鉄と鋼
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塩化物溶液中における亜鉛のアノード溶解
林 公隆三吉 康彦
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1992 年 78 巻 4 号 p. 601-607

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抄録

塩化物溶液中において,Znのアノード溶解機構を検討した結果,以下の知見が得られた.
(1) 中性(pH=5~8)条件下においてZnのアノード溶解反応速度は塩化物イオン濃度に対し3次,水酸イオンに0次で正比例する.この場合の電流電位曲線(i-φ曲線)のTafel勾配は≅17mV/decadeとなることが判明した.
これは中性近傍の溶液条件下においてZnのアノード溶解反応はCl-イオン濃度に大きく影響をうけることを意味するものである.
この時の反応律速となる素反応はZnCl2・ZnOHads.+H++Cl-〓ZnCl3-+Zn2++H2O+e-と推定される.
(2) アルカリ性(pH=12.5~13.5)条件下においてZnのアノード溶解反応速度は塩化物イオン濃度に対し0次,水酸イオンに3次で正比例する.この場合の電流電位曲線のTafel勾配は≅40mV/deczdeとなることが判明した.
これはアルカリ性の溶液条件下においてZnのアノード溶解反応がCl-イオン濃度の影響をほとんどうけないが,OH-イオン濃度に高い依存性を示すことを意味するものである.
この時の反応律速となる素反応はZnOHads.+2OH-〓ZnO22-+H++H2O+e-と推定される.

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