2025 年 111 巻 12 号 p. 793-802
Conventionally, it has been known that the product yield of the upper part of the sintering layer is extremely low, because of the heat loss caused by transferring heat toward the space above sintering layer, and of the large amount of unburned carbon in upper sintering layer.
As a countermeasure, REMO-tec (Re-ignition Method for Optimization of Total Energy Consumption) has been developed. Here, REMO-tec is the sintering technique of re-igniting sintering packed bed at certain intervals after first ignition. This method has an effect on improving sinter yield with maintaining high sinter reducibility. This effect leads to improving sinter reducibility without decreasing sinter yield by decreasing control of coke breeze content in sinter mixture.
This paper focuses on coke combustion efficiency as combustion ratio of carbon in coke breeze for considering improvement of sinter yield through sinter pot test. Here, carbon combustion ratio is defined as proportion of actual heat generation at combustion to ideal heat generation as complete combustion (C+O2→CO2) of all carbon in coke. And it can be calculated based on component analyses of exhaust gas.
As the result, it was confirmed as shown bellows.
1) By re- ignition, the unburned coke remaining in the upper layer of the sinter packed bed was burned, which has a role of extending keeping time over 1200°C especially in the upper layer of sinter packed bed.
2) Due to the effect of 1), the increasing amount of heat supply at “REMO-tec” case was equivalent to the same as the experimental case of increasing coke breeze content, at which increasing heat amount at blending coke breeze content was four times larger of the heat amount at re-ignition. (For a 430 mm layer pot test)
3) In addition, since the re-ignition heat is donated to the upper layer (surface layer), the amount of heat consumption in the upper layer of the sinter packed bed increases and the amount of heat consumption in the lower layer decreases compared to the case of increasing coke breeze content, which results in decrease of the difference between heat consumption in upper layer and that in lower layer.
In addition, these effects have been also confirmed at the commercial sinter plant.
現行の製銑プロセスにおける省エネルギーおよび炭酸ガス排出量削減のため,焼結プロセスにおける粉コークス等の凝結材削減および高炉プロセスにおける還元材削減が必須である。
焼結プロセスにおける凝結材については,カーボンニュートラル材のバイオマス利用が直接的かつ有効な方法であり,2000年代以降,多くの論文1,2,3)が公開されている。バイオマス材利用における技術課題は,低発熱量起因の低歩留である。最近では,PKS(Palm Kernel Shell)炭についての燃焼率4,5)等の基礎研究を参考に,PKS粗粒化による歩留維持6)および焼結層下層配置7)の応用研究が報告されている。
高炉の還元材比削減については,焼結の被還元性が求められており,焼結プロセスにおける粉コークス等の凝結材削減が有効である。従って,凝結材削減は焼結プロセスおよび高炉プロセスの双方からの炭酸ガス排出量を削減できる。
そして,粉コークス削減における課題は,歩留低下である。特に,焼結層上層における対策が必須である。
Fig.1は焼結パレット断面の歩留分布の一例である。最上層は極端な低歩留である。この課題を解決するため,点火前に焼結層表層へ粉コークスを散布する技術が開発された8)。この技術の狙いは,特に上層の投入熱量を極端に高めることであり,給鉱偏析装置を使用しても,すべての配合原料を一括して給鉱する方法だけでは,上層における粉コークス濃度を極端に高めることは困難である。
Example of distribution of yield in cross section of sinter cake. (Online version in color.)
別の技術として,点火後に焼結層へ燃料ガスを吹き込む技術9,10)が開発された。この技術では,燃料ガスが粉コークス燃焼温度よりも低温で燃焼する特性を利用して,粉コークス燃焼域よりも上方側へ高温領域を拡大できる。この効果は,酸素富化との組み合わせで加速する。この高温領域の拡大位置は 表層から100 mm深さである。さらに,この効果により粉コークス配合比を低下させることが可能となり,焼結鉱被還元性改善に結び付けた。
最近になって,Fig.2に示すように,実機焼結機から採取した焼結ケーキの分析より,多量の未燃カーボンの存在,言い換えれば,低燃焼率状態であることが明らかとなった。その対策として,未燃カーボン減少には高温領域を表層まで拡張することが必須である。この分析結果を踏まえ,Fig.3に示す未燃カーボン低減に高い効果を有するREMO-tec:(RE-ignition Method for Optimization of Total Energy Consumption)を開発した。これは最初の点火から一定時間おいてから再点火する二段点火技術である。
Distribution of carbon combustion ratio and free carbon content in sinter cake along bed height direction.
