鉄と鋼
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鋭敏化304鋼の粒界応力腐食割れの発生と進展に及ぼすNaF濃度の影響
柴田 俊夫春名 匠沖 孝広
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1993 年 79 巻 6 号 p. 721-725

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抄録

NaF水溶液中における鋭敏化304鋼の応力腐食割れを詳細に検討するために,SSRT中に試料に発生するき裂の成長過程をCCDカメラを用いて連続的に観察し,次に示す結果を得た。
(1)き裂発生時間はWeibull分布に従い,その最小値もしくは平均値は103ppm NaFにおいて最小値を示した。また,き裂発生数は同濃度において最大値を示した。
(2)K'ISCCはWeibull分布に従い,その平均値はNaF濃度の減少とともに低下したが,実際に重要なK'ISCCの最小値は,NaF濃度にほとんど依存しないことがわかった。
(3)き裂進展速度はGumbel分布に従い,その平均値もしくは最大値は103ppm NaFにおいて最小値を示した。
(4)SSRTによって評価されるSCC感受性因子として従来用いられる最大応力は103ppm NaFにおいて最低値を示したが,この因子を支配するのはK'ISCCやき裂進展速度ではなくき裂発生数およびき裂発生時間であることが明確となった。

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