鉄と鋼
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石炭の基礎物性
坂輪 光弘真田 雄三
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1985 年 71 巻 8 号 p. 939-944

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抄録
石炭は本来高分子有機化合物であるからその構造が解析されれば,利用技術における変化過程は化学反応としてとらえられるはずである.しかし石炭があまりにも複雑すぎるため,このような研究の進め方があまり行われてこなかつたのではないかと思う.
そこで著者らなりの石炭研究の進め方を述べてみる.
まず石炭の組織成分ごとの化学構造の解析を一歩一歩と着実に進め,知見の深化をしていくことではないだろうか.近年,固体状態でも測定できるような有機分析装置の開発が進んでおり,それらをとり入れながら確実に行つていく必要がある.
次にそれと並行して石炭利用技術ごとにその変化過程を化学反応の観点から調べていくことである.たとえばくり返しになるが,石炭を風化させるとそのコークス化性,流動性は著しく変化する.これを化学反応の観点から調べていけば,ある特定のかつ微量の成分が反応に決定的な影響を与えていることが見いだされるかも知れない.
このような研究の進め方により,各利用技術ごとにばらばらに得られていた経験的な特性値がどの技術にも共通なかつ科学的な特性値としてまとめられていくであろう.
ある日,工場長が反応炉内の温度を見ながら,今度は少し芳香族性の高い石炭を装入しようといい,決して石炭銘柄名を言わない時代がくるであろうか.道は遠いが一歩一歩進んでいくしかないであろう.
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© 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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