鉄と鋼
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論文
固相の析出を考慮したスラグ粘度推定モデルの開発
松崎 眞六折本 隆
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2013 年 99 巻 7 号 p. 439-447

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Synopsis:

The viscosity of slag is a very important factor for blast furnace operation. For instance, the viscosity of slag exerts a big influence on the liquidity of slag in the hearth, the tapping of pig iron and slag, softening, shrinkage, melting down, permeability in the cohesive zone, and permeability in the deadman. In addition, the viscosity of slag itself is affected by temperature and composition changes when the slag is formed. Furthermore, the fact that slag viscosity is greatly increased by the deposition of coke powder and the solid phase is well known.

However models that consider such effects are few.

Therefore, we have developed an estimation model that takes into account the increase in the viscosity of slag due to the deposition of the solid phase. The calculation result of the model was in good agreement with the measured results.

As an example application of the estimation formula, we have examined the melting point and viscosity of the slag of quaternary Al2O3-SiO2-CaO-MgO along with slag containing FeO.

1. 緒言

高炉操業において,高炉内でのスラグの挙動の解明,粘性の管理は非常に重要な要素である。出銑滓作業に大きく影響を及ぼす湯溜まりでのスラグの粘性はもとより,融着帯での鉱石の軟化収縮や滴下,通気性,さらにはレースウエイや炉芯での通気性もスラグの成分や温度によって大きく左右される。

従って,高炉系スラグを対象としたスラグ粘度を推定するモデルは数多く報告されている。しかしながら,スラグ粘度は,スラグ成分や温度だけでなく,コークス粉や,固相の析出により大きく上昇することが知られており,このような影響を考慮したモデルは少ない1)。このため固相の析出による粘性の上昇を考慮した推定式の開発を試みた。

また,推定式の適用例として,Al2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグの融点および粘度の検討,さらにはFeO含んだスラグの粘性や炉下部でのスラグの挙動に及ぼす影響の検討を行った。

2.固相の析出を考慮したスラグ粘度推定モデルの開発

高炉系スラグを対象としたスラグ粘度推定モデルは数多く報告されているが,固相の析出の影響を考慮したモデルは少ない。例えばSugiyamaらのモデル2)を例にとると,この式はスラグ温度が融点よりある程度高い領域では実験結果と整合性があるが,スラグ温度が融点より低下し固相が析出した状態になると実態との乖離が大きくなる。成分がAl2O3;18.2mass%,MgO;7.4mass%,CaO;38.2mass%,SiO2;33.1mass%,FeO;0.38mass%,MnO;0.32mass%,TiO2;0.66mass%である実高炉のスラグの粘度の測定結果とSugiyamaらのモデルを用いた計算結果の比較例をFig.1に示す。測定結果ではスラグ融点以下の温度になり固相が析出し始めると急激に粘度は上昇し,融点以上の温度では測定結果とほぼ一致していた計算結果も,融点以下の温度では測定結果と大きく乖離する。このため,従来のスラグ粘度推定モデルではスラグ融点以上の温度に適用範囲が限られる。

Fig. 1.

 Comparison between the measurement result of slag viscosity and the calculation result using the model of Sugiyama, et al.2)

従って本報では,固相の析出量および固相の析出が粘性に及ぼす影響を定量的に求めることにより,融点より温度が低下した場合の粘度を精度良く推定するモデルの開発を試みた。

2・1 固相の析出を考慮したスラグ粘度推定モデル

固相の析出を考慮したスラグ粘度推定モデルは,スラグ融点の推定,液相でのスラグ粘度の推定,固相生成時の粘度の推定の3つのサブモデルから構成される。

スラグ融点推定モデルは,融点以下での固相率,液相の成分等を多元化学平衡計算プログラムであるSOLGASMIXを用いて計算するモデルで,反応種を多数含んだ固相,気相,液相,固溶相を含んだ系の反応における平衡状態を理論的に計算する。

液相でのスラグ粘度推定モデルは,高炉系スラグの粘度推定式として,Sugiyamaらのモデルを採用した。このモデルは,試薬で合成したスラグを黒鉛るつぼで溶かし,回転ロータにかかるトルクより測定した粘度の値から求めた回帰式をベースにしたモデルである。

