鉄と鋼
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18Niマルエージ鋼のマルテンサイト組織におよぼす未再結晶溶体化処理の影響
栗林 一彦堀内 良
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1987 年 73 巻 16 号 p. 2251-2258

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抄録

逆変態オーステナイト(γ)の再結晶温度の高いボロン添加18%Niマルエージ鋼において,γの未再結晶温度域での溶体化処理(未再結晶溶体化処理)のマルテンサイト(α')組織の形態におよぼす影響と,強度との関係を検討し,次のことを明らかにした.
未再結晶溶体化処理の加熱温度の変化によるラスマルテンサイト組織の形態変化は,γ中の転位密度の変化に対応している.また,この形態変化は炭素量を変化させた場合の変化とよく符合している.すなわち,低温域の未再結晶溶体化処理で得られる高密度の転位を含む逆変態γからの変態では,パケット,ブロックという階層的な紐織構成が失われて,0.4% C以上の中,高炭素鋼,合金鋼のラスマルテンサイトとよく似た組織となる.γの中の回復が進行する高温域での未再結晶溶体化処理では,0.1%~0.3% Cの低炭素鋼と類似の組織となり,ブロックは微細化するが,階層的な構成は保たれた組織となる.未再結晶溶体化処理によるα'の強度上昇は,この組織の細分化によって支えられている.γ中の回復の進行に伴つて,α'の強度は低下するが,高温域での未再結晶溶体化処理でも,ブロックの微細化により,再結晶γより生じたα'よりも高い値となる.

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