抄録
酸性亜鉛めつき浴中に少量のコバルトおよびクロムの塩を添加した浴中でめつきして得られる複合亜鉛めつき鋼板(FZ)は,いくつかのすぐれた性質があり最近実用化された.FZの製造条件および特徴を要約すると次のようになる.
(1)通常の酸性亜鉛めつき浴にコバルトおよびクロムを金属分としてそれぞれ8~10g/l,0.3~0.5g/l水溶性塩の形で添加した浴を用い,現行の電気亜鉛めつき設備でFZが製造できる.その際のめつき条件は,本質的には基本浴と同一である.
(2)FZのめつき皮膜成分は亜鉛を主成分とするが,ほかにコバルト約0.3%,クロム約0.05%を含有している.めつき皮膜中での共析元素の存在形態はコバルトが金属,クロムが酸化物である.また,めつき厚み方向の分布状態は両元素ともほぼ均一である.
(3)FZのめつき皮膜は,通常の亜鉛めつき皮膜と同様ち密であり,色調も特に変わりはない.最大の特長は耐食性が通常の亜鉛めつき鋼板に比べ約2倍向上することである.加工性,スポット溶接性は通常の亜鉛めつき鋼板と同等で良好である.
(4)化成処理としてクロメート処理およびリン酸塩処理を行つた製品につき品質を調べた結果,耐食性,塗膜の密着性および塗装後の耐食性にすぐれた性質を示すことがわかつた.すなわち,FZめつき皮膜中の共析元素の好影響が認められた.