Process image of REMO-tec
高エネルギー型X線構造解析法12)により,REMO-tecの焼結構造の特徴を以下に述べる。
Vertical cross sections of sinter cakes, colored according to density13).
ここで,見掛密度に応じて色分けされている。先行研究14)に基づいて,高密度値(赤色)は,赤鉄鉱の値に基ついて決定した。Ca-Fe-O相は赤鉄鉱よりも低密度のため,中密度および低密度は焼結同化組織を示す。さらに,中密度組織は高結合強度領域と定義された。
Fig.413)に示すように,REMO-tecにおいては,表層からの深度30–50 mmにおいて,水平方向に空隙が発達し,この空隙直下では,顕著に低密度領域(青色)が低減した。
Fig.5に,中密度領域(緑色)の層高分布を示す。上層部(底部から350–430 mm位置)において,REMO-tecによる,中密度領域拡大が確認された。
Distribution of middle density matrix ratio in vertical direction.
そして,上層における空隙形成および中密度領域拡大はFig.6に示されるような焼結過程における高温帯の移動に基づくと考えられる。
Image of high temperature zone movement during sintering from first ignition in case of REMO-tec. (Online version in color.)
REMO-tecにおける焼結ケーキ構造推移は以下のように説明できる。
1)イメージ ①~③
初点火で形成された一番目の高温領域が下方へ移動する。
2)イメージ ④~⑤
再点火で形成された二番目の高温領域が下方へ移動する。(最初の高温域よりも移動速度が速い)
3)イメージ ⑥
2カ所の高温帯が合体するが,この際に高温帯の厚みが非連続的に増加する。
4)イメージ ⑦
上記合体において溶融促進され,その結果,液相比が高まった融液が下方へ移動し大きな空隙が形成される。(空隙直下では,低密度領域が減少する)
焼結鍋寸法は直径300 mm高さ500 mmであるが,底部グレートの上下位置を調整することで任意の層高焼成を可能とした。焼結原料には粉コークス等の凝結材を含まない実機配合原料を使用した。そして,粉コークスは実験室で配合した。
3・2 造粒および装入条件原料造粒には,予め配合した焼結原料と粉コークスを,水を加えずにドラムミキサーで2分間混合した。次に,水を加えながら同じドラムミキサーでさらに5分間混合した。
焼結鍋への装入方法は,造粒後原料を鍋上面から100 mmの高さから床敷上へ落下装入した。床敷として粒径10~15 mmの焼結鉱を使用し,床敷層厚は20 mmに調整している。
3・3 焼結条件焼結時のガス量は,初点火,再点火期間を含め,排ガス量として1.8Nm3/minで一定とした。
3・4 実験シリーズおよび各試験ケース 3・4・1 再点火焼結の成品歩留および焼結鉱被還元性に及ぼす基本的効果Table 1に示すように,粉コークス配合率(4.0%),点火時間(1 min)の条件の「Base」ケースに基づいて,3ケースを検討した。「コークス増配」ケースは粉コークスの配合率を0.4%増加させた(合計4.4%)。「再点火[REMO-tec]」ケースは,1分間の初点火から3分経過後に1分間再点火した。ここで,焼結混合物の充填層の高さは床敷を除いて480 mmとした。
First ignition (min) |
Interval (min) |
Re-Ignition (min) |
Coke breeze ratio (%) |
Bed height (mm) |
Δ heat (MJ/t-raw material) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
Series1: Basic effect of REMO-tec on sinter yield and reducibility | ||||||
Base | 1 | − | − | 4.0 | 450 | Base |
High coke | 1 | − | − | 4.4 | 450 | 100 |
Re-ignition (REMO-tec) | 1 | 3 | 1 | 4.0 | 450 | 24 |
Series2: Evaluation of REMO-tec on heat balance at sintering | ||||||
Base | 1 | − | − | 4.4 | 430/130 | Base/Base |
High coke | 1 | − | − | 4.8 | 430/130 | +100/+100 |
Long ignition | 2 | − | − | 4.4 | 430/130 | +25/+83 |
