鉄と鋼
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泥炭の流動層燃焼技術
細田 英雄平間 利昌
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1987 年 73 巻 15 号 p. 1818-1825

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抄録

泥炭の賦存量,前処理技術および流動層燃焼技術について概観した.この分野での研究報告は少なく,また,泥炭を工業的な規模で利用している国はまだ少ないようである.しかし,泥炭の産出と利用は資源として意味があるばかりでなく,土地の有効利用という点でもメリットを生ずるので,特に国土の狭いわが国や広大な泥炭地を持つ国においては重要な課題であろう.
泥炭を都市における集中暖房を含めて工業的な燃料として使用する場合の燃焼器としては流動層方式(広義のそれ)が望ましく,特に循環流動層型のボイラーは多くの使用実績がある.流動層方式の最大の利点は,重油,石炭,木材チップ,バークあるいは都市系廃棄物などの多様な燃料と混焼できること,炉内脱硫が可能で窒素酸化物の発生量を低く抑え得ること,などにある.多様な燃料の使用を可能にしている最大の理由は,流動層が気体と固体の激しい混合状態を創出できることにある.その意味では同じ流動層方式でも,気泡流動層型よりも(高速)循環流動層型の方が泥炭ボイラーに適しているとも考えられるが,循環型では高温集塵あるいは熱交換器の摩耗など固有の問題をかかえているので,現時点では安易に優劣をつけがたい.
本文でも述べたように,泥炭の燃料化にあたって問題になるのは,燃焼器(ボイラー)よりも輸送と貯蔵を含めた前処理操作である.天日乾燥は,コストの上では優位性を持っているが,大量使用を考えた場合には無理がある.一方,現在操業中あるいは商業化されつつある乾燥(前処理)プロセスもコスト面で問題をかかえているといわれる.しかがつて泥炭の燃料化にあたっては,乾燥,貯蔵,輸送,ボイラー,エネルギー利用,採掘地の利用などを合理的に組み合わせた総合的なシステムを考えねばならない.細田らはその一つの例として,泥炭産出地域での農用熱利用と発電によるコジェネレーション・システムを想定し,泥炭の新しい乾燥技術および重質油などを混合・粒状化させてエネルギーに転換するための研究を行っている.

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