固相生成時の粘度推定モデルは,固相が生成した時のスラグ懸濁時の粘度推定式としてMoriらの関係式を用いたモデルである。

2・1・1 スラグ融点推定モデル

スラグ融点推定モデルは,スラグの融点だけでなく,スラグ粘度の固相率を補正するために,スラグの固相率および液相組成を合わせて計算する。計算プログラムとしてSOLGASMIX3,4,5,6)を用いた。SOLGASMIXは自由エネルギー最小化法3)に基づく多元平衡解析計算プログラムであり,他成分,多相間の平衡を計算できること,反応を含んだ系の平衡計算ができること,自由エネルギー関数は利用者側で随意に決めることができること,などの特徴がある。なお,本モデルでは,CaO-SiO2-Al2O3-MgO-FeO系のみを対象とし,自由エネルギー関数はGayeらの示した関数を用いた6)

スラグ融点推定モデルにて計算したスラグの融点と,示差熱分析で測定したスラグの融点の比較結果をFig.2に示す。融点を測定したスラグの成分をTable 1に示すが実高炉で採取した試料であるためS等の微量成分が含まれており,これらは計算では考慮していないが,両者は概ね一致している。

Fig. 2.

 Comparison between the measurement and estimation result of the melting point of slag.

Table 1. Composition of slags for melting point measurement.
  Al2O3
mass%
MgO
mass%
FeO
mass%
C/S
-
Slag 1 14.18 6.42 0.29 1.19
Slag 2 18.17 7.37 0.38 1.15
Slag 3 19.46 7.25 0.21 1.27
Slag 4 19.92 7.88 0.20 1.26

2・1・2 固相析出時のスラグの粘度推定モデル

固相析出時のスラグの粘度は,液相のスラグ粘度は,Sugiyamaらのモデル2)により計算し,SOLGSMIXで計算した固相率を用いて補正計算することにより導出する。

(1)固相析出時のスラグの粘度の補正の考え方

固相が生成した時のスラグ懸濁時の粘度推定にはMoriらの式を用いた7)。この式は球形粒子だけでなく異型粒子の懸濁が粘度に与える影響が考慮された式で,炭酸カルシウムやアスファルト破砕粉などについて,適用可能なことが確認されており7),本論文では高炉スラグへの適用か可能かどうか検討した。

Moriらによれば,固体が懸濁した場合の粘度ηsは次式で表される。   

η S = η r × η 0 式1

ただし   

η r  = 1 +  d ¯ ×Sr/2 1/ ψ V 1/ ψ VC 式2

ηS;懸濁時のスラグ粘度(poise)

ηr;懸濁時の粘度補正係数(−)

η0;液相部分の粘度(poise)

ψv;懸濁物質の体積濃度(固相率)(−)

ψvc ;懸濁物質の限界懸濁濃度(−)

d;粒子の平均径

Sr ;体積基準の比表面積

ここで,粒子の平均径と比表面積の関係は,比表面形状係数(φ)を用いて次式で表され,   

  d ¯ =φ/Sr 式3

さらに比表面形状係数は,表面係数(φc)と次式の関係がある8)。   

φ=6/ φ c 式4

従って,式2は次のように書き直せる。   

η r  = 1 +  3/ φ C 1/ ψ V 1/ ψ VC 式5

式5から,懸濁時の粘度補正係数ηrを求めるためには,固相率ψv,懸濁物質の限界懸濁濃度ψvc,懸濁物質の表面係数φcを決めればよいことになる。

ここで,固相率ψvはSOLGASMIXより計算する。懸濁物質の限界懸濁濃度ψvcについては,Moriらの文献により0.52とし,表面係数φcについては,スラグの粘性の測定結果を整理し,0.1と仮定することとした。以下にψvc,φcの考え方について示す。

(2)懸濁物質の限界懸濁濃度ψvcの検討

Moriらの文献7)では,ψvcは等径球の最疎充填の場合の濃度を表し,定常的な剪断変形を生じる値として0.52が合理的であり,実験ともよく一致することが示されている。