Re-ignition (REMO-tec) | 1 | 1 | 1 | 4.4 | 430/130 | +25/+83 |
検討ケースは,Table 1に示すように,粉コークス混合率(4.4%),点火時間(1 min)の条件の「ベース」ケースに基づいた4ケースとした。「コークス増配」ケースは粉コークスの配合率を0.4%増加させた(計4.8%)。「点火延長」ケースは,点火時間を1分長くした。(合計2分)。「再点火[REMO-tec]」ケースは,1分間の初点火から1分経過後,1分間再点火した。
最初の実験シリーズと異なる点は,「点火延長」ケースを追加したこと,コークス配合率を+0.4%増加したこと,初点火から再点火間の置き時間を3分から1分に短縮したことである。コークス配合率を高めた理由は,コークス配合率が高くてもREMO-tecの歩留向上効果が得られるか確認するためである。「再点火[REMO-tec]」ケースにおける置き時間短縮は,歩留向上効果を高めるために調整した。
さらに,焼結層の層高は通常の高さ 430 mm だけでなく,焼結層上層を評価するために 130 mmでも評価した。ここで,層高値に床敷層は含まれない。
各ケースの増熱量をTable 1中に示す。
「コークス増配」ケースは100 MJ/t-原料である。
「点火延長」ケースと「再点火[REMO-tec]」ケースは,それぞれ焼結層層高430 mmでは25 MJ/t-原料,130 mmでは83 MJ/t-原料となる。点火条件が同じでも,層高が低くなると原料重量あたりの発熱量が増加する。したがって,点火熱の増加量は,粉コークス分布の熱増加量(+100 MJ/t-原料)に対して,焼結層層高430 mm,130 mmでそれぞれ25%,83%となる。
REMO-tecでは焼結層表層に熱供給することで到達温度と高温保持時間を長くすることを目指している。Fig.7に示すように,このプロセスの基本的な効果は,粉コークス配合一定で焼結被還元性維持かつ成品歩留向上である(Fig.7中◆)。この点が,粉コークス配合率を増加させた場合にみられた焼結被還元性低下に伴う成品歩留向上と異なる(Fig.7中○)。
Comparison between REMO-tec and high coke content on yield and sinter reducibility. (Online version in color.)
焼結還元性を維持しながら成品歩留を向上できる要因は以下のように説明できる。
焼結物充填層の上層(層高位置400 mm)では,1200°C以上の高温保持時間が延長され(Fig.8),これが成品歩留歩留まりの向上につながる。また,下層(層高位置250 mm,層高位置50 mm)では温度が1350°Cを超えず(Fig.9),その結果,焼結還元性が維持された。
Comparison of high temperature holding time (>1200°C). (Online version in color.)
Comparison of high temperature holding time (>1350°C). (Online version in color.)
一方,粉コークス配合比低減の観点から見ると,Fig.7より,コークス増配ケース(○)に対して再点火ケース(◆)は,成品歩留はほぼ同等ながら被還元性は向上した。すなわち,再点火により粉コークスを低減すれば,成品歩留は若干低下するものの,焼結還元性を向上させることができる。ここで,粉コークスの還元熱量減少量は100 MJ/t-原料であり,再点火時の熱増加量に比べてはるかに大きい。したがって,成品歩留や焼結還元性にとって熱効率において再点火が有効であると結論できる。
4・2 再点火焼結の熱収支評価 4・2・1 温度履歴(ヒートパターン)Fig.1011)に,層高430 mm試験における表面から深さ50 mmの温度プロファイルを示す。なお,Fig.10は参考文献11)のFig.1と同一であるが,引用文献中のベッド高さ(480 mm)が誤った情報である。
Heat profile at 50mm depth from surface (Bed height: 430 mm)11).
「ベース」ケースとの比較として,各ケースは次のように評価される。
「コークス増配」ケースでは,最高温度は上昇したが,高温(>1200°C)の保持時間は同等であった。
「点火延長」ケースでは,昇温時の上昇勾配が小さくなり,最高温度が低くなった。
「再点火[REMO-tec]」ケースでは,最高温度は同等ながら,高温保持時間が最も長くなった。
4・2・2 成品歩留Fig.1111)に成品歩留結果を示す。なお,Fig.11は参考文献11)のFig.2と同一であるが,引用文献中のベッド高さ(480 mm,150 mm)が誤った情報である。
Comparison of yield (Bed height: 430 mm, 130 mm)11). (Online version in color.)
