鉄と鋼
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高強度マルエージ鋼の延性靱性におよぼす母相組織の影響
岡田 康孝邦武 立郎
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1981 年 67 巻 16 号 p. 2700-2709

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抄録

熱処理(溶体化処理+時効)のみで最も良好な引張強さと靱性の組み合わせを有した17.5%Ni-6Mo%鋼を出発点としてNiを24%以下の範囲で増加した高Niマルエージ鋼について,延性および靱性におよぼす影響因子について検討した.
1.Ni量の増加により発生するγを冷間加工により100%α'(ラスα')としたものは,Ni量の増加にともない時効後の引張強さは上昇するが延性(伸び)および靱性(切り欠き引張強さ)は低下しない。この意味においてNiによる強靱化効果は20%Niまで受け継がれていることを確認した.
2.残留γは延性を低下させるが靱性については切り欠き強度比に影響を与えなかつた.
3.20%以上のNiを含む鋼では,サブゼロ処理によりレンズ状α'が生じた。またレンズ状α'が生成すると靱性が著しく低下することが明らかになつた.靱性低下の原因はレンズ状α'界而にクラックが発生することによると考えられる.
4.30~60%の冷間加工は強靱化に有効であつた.サブゼロ処理により生成したレンズ状α'を含む鋼も60%の冷間加工により靱性を回復した.
5.20%Ni鋼で溶体化処理後60%の冷間加工を行つたものは,時効後,切り欠き強度比が1.0以上の範囲では最高の2700MPa3に達する引張強さを得た.
6.21%~24%Ni鋼は時効前の室温における引張試験においてTRIP現象による伸びの著しい増加を示した.

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