粘度補正係数に及ぼすψvcの影響を計算し,Fig.3Fig4に示した。Fig3は,固相率を0.1とした時に表面係数(φc)とψvcが粘度補正係数に及ぼす影響を調べた図,Fig4は,表面係数(φc)を0.1とした時に固相率とψvcが粘度補正係数に及ぼす影響を調べた図である。これらの図から,固相率や表面係数が変化してもψvcが粘度補正係数に及ぼす影響は小さいことがわかり,本論文ではψvcの値としてMoriらの用いた値である0.52を採用した。

Fig. 3.

 Influence of ψvc and φc on relative viscosity.

Fig. 4.

 Influence of ψvc and the rate of the solid phase on relative viscosity.

(3)表面係数φcの検討

表面係数φcは球形の場合には1であるが,実際のスラグの固相析出時の形状は球ではなく,スラグの凝固現象で観察されるように9),粒状やデンドライト状に生成することが推定される。従って表面係数については実高炉のスラグの粘度を測定することにより検討した。

スラグ粘度の測定装置は回転粘度計を用い内筒回転法によった。坩堝は内径φ44,スピンドル径はφ36,材質はいずれもカーボンである。測定試料は300g,測定条件は1500°CからN2雰囲気で剪断速度40.86 1/sの条件で攪拌しながら毎分1°Cで降温し,連続で測定した。測定に用いたスラグの成分は,Al2O3=13.9mass%,MgO=7.7mass%,C/S=1.3である。

Fig.5に実測値の温度と粘度の関係を示す。液相状態では一般に温度と粘度にArrhenius の関係が成立するため10),直線で近似できるが,融点付近から急激に粘度が上昇することがわかる。

Fig. 5.

 Relationship between temperature and slag viscosity.

Fig5に示すように,まず液相状態での粘度と温度の関係を一次式で近似し,温度t(K)での液相の粘度η0を一次式から計算する。なお,固相析出時には液相の成分が変化するため,厳密にはこの直線近似式は成立しないが,Fig.8にも示すようにSOLGASMIXにより固相析出時の液相成分の変化を考慮して粘度を推定してもあまり変わらないことが確認できるため,直線近似式により固相析出時の液相部分の粘度を推定した。次に実験で求めた固相析出時の粘度ηSと計算で求めた固相析出時の液相部分の粘度η0の比から懸濁時の粘度補正係数ηrを求める。得られたηrとSOLGASMIXから計算した固相率ψv,およびψvc=0.52を,式5に代入することにより,φcが得られる。

得られたφcは0.05から0.2程度にばらつくが,Fig.6に示すように高炉内で凝固が問題となる20poise程度までの推定精度を考慮しφcは0.1とした。なおφcが0.1であることから,析出した固相はかなり複雑な形状をしていることが推定される。

Fig. 6.

 Relationship between the rate of the solid phase and φc.

(4)計算結果と実測値の比較

Fig.5で示したスラグの粘度の測定値とモデルによる計算値の比較をFig.7に示す。液相のみ考慮した計算粘度にくらべ,固相の析出を考慮することにより粘度の推定精度はかなり向上していることが分かる。

Fig. 7.

 Comparison between the measurement and calculation results of slag viscosity.

2・2 モデルの評価

スラグ粘度推定モデルを用いて,その他の実炉スラグの粘度の推定を行った。固相析出時の粘度は,SOLGSMIXから計算される液相成分の推定粘度に式5から計算される粘度補係数を乗じることにより求めた。比較に用いたスラグの成分をTable 2に示す。実炉スラグのためFeOを含むが,FeO濃度が低いため,FeOを除いた4元系のスラグ成分で粘度の計算を行った。またスラグ粘度の測定は,2・1・2の(3)の記載と同様の方法で行った。

Table 2. Composition of slags for viscosity measurement.
  Al2O3
mass%
MgO
mass%
CaO
mass%
SiO2
mass%
FeO
mass%
MnO
mass%
TiO2
mass%
C/S
-
Slag A 18.2 7.4 38.2 33.1 0.38 0.32 0.66 1.15
Slag B 16.0 4.8 45.6 34.6 0.34 0.13 0.43 1.32
Slag C 15.4 5.9 43.2 35.9 0.33 0.19 0.63 1.21

修正前のスラグ粘度推定モデルのSlag Aの計算結果と実測値をFig.8に示す。1400°C以下で融点より低下したところから実測値と大きく乖離する。また,SOLGASMIXで固相析出時の液相成分を計算し,その液相成分を用いて粘度を計算しても修正前の計算結果とほとんど変わらない。

Fig. 8.