「再点火[REMO-tec]」ケースは,「コークス増配」ケースに比べて発熱量は少ないものの,成品歩留が高く,低層高さ(130 mm)条件でその効果が顕著となった。
4・2・3 粉コークス燃焼率排ガス分析から粉コークスの燃焼率16)を考慮した投入熱量量を評価することができる。また,ここでは,燃焼率を粉コークス中の全炭素がCO2へ燃焼した場合の発熱量に対する,実際の発熱量の割合で定義される燃焼効率の指標とした。
発熱量は下記の発熱反応によるものである。
ここで,粉コークス中の炭素のCO2(完全燃焼),CO(部分燃焼)への燃焼,および未燃炭素の各比率は,鍋試験で得られる排ガス分析から求めた。ここで,排ガス中のCO2には,石灰石やドロマイトの脱炭酸反応により生成したCO2も含まれる。脱炭酸反応によるCO2量は,吸入空気量と排ガス量の差からCOガス量の半量(CO 1 molを生成するのに酸素 0.5 molが消費されるため)を差し引くことで求めることができる16)。
Table 2に粉コークスの燃焼率を示す。
Experimentral condition | Calculation based on exhaust gas analyses | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Bed height 130 mm | Bed height 430 mm | ||||||||||
Ignition time (min) |
Ignition timing (min) |
Coke breeze blending rate | C →CO2 | C →CO | Un-burnt C | Com- bustion rate (A) | C →CO2 | C →CO | Un-burnt C | Com- bustion rate (A) | |
Base | 1 | 0–1 | 4.4 | 71% | 17% | 12% | 75.9% | 80% | 16% | 4% | 84.4% |
High coke | 1 | 0–1 | 4.8 | 65% | 20% | 15% | 71.0% | 79% | 16% | 6% | 83.0% |
Long ignition | 2 | 0–2 | 4.4 | 73% | 19% | 9% | 77.8% | 75% | 16% | 9% | 79.4% |
Re-ignition [REMO-tec] |
2 | 0–12–3 | 4.4 | 86% | 15% | −1% | 90.7% | 84% | 18% | −1% | 88.5% |
低層高条件(130 mm)の「ベース」ケースおよび「コークス増配」ケースでは,未燃炭素量が10%を超え,燃焼率が低かった。したがって,上層には未燃炭素が存在していたと考えられる。一方,「再点火[REMO-tec]」ケースは,未燃カーボンが消失し,結果として燃焼率が向上した。
低層高条件(130 mm)の「点火延長」ケースでは,「ベース」ケースや「コークス増配」ケースに比べて未燃炭素が減少した。但し,「再点火[REMO-tec]」ケースに比べて効果は小さい。一方,層高430 mm条件でも,「ベース」ケースおよび「コークス増配」ケースでは未燃カーボン量が増加した。Fig.8に示すように,高温領域の広がりにより下層300 mm層で燃焼阻害が発生した可能性が示唆された。
「再点火焼結の熱収支評価」シリーズの実験結果をもとに,投入熱量と消費熱量からREMO-tecが成品歩留に与える影響を考察する。
5・1 投入熱量投入熱量は,燃焼率を考慮した粉コークスの燃焼による発熱量と,実際の焼結層への投入熱量を考慮した点火時の発熱量の和として次式のように算出した。
Table 3に高さ430 mm条件での投入熱量を示す。「再点火[REMO-tec]」ケースと「コークス増配」ケースとの比較は,「ベース」ケースとの投入熱量差で評価した。
Heat supply (Bed height 430 mm) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Coke breeze (MJ/t) | Ignition (MJ/t) | Total (MJ/t) | ||||||
Blending heat potencial (B) |
Combustion rate (A) |
Heat supply (B×A) |
Difference from the case “baseˮ |
Heat supply (C) |
Difference from the case “baseˮ |
Heat supply (B×A+C) |
Difference from the case “baseˮ |
|
Base | 1100 | 84.4% | 929 | 0 | 25 | 0 | 954 | 0 |
High coke | 1200 | 83.0% | 996 | 67 | 25 | 0 | 1021 | 67 |
