鉄と鋼
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多量スラグ型溶融還元炉内での伝熱機構
河村 隆文片山 裕之佐藤 健朗松尾 充高平田 浩遠藤 幸平
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1992 年 78 巻 3 号 p. 367-374

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抄録

多量スラグ共存型溶融還元炉での伝熱機構をモデルと試験の両面から検討した.
(1)溶融還元炉試験では撹拌エネルギーが2kW/t以上では着熱効率90%前後の値が得られた.しかし,二次燃焼率がある限界値以上では,着熱効率の低下が起こった.
(2)炉内を三つの領域にわけ,各領域ごとに物質と熱の収支をとる方式で伝熱モデル式をつくり,輻射伝熱を過小に計算しないように境界条件の設定に考慮して,輻射およびフレーム対流による伝熱量を計算した.
(3)ガス温度が約2200℃と高い場合のみ,輻射で,実際起こった伝熱量の大半を説明できた.しかし,この条件では着熱効率が低く実用的ではない.
(4)着熱効率が高い場合(ガス温度は1700~1765℃)では,輻射およびフレーム対流で説明される伝熱は20~30%程度である.
(5)残りの伝熱は炭材の循環によって行われていると推定された.スラグに対する炭材の過熱温度を250~300℃とすると,還元反応の見掛けの活性化エネルギーの試験規模依存性と整合した.
(6)2次燃焼率が限界値以下で着熱効率が高い場合には,炭材循環によって,ガス温度が低くても必要伝熱量が確保される.一方,二次燃焼率が限界以上では炭材量が減少するため,ガス温度があがって輻射で伝熱量が確保され,結果的に着熱効率が低下する.
すなわち,本報の伝熱機構の考え方と,2次燃焼率,着熱効率についての固定炭素必要量の考え方は整合している.

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