 Comparison between the measurement and calculation results of slag viscosity (Slag A).

一方,固相の析出を考慮して粘度を計算すると,実測値と計算値は結果融点以下の粘度も非常に良く一致する結果となった(Fig.9)。

Fig. 9.

 Comparison between the measurement and calculation results of slag viscosity in consideration of the deposition of the solid phase (Slag A).

またSlag BについてFig.10,Slag CについてFig.11に示すが,融点からの粘性の急上昇について実測値と粘度計算結果は良く一致している。若干の相違がみられるが,その原因として,SOLGASMIXによる融点,固相率,液相成分の推定の誤差,表面係数(φc)の推定誤差,FeOを含むその他の微量成分の影響などが考えられる。

Fig. 10.

 Comparison between the measurement and calculation results of slag viscosity in consideration of the deposition of the solid phase (Slag B).

Fig. 11.

 Comparison between the measurement and calculation results of slag viscosity in consideration of the deposition of the solid phase (Slag C).

3.Al2O3-SiO2-CaO-MgO4元系のスラグの融点および粘度の検討

本モデルを用いて,Al2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグの融点,粘度を高炉操業の観点から計算し,それぞれの成分の影響を検討した。

(1)MgOが一定の時の計算結果

Fig.12Fig.13に,MgOを一定でアルミナとC/Sを変えた時の4元系スラグの融点および粘度の変化を表した状態図を示す。融点については基本的に塩基度を上げ,アルミナを下げた時は上昇する。計算結果はMgO=0mass%での3元系状態図とおおむね傾向は一致している。

Fig. 12.

 Constitutional diagram of the melting point of slag when Al2O3 and C/S are changed.

Fig. 13.

 Constitutional diagram of slag viscosity when Al2O3 and C/S are changed (Slag temp.=1520ºC).

一方スラグの粘度は,塩基度の低下に伴い上昇する。低アルミナ,高塩基度領域で粘度が高いのは融点が1520°Cより高いためである。この2つの図から,粘度の低い領域は,スラグ温度にもよるがおおむね,塩基度で1.1~1.3,アルミナは12 mass%以下の領域に存在することがわかる。

また,スラグ温度を1480°Cに低下させた時の状態図をFig.14に示す。スラグ温度を低下することにより融点の高い領域の粘度が急上昇し,融点の影響を強く受けることが分かる。

Fig. 14.

 Constitutional diagram of slag viscosity when Al2O3 and C/S are changed (Slag temp.=1480ºC).

(2)塩基度一定で,Al2O3,MgOを変えた場合

塩基度一定で,Al2O3,MgOを変えたときの融点の状態図を,Fig.15に示す。計算では,アルミナ一定でMgOを変化させると,既知の状態図と同様にほぼフラットな領域となる。

Fig. 15.

 Constitutional diagram of the melting point of slag when Al2O3 and MgO are changed.

粘度の計算結果(Fig.16)については,MgOの増加,アルミナの低下に対しほぼ単調に減少する。

Fig. 16.

 Constitutional diagram of slag viscosity when Al2O3 and MgO are changed (Slag temp.=1440ºC).

ただ,スラグ温度が低下すると,Fig.17に示すように,融点の影響を受け,アルミナが増加かつMgOが低下した領域,あるいはアルミナが低下かつMgOが増加した領域では粘度は大幅に増加する。従ってアルミナの低下およびMgOの増加はそのレベルによっては必ずしもは粘性の低下につながらないことがわかる。

Fig. 17.