Long ignition | 1100 | 79.4% | 873 | −55 | 50 | 25 | 923 | −30 |
Re-ignition [REMO-tec] |
1100 | 88.5% | 974 | 45 | 50 | 25 | 1024 | 70 |
まず,粉コークス配合比に対応する粉コークス熱量は,「コークス増配」ケースにおいてのみ,他のケースと比較して+100 MJ/t-原料だけ増加した。ただし,コークス燃焼率を考慮すると,「ベース」ケースとの差として,「コークス増配」ケースおよび「再点火[REMO-tec]」ケースでそれぞれ+67 MJ/t-原料,+45 MJ/t-原料となった。従って,コークス燃焼と点火を合わせた投入熱量差は,「コークス増配」ケースでは+67 MJ/t-原料,「再点火[REMO-tec]」では 70 MJ/t-原料となる。即ち,これら2ケースの差はわずか3 MJ/t-原料であった。「点火延長」ケースはコークス燃焼率が最も低く,その影響で投入熱量が最も低くなった。
Table 4に高さ130 mm条件での投入熱量を示す。コークス 燃焼率の差が拡大したことにより,「再点火[REMO-tec]」の場合の総投入熱量が大幅に増加した。「点火延長」ケースでは,「ベース」ケースまたは「コークス増配」ケースよりも投入熱量が高く,Table 3に示す高さ430 mm 条件とは異なる結果となった。
Heat supply (Bed height 430 mm) | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Coke breeze (MJ/t) | Ignition (MJ/t) | Total (MJ/t) | ||||||
Blending heat potencial (B) |
Combustion rate (A) |
Heat supply (B×A) |
Difference from the case “baseˮ |
Heat supply (C) |
Difference from the case “baseˮ |
Heat supply (B×A+C) |
Difference from the case “baseˮ |
|
Base | 1100 | 75.9% | 835 | 0 | 83 | 0 | 918 | 0 |
High coke | 1200 | 71.0% | 852 | 16 | 83 | 0 | 935 | 16 |
Long ignition | 1100 | 77.8% | 856 | 21 | 166 | 83 | 1022 | 104 |
Re-ignition [REMO-tec] |
1100 | 90.7% | 997 | 162 | 166 | 83 | 1164 | 245 |
Table 3およびTable 4に示す結果から,REMO-tecはいずれの層高条件においても投入熱量の優位性を有する。「点火延長」ケースは,焼結充填層の上部(上部130 mm)領域でのみ優位性を持つ。即ち,「点火延長」ケースは,焼結層下部領域におけるコークス燃焼率へ悪影響を及ぼす。これはFig.10に示す上層の温度分布がブロード化の影響と考える。
5・2 消費熱量焼結層における消費熱量は,下式に示すように,コークスの燃焼・点火による投入熱量に,出入りする入出ガス顕熱を加減した値とした。ここでは上層(130 mm)と下層(300 mm)別に消費熱量を計算した。
消費熱量の模式図をFig.12に示す。投入熱量は燃焼率を考慮したコークス燃焼熱および点火熱量の和である。ガス顕熱の計算において,以下の(1)~(4)を仮定し,温度は室温との差分で熱量計算した。
(1)上層への流入ガスの顕熱は室温とした。(熱量は0 MJ)
(2)上層の出側ガス顕熱は,高さ130 mm条件の鍋試験における原料最下層の熱電対情報に基づいた顕熱の,焼結開始から焼結終了までの積算とした。
(3)下層の入側ガス顕熱は(2)の値とした。
(4)下層の出力ガスの顕熱は,高さ430 mm の条件での鍋試験における原料最下層の熱電対情報に基づいた顕熱の,焼結開始から焼結終了までの積算とした。
Image of inlet and outlet heat for sintering layer. (Online version in color.)
Fig.13に焼結充填層の熱収支を示す。ここでは,排ガスの顕熱は移動熱量(transferring heat)として表現した。「再点火[REMO-tec]」ケースは,「コークス増配」ケースと比較して,上層の消費熱量が増加し,下層の消費熱量が低下した。この結果は,「再点火[REMO-tec]」ケースにおいては,上層と下層の消費熱量の差が小さくなることを意味する。さらに,両層における消費熱量の和は「再点火[REMO-tec]」の方が増加した。この増加はコークス燃焼率の向上によるものである。
Heat consumption for upper and lower layer. (Online version in color.)
