鉄と鋼
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各種構造用鋼板の疲れき裂伝ぱ特性とΔKth
金尾 正雄佐々木 悦男太田 昭彦小菅 通雄
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1983 年 69 巻 7 号 p. 868-873

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抄録

工業的に多用されている8種のフェライトパーライト鋼及び焼もどしマルテンサイト鋼厚板の疲れき裂伝ぱ特性をうず電流探傷法を利用したき裂自動追尾装置を備えたK値制御疲れ試験機により,応力比が-1から0.8の範囲の数種のレベルで求めるとともに応力及び材料因子の効果について検討して次の結論を得た.
1)いずれの応力比の場合においても,ΔKthが存在し,応力比の増加に伴いΔKthが減ずる傾向を示し,
ΔKth,R= (1- R)γ ΔKth,o
で表示される.γは0.6から0.8の範囲にあるが材料の強度水準,組織との相関は認められない.
2)降伏応力が275N/mm2から834N/mm2,引張強さが441N/mm2から1010N/mm2,伸びが7.5%から37%の範囲では,機械的性質の違いによるΔKthの変化はRの違いによるΔKthの変化に比べ小さく,同一RでのΔKthは機械的性質が変わつても2倍の範囲に含まれる.なお,da/dnが速くなるほど同一のR,同一のda/dnを与えるΔKは狭い範囲に集中する傾向を示す.
3)da/dnが速い領域では金属組織が異なつても疲れき裂伝ぱ特性に明瞭な差異は認められない.また,ΔKthについては,フェライトパーライト鋼が焼もどしマルテンサイト鋼よりいくぶん大き目の値を示す傾向にある.
4)試験した範囲内で,疲れき裂伝ぱ特性とΔKthを変化させる最大の要因は応力比であり,これに比べ機械的性質や金属組織の寄与は少ない.

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