鉄と鋼
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連続蒸着試験設備により作製した蒸着亜鉛合金めっき鋼板の皮膜構造と耐食性
川福 純司加藤 淳外山 雅雄西本 英敏池田 貢基佐藤 廣士
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1991 年 77 巻 7 号 p. 995-1002

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抄録

従来の電気めっき法,溶融めっき法に代わる新しいめっき法として,EB加熱方式による真空蒸着法を応用した連続蒸着試験設備により,5種類の蒸着Zn合金めっき鋼板を作製した.その結果,以下のことが明らかとなった.
1)電子ビーム加熱により,近接された二つのるつぼから,Znと合金元素を同時蒸発させることによって,連続的に鋼板表面に蒸着Zn合金めっき層を形成することが可能である.
合金めっきのめっき付着量及びめっき組成の制御は,電子ビームの出力,照射時間配分及びラインスピードを調整することによって可能である.
2)めっき層の表面結晶状態は,合金元素の種類によって異なり,六方晶の結晶が基板に対して平行に配向するものと,斜めに配向するものとに大別された.ただし,蒸着Zn-Ni合金めっきについては,明確な結晶粒が認められなかった.
3)めっき深さ方向の合金組成のプロフィールについても,合金元素の種類によって異なり,Znと合金元素のプロフィールがほぼ均一な構造を有する場合と,2層に近い構造を有する場合とがある.
4)Znと合金元素とによってめっき層中に得られる金層間化合物相は,合金元素がAlの場合を除き,平衡状態図から想定される相がほとんど存在しない.これは,本真空蒸着法によって得られる蒸着Zn合金めっき層の形成過程が,非平衡に近い状態で進行するためと考えられる.
5)今回作成した蒸着Zn合金めっきの中では,Zr-Mg合金めっきとZn-Ti合金めっきが優れた裸耐食性を示した.
また,塩水噴霧試験による蒸着Zr-Mg合金めっきの腐食生成物層は,六方晶の底面が基板に対して配向したZnCl2・4Zn(OH)2から形成されていることが明らかとなった.
蒸着Zr-Mg合金めっきの裸耐食性は,腐食生成物層によるめっき層の保護作用によるものと考えられ,めっき層中から溶解したMgイオンは,このような腐食生成物層を維持し続ける働きを有するものと推察される.

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