Fig.10に示したように最高温度が低いにもかかわらず,「点火延長」ケースの投入熱量は「ベース」ケースよりも高かった。これは,連続点火時間を長くすることで温度プロファイルがブロードになった現象で説明できる。熱プロファイルから,点火により供給された熱は焼結充填層の表 面に蓄えられ,その後徐々に下層に熱が伝達されることが示唆される。
Fig.14に上層と下層のそれぞれの消費熱量と成品歩留の関係を示す。
Relationship between heat consumption and yield. (Online version in color.)
上層の成品歩留は,層高 130 mmの焼結鍋試験の結果と対応する。
下層の成品歩留は下記式に基づいて算出される。
Fig.14の結果より,消費熱量と成品歩留との間には強い相関が確認された。さらに,上層は下層に比べて,消費熱の変化に対する成品歩留の変化が大きい。そのため,上層での消費熱量が大きい「再点火[REMO-tec]」の方が高成品歩留となることが確認された。
REMO-tecは実焼結機へ適用された。
ここで,再点火炉は初点火炉から3 mの距離を置いて設置された。ここで,初点火炉の終了から再点火炉の開始までの移動時間は1.0~1.2分となる。
再点火の燃料原単位は初点火と同値とした。
6・2 焼結諸元運転開始後すぐに,数日間の REMO-tec操業試験を行い, 一段点火条件(Baseケース)と比較・評価した。評価に際して,以下の2水準の操業を実施した。
TEST-1:粉コークス混合率一定における成品歩留の評価
TEST-2:粉コークス削減の評価
REMO-tecの焼結諸元への影響をFig.15に示す。
Improving operating performance of the commercial sintering plant. (Online version in color.)
TEST-1期間では,成品歩留が2.0%向上した。
TEST-2期間では,BASE期間に対して,粉コークスの配合量を成品歩留向上値1.0%相当まで削減した。その結果,粉コークス消費量を焼結1 tあたり3.0 kg削減することができた。この値は,粉コークス消費量の5%に相当する。また,図には示していないが,焼結還元性の向上も確認された。
6・3 成品歩留向上に関する傍証未燃焼粉コークスおよび成品歩留の層高方向分布は,「BASE」期間と「TEST-1」期間の両方でパレットを抜き取って収集した焼結サンプルの調査から求めた。
「TEST-1」期間では,それぞれFig.1615),Fig.1715)に示すように,上層の未燃炭素が下層と同レベルまで減少し,上層の成品歩留が向上した。
Distribution of unburnt coke breeze in sintering bed (commercial plant)15). (Online version in color.)
Distribution of yield in sintering bed (commercial plant)15). (Online version in color.)
さらに,焼結充填層へ熱電対をセットし,焼結層内の温度を直接測定した。
Fig.18に「Base」と「TEST-1」ケースの温度履歴を示す。ここで,「TEST-1」ケースの高さ340 mm位置は,断線により温度測定できなかった。
Heat profile for each height of sinter packed bed. (Online version in color.)
測定の結果,上部焼結層(表面から50 mmおよび100 mmの深さ)の高温保持時間が延長されることを確認した。この伸延は未燃コークス減少を示唆する。
焼結速度については「TEST-1」において,昇温開始まで時間が遅れた。再点火が焼結充填層の通気性に悪影響を及ぼすことを示唆する。しかし,Fig.15に示すように,成品歩留向上により焼結生産性は維持された。
焼結初点火終了から一定時間経過後の焼結Table面を再点火するREMO-tec(総エネルギー消費量最適化のための再点火法)の焼結鍋試験により,以下の効果が確認された。
(1)初点火時に焼結層の上層に残った未燃コークスが再点火時に燃焼した。この再点火時の燃焼は,特に焼結充填層の上層において1200°C以上の保持時間を延長する役割を果たす。
(2)(1)の効果により,鍋試験のベッド高さ430 mm条件において,「REMO-tec」ケースの投入熱量増加量は,粉コークス量を増加させた実験ケースと同等となり,ここで,再点火熱量に対して粉コークス増熱量は4倍であった。
(3)また,再点火熱は上層(表層)に供与されるため,焼結充填層の上層での消費熱量が増加し,下層での消費熱量が減少した。粉コークスの含有量を増加させると,上層と下層の消費熱量の差が減少した。
なお,これらの歩留り向上効果は実機焼結機においても確認された。また,REMO-tecでは一段点火操業に比べて成品歩留を維持したまま粉コークス配合率を低減する効果も確認された。