鉄と鋼
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高Mn鋼の再加熱による炭化物析出
オーステナイト高Mn鋼の研究-I
今井 勇之進斎藤 利生
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1960 年 46 巻 6 号 p. 665-673

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抄録

Austenite高Mn鋼の溶体化処理後の再加熱によるcarbide析出について研究するため, 先ずstandardのHadfield鋼について恒温加熱および連続加熱間におけるcarbideの析出および析出物の形態について実験し, 以下の結果を得た.
1. 溶体化処理後の恒温加熱におけるcarbideの析出は, 650~700℃付近を頂点とするC-曲線として現わされ, P.C. の析出は約600℃を頂点とする同じくC-曲線で現わされる.
2. 折出物の形態は, 析出の初期はaustenite粒界におけるcarbide filmの形成であるが, 低温域ではcarbide filmの形成が遅く, 粒界から結晶の劈開面に沿う針状析出を生ずる. 高温域ではcarbide filmの形成に引続き, 粒界におけるcarbide filmの粒状化, 粒状carbideの成長と凝集が順次に起る.
3. P.C. の核生成は約600℃でもつとも早いが, 以後のP.C. の成長はさらに温度の低いほどいちじるしく, 500℃付近で最大の成長速度を有するものとみられる.
4. 析出したP.C. は高倍率で識別し得る微細なlamellar pearlite状の形態をとり, 低温度で析出するP.C. ほどlamellaeの間隔が小さい.
5. 加熱間における析出は, 加熱速度の速いほど析出温度が高温側に移行しかつ析出量も少なくなる. 約15℃/mnの加熱ではP.C. は現われず, また約45℃/mn以上の速度ではcarbideの析出も避け得ることが推定される.
6. 機械的性質は板状carbideの析出し始める350℃付近から低下し始め, 抗張力はcarbide filmのもっとも成長し易い750℃付近で最低値をとり, また衝撃値, 伸び, 絞りはP.C. の析出域で最低値をとる. carbide析出による硬度増加は主として板状carbideが影響している.

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