 Constitutional diagram of slag viscosity when Al2O3 and MgO are changed (Slag temp.=1420ºC).

以上のように,固相率をSOLGASMIXによって計算し,固相の析出の影響を考慮することにより,Al2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグの融点および粘度を計算し以下の結果を得た。

MgO一定の場合,Al2O3は10mass%~20mass%,塩基度は0.8~1.5の範囲では,塩基度を上げ,アルミナを下げた時に融点は上昇する。一方スラグの粘度は,塩基度が低下すると上昇するが,融点以下の領域では極端に粘度は低下する。スラグの粘度が温度や成分によって急激に上昇しない領域は,おおむね塩基度で1.1~1.3,アルミナが12mass%以下の領域に存在する。

塩基度一定で,Al2O3,MgOを変えた時は,あまり融点の変化は大きくない。一方,粘度については,MgOの増加,アルミナの低下に対し単調に減少するものの,スラグ温度が低下すると,融点の影響を受け,極端にアルミナを低下させMgOを増加させた領域では粘度は大幅に増加する。従って,塩基度レベルによっては,アルミナの低下およびMgOの増加は必ずしもは粘度の低下につながらない。

4.FeOを考慮した,融着帯から炉底にかけてのスラグ性状の検討

前章では,Al2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグ成分に関して融点,粘度を計算しその挙動を検討してきた。しかしながら,炉内のスラグ挙動を推定するためには,FeOを含んだ系に関してもその融点と粘度を検討する必要がある。従って,本報ではFeOを含む系でスラグの粘度および融点を検討し,融着帯下部から炉底までのスラグの挙動を推定した。

4・1 FeOを含んだスラグの融点,粘度の検討

(1)計算方法

FeOを含んだ系のスラグ粘度についてもSugiyamaらのモデルで計算した2)。モデルではAl2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグの粘度に対しFeOの影響係数を別途求め,影響係数を乗じることによりFeOを含んだ系の粘度を推定する。

(2)計算結果

Al2O3,MgO一定の場合,FeOの増加,C/Sの低下に伴い融点は低下する。(Fig.18)。一方粘度についてはFeOの増加に伴い低下する。(Fig.19)。ただ,スラグ温度が低下した場合,低FeO,高塩基度領域では融点ネックとなり,その粘度は極端に増加する。従って,高塩基度のスラグの場合,未還元のFeOが数mass%とかなり残留している場合でも,温度が低下した場合は流動性に問題の生じる可能性がある。粘度に対するFeO濃度の2mass%の影響は,塩基度で0.1程度に相当する。

Fig. 18.

 Constitutional diagram of the melting point of slag when FeO and C/S are changed.

Fig. 19.

 Constitutional diagram of slag viscosity when FeO and C/S are changed (Slag temp.=1480ºC).

また,塩基度1.5でのFeO,MgO,Al2O3が粘度に及ぼす影響を調べた(Fig.20Fig.21)。これから,MgO,Al2O3に比べ,FeOの変化の方が粘度に及ぼす影響の大きい事がわかる。

Fig. 20.

 Constitutional diagram of slag viscosity when FeO and MgO are changed (Slag temp.=1450ºC).

Fig. 21.

 Constitutional diagram of slag viscosity when FeO and Al2O3 are changed (Slag temp.=1480ºC).

更に,FeO含有スラグの温度に対する影響を調べたが,温度の低下により,粘度は上昇するが,FeO濃度の影響の方も極めて大きいことが分かる(Fig.22)。

Fig. 22.

 Constitutional diagram of slag viscosity when FeO and the slag temperature are changed.

4・2 融着帯から下部のスラグ融点・粘度分布の推定

上記FeOに関する基礎検討を元に炉下部の滴下スラグの融点および粘度の挙動の概要を推定した。

(1)計算前提

温度分布,FeO分布についても不明な点が多いが過去の,垂直ゾンデ,炉腹ゾンデ,炉芯ゾンデの温度,サンプリング結果を参考に,Fig.23Fig.24に示すように仮定した。

Fig. 23.

 Set value of the distribution of slag temperature.

