鉄と鋼
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熱延薄鋼板の変態集合組織と塑性異方性
西田 稔加藤 俊之
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1989 年 75 巻 6 号 p. 941-947

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抄録

現場のホットストリップミルで圧延した低炭素のAlキルド鋼板とB添加鋼板およびTiやNbを添加した高張力鋼板について,r値の異方性,円筒深絞り時のイヤリング高さおよび板厚中心部の集合組織を調べた.
(1)B添加鋼の場合,仕上圧延温度が高いほど{001}<110>および{110}<110>方位が増加し,{110}<001>方位も増加傾向を示す.仕上圧延温度が低下しAr3変態点に近づくにつれてこれらの方位は減少し,{112}<110>近傍の方位が増加する.
(2)低炭素Alキルド鋼の場合,仕上圧延温度が高いほど,{001}<110>や{110}<110>方位が増加傾向を示す.
(3)NbやTiを添加した高張力鋼では仕上圧延温度が高温でも{112}<110>近傍および{111}<112>近傍の方位の集積が強い.これらの方位はTi添加鋼よりNb添加鋼のほうが強く,また圧延温度が低温ほど,そして製品板厚が薄いすなわち仕上圧延の圧下率が高いほど発達する.
(4)Nbに比べて微弱であるが,Bもγ相の再結晶を抑制する効果を持つている.
(5)Alキルド鋼や仕上圧延温度が高いB添加鋼では,γ相の再結晶抑制力が弱く再結晶集合組織からα相に変態する.そして,Nb添加鋼やTi添加鋼および仕上圧延温度が低温のB添加鋼のように再結晶抑制力が強い場合には圧延集合組織からα相に変態する.
(6)Alキルド鋼板と仕上圧延温度が高いB添加鋼板のr値の異方性が小さくイヤリング高さも小さいのは,方位がランダム化するためではなく,共存する{001}<110>,{110}<110>および{110}<001>方位がそれぞれ方向性が異なり互いに方向差を打ち消し合うためである.

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