抄録
著者らは、独自に開発した高速6π-アザ電子環状反応を基盤として、リジン側鎖のアミノ基にポジトロン放出核種や蛍光基で標識する新規方法を開発した。また、同反応を用いて細胞表層上のアミノ基に対して穏やかな条件下で簡便に有機低分子を導入することにも成功し、細胞表層を化学的に複合型N-型糖鎖で修飾する化学的手法を確立した。これらの方法を用いて、糖タンパク質や生体内での糖鎖構造を疑似化した世界最大のクラスターのPETや非侵襲的な蛍光イメージングを実施することにより、N-型糖鎖の非還元末端シアル酸の存在やガラクトースとの結合様式に依存する動態や代謝過程の相違を初めて可視化することに成功した。さらに、リンパ球の表面に対して有機合成化学的に複合型糖鎖を導入することにより、生きた動物内で癌を認識させることに成功した。