points
*2 SEE: standard error of estimate
*3 COD: coefficient of determination
STBA20,火STBA21,STBA22の許容応力が設定されている最高温度は,それぞれ550°C,550°C,650°Cである18,19)。STBA20およびSTBA22のクリープ破断した試験片の外観写真から,600°C以上では,酸化減肉が極めて顕著に起きることが分かっている6,7)。Fig.8に,STBA22および同じ公称組成(1Cr-0.5Mo)のSCMV2NT20)の600°Cおよび650°Cにおけるクリープ破断強度を示す。STBA22は,平行部直径6 mmの試験片を用いたのに対して,SCMV2NTは平行部直径10 mmの試験片を用いた20)。したがって,STBA22のクリープ破断強度は,SCMV2NTに比べて酸化減肉の影響により大きく低下すると考えられる。実際,600°Cおよび650°Cの長時間域では,STBA22のクリープ破断強度は,SCMV2NTに比べて低いことが分かる。また,Fig.8の実線は,Kimuraらにより提唱されたフェライト鋼の基底クリープ強度21)を示している。基底クリープ強度はフェライト鋼のクリープ強度の下限値と考えられるが,STBA22のクリープ破断強度は,長時間域において基底クリープ強度を大きく下回っており,これは酸化減肉の影響を受けたためと考えられる。2.25Cr-1Mo鋼においても,600°C以上では,酸化減肉により,長時間クリープ破断強度が見かけ上,大きく低下することが報告されている22)。したがって,本研究で得られた試験データから10万時間クリープ破断強度を評価する温度域は,550°Cまでが妥当と考えられる。600°C以上のクリープ破断強度評価を行う場合には,酸化減肉の影響を考慮した解析を行うことが提案されている22)。なお,Fig.8に示したとおり,試験片の直径を大きくすれば,酸化減肉の影響を小さくすることができる。

Creep rupture strength of STBA22 and SCMV2NT at 600°C and 650°C. (Online version in color.)
以上を踏まえ,STBA20についてはTable 4を,火STBA21およびSTBA22はTable 2を用いて10万時間クリープ破断強度の平均値の67%および最小値の80%を算出し,両者のうち小さい方の値を現行の許容応力と比較してTable 5に示す。本研究でNIMSのデータのみから試算した許容応力は,現行の許容応力と同等かそれ以上であることが確認された。
| 0.5Cr-0.5Mo (STBA20) | Temperature (°C) | 500 | 525 | 550 |
| current allowable stress (MPa)*1 | 75 | 51 | 41 | |
| current allowable stress (MPa)*2 | 77 | 49.5 | 31.3 | |
| estimated allowable stress (MPa) | 88 | 54 | 36 | |
| 1Cr-0.3Mo (KA-STBA21) | Temperature (°C) | 500 | 525 | 550 |
| current allowable stress (MPa)*1 | 74 | 51 | 28 | |
| estimated allowable stress (MPa) | 101 | 60 | 34 | |
| 1Cr-0.5Mo (STBA22) | Temperature (°C) | 500 | 525 | 550 |
| current allowable stress (MPa)*1 | 86 | 63 | 41 | |
| current allowable stress (MPa)*2 | 88.3 | 61.9 | 40.3 | |
| estimated allowable stress (MPa) | 93 | 63 | 44 |
*1: current allowable stress [METI18)]
*2: current allowable stress [ASME SA-21319)]
0.5Cr-0.5Mo鋼(STBA20),1Cr-0.3Mo鋼(火STBA21),1Cr-0.5Mo鋼(STBA22)のクリープ破断データを用いて,10万時間クリープ破断強度の評価を行った結果,以下のことが分かった。
(1)高応力・短時間域のクリープ破断強度が引張特性のヒート間差の影響をうけて,ばらつきが大きい場合,クリープ破断データ解析における標準誤差が大きくなり,10万時間クリープ破断強度の最小値を適切に評価できない。この場合,引張特性の影響が小さくなる,例えば引張強さの0.8倍の応力以下の応力域に絞って解析すれば,適切な最小値を算出することができる。
(2)平行部直径6 mmの試験片を用いた低合金鋼の場合,600°C以上では,酸化減肉による長時間クリープ破断強度の低下が生じるため,10万時間クリープ破断強度の評価は550°Cを最高温度とするのが妥当である。600°C以上の評価をする場合には,試験片平行部の直径を大きくするか,酸化減肉の影響を取り入れた解析を別途行う必要がある。