Fig. 24.

 Set value of the distribution of slag FeO.

C/S,Al2O3,MgOの成分についてはTable 3の2ケースについて検討した。高さ方向の分布については,融着帯下部ではまだ滓化が進まないと考え,焼結鉱のスラグ成分を,滴下帯,羽口レベルでは塊鉱石,Fluxとの滓化は進むと考えその平均成分とし,炉床では最終スラグ成分になると考えた。

Table 3. Calculation condition to estimate slag behavior at the lower part of a blast furnace.
SiO2
mass%
Al2O3
mass%
CaO
mass%
MgO
mass%
C/S
-
Base Cohesive zone Sinter slag 28.92 10.32 52.77 7.99 1.82
Dropping zone Sinter+Ore+ Flux 32.89 11.06 48.67 7.37 1.48
Hearth BF slag 35.65 14.6 43.13 6.62 1.21
Cut of serpentine Cohesive zone Sinter slag 30.11 12.85 53.58 3.46 1.78
Dropping zone Sinter+Ore+ Flux 32.49 13.88 50.34 3.29 1.55
Hearth BF slag 35.87 17.71 43.41 3.01 1.21

(2)炉内のスラグ融点,粘度分布の計算結果

Fig.25Fig.26は蛇紋岩を用いて,スラグのアルミナ,MgO,C/Sを調整した場合の計算結果である。スラグ融点は羽口レベルが最高になっている。これは,鉱石の還元がほぼ終了し,FeO濃度が低下しているにもかかわらず,まだコークスアッシュとの滓化が十分進んでいないと仮定したためである。この時,粘度はすべての領域でほぼ10poiseを切ったレベルになっているが,1450°Cと低い温度を仮定した炉芯では,粘度が高くなっている。

Fig. 25.

 Distribution slag melting point (when serpentine is used).

Fig. 26.

 Distribution of slag viscosity (when serpentine is used).

Fig.27Fig.28は蛇紋岩カットにより低スラグ化した場合である。MgOの低下,C/Sの上昇により,羽口レベルの高融点領域は拡大している。さらに,炉芯部の粘度についても,10poiseを超える領域が拡大している。したがって,FeO,滴下温度の変動,スラグのさい化状態の変動により,スラグの流動性の悪化領域が拡大することが懸念される。

Fig. 27.

 Distribution slag melting point (when serpentine is not used).

Fig. 28.

 Distribution of slag viscosity (when serpentine is not used).

以上,FeOを含む5元系のスラグの粘度および融点を検討し,融着帯下部から炉底までのスラグの挙動を推定し,以下の結果を得た。

FeOの増加,C/Sの低下に伴い融点,および粘度は低下する。ただし,塩基度が高い場合融点は十分低下しない。低FeO,高塩基度領域では融点の上昇の影響で粘度は極端に増加する。

更に,炉下部の滴下スラグの融点粘性の挙動の概要を推定し,次の知見を得た。スラグ融点は羽口レベルが最高となる(鉱石の還元がほぼ終了し,FeO濃度が低下しているにもかかわらず,まだコークスアッシュとのさい化が十分進んでいないと仮定したため)。蛇紋岩を用いて,スラグのアルミナ,MgO,C/Sを調整した場合,粘度は炉芯等の低温度部を除いてすべての領域でほぼ10poiseを切る。蛇紋岩カットにより低スラグ化した場合,MgOの低下,C/Sの上昇により,羽口レベルの高融点領域は拡大し,粘性の悪化も見られる。

5. 結言

従来の粘性推定モデルは,融点近傍以下の温度領域で実測の粘度との乖離が大きく,その解決が課題であった。従って,固相析出時の懸濁スラグの粘性補正式と,SOLGASMIXにより計算した固相率,液相成分値とを組み合わせることにより,融点以下でも精度良く推定可能なスラグ粘性推定モデルを開発した。実測値と比較した結果,非常に良く一致する結果を得た。

また,推定式の適用例として,Al2O3-SiO2-CaO-MgOの4元系のスラグや,FeOを含んだスラグの融点,粘性の検討を行った。

文献
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