1986 年 72 巻 16 号 p. 2187-2193
動的破壊靱性ということで,破壊発生特性としての動的破壊靱性とき裂伝播過程のそれについて述べ,またその評価手法について紹介した.応力拡大係数を用いた取扱いは主として原子力に関して精力的な研究がなされてきた.一方,き裂先端開口変位(CTOD)については,氷海域で使用する砕氷商船に関する規格の整備に伴い,動的な値が意味を持つようになりつつある.しかしながら,動的破壊に関しては,
1)動的試験による材料の破壊靱性の測定
2)実構造物における動的破壊パラメーターの決定の両方にまだ問題があるのが現状である.前者は試験としては動的であるが,破壊靱性の計算式は静的と同じものを用いるというものであり,後者は動的荷重が作用したときの応力拡大係数などの破壊パラメーターをどう決定するかの問題である.現状は前,後者とも静的な取扱いをする場合が多いが,本来すべて動的な取扱いが必要であり,あるいは静的取扱いが大きな誤差を生まない範囲の把握が必要であり,この点については実験的および解析的立場からの研究,両者の結合が待たれる.