鉄と鋼
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製鋼工程での溶鋼の吸窒防止条件
阿部 泰久西村 光彦片山 裕之高橋 利徳
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1982 年 68 巻 14 号 p. 1955-1963

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抄録

純酸素転炉の特色の一つである吹き止め[N]が低いことを効率的に低窒素鋼製造に結びつけるという観点から,製鋼工程での吸窒防止条件を検討した.
(1)転炉吹き止め時,出鋼時,取鍋処理時,注入時の[N]の挙動についてデータをまとめ,主要因の影響を明らかにした.
(2)適用すべき吸窒速度式は[O]とPN2に依存することを示し,製鋼各工程を一次反応式で近似できるものと二次反応式で近似できるものに分けた.その吸窒速度式を用いて各工程での吸窒挙動を説明した.
(3)低炭素鋼の吸窒は,雰囲気を制御しにくい工程(出鋼時)は未脱酸で[O]を高めに保つことにより,また一旦脱酸後は湯面をスラグでカバーするか雰囲気の窒素分圧を低くすることの組み合わせにより防止できる。出鋼時,取鍋内溶鋼処理時,注入時の各工程の吸窒量はそれぞれ1~3ppmにできるようになつている.将来,成品[N]を安定して12ppm以下にできるようになるだろう.
(4)出鋼時の吸窒防止を脱酸コントロールで行うことができない高炭素鋼に対して,ドライアイスを用いる吸窒防止方法を開発した.この場合,ドライアイスが出鋼後半まで残留していることが望ましく,そのような条件下では吸窒量を安定して0~3ppmに抑制できるようになつた.
(5)溶鋼と共存するドライアイスの状況は,ドライアイスの厚みが40~50mmの前後で大きく変化する.それ以上では溶鋼の飛散やドライアイス塊自体の跳び上りがおこるが,それ以下では溶鋼面に静かに浮かんだ状況になる.後者の状況は,ドライアイス消失まで約2min保たれる.
(6)ドライアイスを用いた時に得られる安定した吸窒防止効果は,低窒素分圧で酸化性という雰囲気条件を,特に反応がおこりやすい出鋼流落下場所近傍で実現したことによるものである.
(7)高炭素鋼の場合にも,種々の低窒素化対策を組み合わせることにより,転炉吹き止め[N]を9~15ppm,吹き止めから成品までの問の全吸窒量を7ppm以下とし,安定して[N]:22ppm以下の成品を製造することが可能になつている.

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© 一般社団法人 日本鉄鋼協会
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