1989 年 75 巻 8 号 p. 1346-1353
クリープ疲労特性の優れた改良型SUS 316の開発を最終目的に,クリープ破断特性に対する炭素,窒素,Moの影響を調査した.炭素による強化は破断延性を大きく損なうが,窒素は破断延性を劣化させることなく強化できる元素である。したがって,破断延性が重視される高速炉の構造用鋼としては,炭素より窒素で強化することが望ましい.またMoは強化にともなう延性低下が小さく,有効な元素と言える.
クリープ疲労特性はクリープ破断延性と相関することから,クリープ疲労特性のすぐれた鋼種として低C-中N系(0.01%C-0.07%N)316MNを開発した.本鋼は従来のSUS 316に比べ長時間側でのクリープ破断強度の低下が小さく10000hで約1.2倍の破断強度とすぐれた破断延性を有し,さらにクリープ疲労試験においてもすぐれた特性を示す.