高力ボルトの高強度化の必要性は大きいのであるが,その遅れ破壊はいまだ理論的な解明がなされておらず,その必要十分な予測ができない現状にある。そのために,実験室的に耐遅れ破壊特性の優れた高強度高力ボルトであっても,容易に実用化できない。本研究は,この課題解決のために行ったもので,得た結論の要点は以下のものである。
鋼中の微量水素の定量化を可能にし,試験片中の水素量とその遅れ破壊との関連を求め,一定の応力状態(P/Pf=一定)では各鋼材固有の限界水素量HTが存在することを確かめた。この試験で求められる対象鋼材の限界水素量HTは,別途水素モニターによる対象鋼材の使用環境における侵入水素量あるいは侵入の容易さを知ることによって,対象鋼材の実環境における耐遅れ破壊特性が評価できると考えた。この考えを基に,鋼材の新しい遅れ破壊特性促進評価法を提案した。